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ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんが亡くなったことを受けて、テレビ番組やネットニュースの放送・報道が相次いだ。

こうした中、厚労省と「いのち支える自殺対策推進センター」(JSCP)は5月11日、不適切な報道をするメディアに対して、WHOの「自殺報道ガイドライン」を踏まえた報道・放送の徹底を呼びかけた。

JSCPは19日までに、この異例の呼びかけの理由についてコメントした。

●1日に2度の依頼・注意喚起

「報道関係者様へのお願い」とする呼びかけは、11日夜に厚労省のツイッターで投稿された。

【ツイッターの呼びかけ内容】

タレントの上島竜兵さんが5月11日に逝去され、死因が自殺である可能性があるとの報道・放送が行われていることを踏まえて、本日午前中に、『自殺報道ガイドライン』に即した放送・報道をしていただくよう、依頼文を送らせていただきました。 しかしながら、一部のメディアにおいて、『自殺報道ガイドライン』に反する、以下のような報道・放送が行われているため、あらためて自殺報道に関する注意喚起をさせていただく次第です。

以下のような放送・報道は、自殺リスクを高めかねません。

・自殺の「手段」を報じる ・自殺で亡くなった方の自宅前等から中継を行う ・自殺で亡くなった場所(自宅)の写真や動画を掲載する ・街頭インタビューで、市民のリアクションを伝える

●大型連休明けの早朝に衝撃的な速報

上島さんの訃報を真っ先に伝えたのは、11日朝のフジテレビの情報番組だった。また、ネット記事でも「第一報」はフジテレビだと思われる。

上島さんの名前でヤフーニュース検索して、最も古い記事としてヒットするのはFNNプライムオンラインの『【速報】ダチョウ倶楽部・上島竜兵さん(61)死去』(5月11日 午前7時42分配信)だった。

フジテレビの朝の情報番組では、速報として上島さんの死亡について、具体的な手法を含めてアナウンサーが読み上げ、続く時間帯の番組では自宅マンション前から中継した。

配信記事は当初、上島さんが死亡した具体的な手法を記載していたが、タイトルとともに本文も「上島さんが意識を失っているのを家族が見つけ発見した」に書き換えられた(現在は記事は閲覧できない)。

厚労省の呼びかけの前後には、フジだけでなく、複数のメディアの報道姿勢に多くの批判があがった。

著名人の自死について、メディアはどのような意識のもとで報じるべきか。今後の検証材料とするため、弁護士ドットコムニュースは、どの「報道・放送」がガイドラインに反していたのか(質問1)をJSCPに尋ねた。

また、批判を受けているフジテレビの上記「速報」記事について違反箇所(質問2)を聞いた。

●報道の前に、自殺リスクと報じることの社会的意義を天秤にかけたのか

JSCPからは5月18日、コメントが返ってきた。

こちらからの2つの質問には、個別の媒体名・番組名の公表、および個別の報道についてガイドライン違反を指摘することは控えるとのことだった。

代わりに、回答には呼びかけの背景が記されていた。そのまま掲載する。

【コメント】

上記2点のご質問につきましては、大変申し訳ございませんが、個別の報道に関する回答は控えさせていただきます。

今回(11日)は、以下の2点を踏まえ、同日に2回という異例の形で注意喚起をさせていただきました。

1)前の週に、俳優の渡辺裕之さんの自殺に関する報道が行われていたため、上島竜兵さんの自殺報道がよりセンセーショナルな形で行われる危険性があると懸念したため

2)実際に一部のメディアが上島竜兵さんの自宅(自殺の現場)前から中継を行ったり、自殺手段について報じたりと、上島さんの自殺報道がセンセーショナルになってきており、このままだとさらにセンセーショナルな自殺報道に発展しかねないと懸念したため」

「ガイドラインは「指針」であり、JSCPといたしましてはメディア各社に対し、自殺報道が及ぼす影響を正しくご理解いただき、WHO自殺報道ガイドラインを踏まえて熟慮の上、ご報道いただくようお願いしております。その上で、自殺リスクと報じることの社会的意義を天秤にかけ、どこまで(どのように)書くか・放送するかは、各報道機関が判断すべきことと考えております。よって、「自殺」と報じたから「違反」である、というように一律にジャッジできるものではないと考えております。

以上、ご希望に沿った回答を差し上げられず申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

【いのち支える自殺対策推進センターの相談窓口一覧】 https://jscp.or.jp/soudan/