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 先日、長野に遊びに行った帰り、上信越自動車道の「横川SA」に立ち寄りました。“横川”と聞くと、筆者の頭には「峠の釜飯」という言葉が自動的に浮かびます。

 そう、昭和33年に信越線横川駅で発売されて以来、1億7000万個も売れている超ロングセラー駅弁「おぎのやの峠の釜飯」のことを思い出すのです。そして「おぎのやの峠の釜飯」は横川SAでも購入可能。久しぶりに買って、家で食べることにしました。

「おぎのやの峠の釜飯」1100円。釜とフタだけの重量でも641gあります

 包装の紐をほどくと益子焼のずっしりした釜が登場。釜とフタだけの重量でも641g。駅弁史上、最も重たい容器ではないでしょうか。

 そして、これまた重いフタを開けると、豪華絢爛のおかずたちがお目見え。鶏肉、椎茸、筍、ごぼう、グリンピース、うずらの卵、栗、杏の9品が釜の中にギュウギュウ。もちろんその下には炊き込みご飯が控えています。

「峠の釜飯」の美味しさの秘訣は、言わずもがな、この秘伝の出汁を使ってコシヒカリを炊き込んだご飯にこそあります。つやつやふっくら。口の中でお米1粒1粒がちゃ~んと主張していて、噛むたびに香りや甘みが広がって最高なのです。

家では、おかずをフタの上に移して食べることもできます

 しかし、人はいつの世も欲深いもの。「峠の釜飯」を食べるたびに「アレがあればもっと美味しいのに…」と妄想するのです。それはズバリ、おこげ。専門店で釜飯や土鍋を食べていると、鍋底にパリッとクリスピーで香ばしいおこげがありますよね。残念ながら「おぎのやの峠の釜飯」にはそれがないのです。

 そんなことを考えつつ、あっという間に釜飯を完食。食後にお茶を飲みながらおぎのやの公式HPを覗いていたら、なんと釜の再利用法が紹介されていました。かいつまんで紹介すると、米1合に対して水180cc(味付けつる場合は調味料の量も含める)を釜に入れ、フタをして加熱し、吹きこぼれたらフタを1cmズラす…といった具合です。

 そこで今回、この公式メソッドと立派な釜とフタを再利用して、おこげがちゃんとある釜飯を作ってみることにしました。

まずは「鶏と筍の炊き込みご飯」にチャレンジ

立派な釜とフタを再利用して釜飯を再現

「おぎのや」の公式HPによる、白米の炊き方は次のとおり。これをアレンジして「鶏と筍の炊き込みご飯」を作ります。

1.釜はよく乾燥させておく。
2.米1合に対して水180cc(味付けする場合は調味料の量も含める)
3.2を釜に入れ、フタをしてガス台にのせ、弱火で8~10分加熱
4.吹きこぼれたらフタを1cmズラす

吹きこぼれる直前にフタを1cmズラす

5.吹きこぼれが収まったら開けたフタを0.5cm締める
6.お米の泡立ちがなくなったらフタを締めて火を止める
7.15分以上蒸らしてできあがり

蒸らしたら熱々の炊き込みご飯が完成!

 レシピどおりにやったら、とっても簡単に炊き込みご飯が完成しました。ご飯ふっくらで、めちゃくちゃ美味しい! この釜とフタさえあれば、いつでもできたての釜飯が楽しめるとわかり、狂喜乱舞。しかし肝心のおこげですが…

理想のおこげとはほど遠い真っ黒加減になってしまいました

 鍋底には、確かにおこげがありました。しかし、炭のようなまっ黒焦げ。かすかに薄茶色をした見目麗しいおこげが欲しかったので、これをおこげとは認めたくありません。

 理想はよくコリアンレストランで食べる石焼ビビンバにできているようなおこげです。じゃあビビンバを作ってみるか、ということで今度は「石焼」ならぬ「釜焼きビビンバ」に再挑戦してみました。

釜焼きビビンバは最高に美味しくできた

鍋底にまんべんなくゴマ油を塗ってから、お米を炊きます。

 釜焼きビビンバを作るにあたり、前回の反省をもとに“美味しいおこげの作り方”を下調べ。わかったのは2つ。【1】鍋底が黒焦げにならないようオイルを敷く、【2】吹きこぼれた際に一度お米をかき混ぜること。

 そこで今回はあらかじめ鍋底にゴマ油を塗っておきます。1合の米、合わせ調味料(水、酒、みりん、おろしニンニク、塩、醤油、コチュジャン)を入れて中火で加熱。吹きこぼれたら、フタを開けてご飯をかきまぜ、弱火で約10分。

炊きあがったらナムル、ひき肉、うずらの卵をのせて完成

 泡立ちがなくなり、ご飯が炊き上がったら、具材のナムルやひき肉などをのせてフタをし、15分蒸らします。そうして出来上がったのがこちら。なかなか本格的なビビンバができました。さっそくおこげの状態を確認すべく、スプーンで底からかき混ぜてみると…

今度はなかなか理想的なおこげができました

 じゃーん。茶色のいい塩梅のおこげができていました! 大成功です。

 実はこの釜を使うと、豚汁や味噌汁、オニオングラタンスープ、アヒージョ、野菜の蒸し煮なども1人分が簡単に作れて、しかも美味しくできます。これぞサステナブル。なんとなく意識の高い人間になれたような気がしますね。実際には釜飯の容器をセコく使い回しているだけですが…。

 というわけで、「峠の釜飯」を購入する機会があれば、ぜひこの釜を使っていろんな料理に挑戦してみてください。けっこう便利で楽しいです。おぎのやのHPにもアレンジレシピが出ていますよ。

(撮影・文◎土原亜子)