絆くらぶの付き添いサービスを利用して通院する弘江さん(右)(広島市で)

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 改正道路交通法が13日に施行され、高齢者の運転免許更新方法が変わる。75歳以上で一定の違反歴がある人は、運転技能検査(実車試験)が義務化される。実車試験に不合格となると、免許を更新できなくなる。移動手段を持たない高齢者を地域で支える仕組みづくりがさらに重要となる。(塩崎恵)

 実車試験は、過去3年間に信号無視や速度超過、逆走など11種類のうち一つでも違反歴のある、75歳以上の人が対象となる。75歳以上で過去3年間に何らかの違反歴がある人は、重大事故を起こす確率が全体の約1・8倍になるため、警察庁は実車試験の導入を決めた。

 試験は自動車教習所などのコースを走行して、一時停止や右左折などの課題を行う。100点満点から減点方式で、70点以上(第二種免許は80点以上)で合格する。免許更新期間内なら合格するまで繰り返し受けることができる。

「サービスあるから住める」

 広島市の「びしゃもん台 絆くらぶ」は、運転免許を返納する地域の高齢者が増えてきたことを受け、2020年10月から付き添い送迎サービスを始めた。病院や買い物、新型コロナウイルスのワクチン接種などの送迎を実施。21年度は296件の依頼があった。

 絆くらぶは19年、戸建て住宅が並ぶ毘沙門台団地の60、70代の住民を中心に設立した。 団地内は高低差が120メートルある。高齢化も進み、移動困難者が増加している。住民の赤崎悦資さん(84)と弘江さん(80)夫妻は、病院や買い物に行く際にこのサービスを利用する。悦資さんは2年前に免許を返納した。車で15分の病院に向かうバスは1時間に1本。団地内のスーパーは歩いて30分かかる。弘江さんは「車で事故を起こし迷惑をかけてはいけない。付き添いサービスがあるから住み続けられる。本当に助かる」と感謝する。

 付き添い送迎サービスは30分500円。運営するメンバーの車を使い、団地から4キロほどの近辺が範囲。メンバーの横平和美さん(75)は「支援の仕組みをつくることで、この団地に住んでよかったと思ってもらえる。その結果、団地を離れた子どもや孫が戻り、団地の活性化につながる」と期待する。