10月以降、新型コロナウイルス感染症の新規感染者増加が抑えられている一方、衆議院議員総選挙(10月31日投開票)によって日本社会・経済の動向がこれまで以上に注目されています。秋深まる中、2021年11月における【フラット35】金利動向を見ていきます。

2021年11月の【フラット35】金利

今月の全期間固定金利型住宅ローン【フラット35】(買取型)の金利(最低金利)は融資率9割以下、返済期間21~35年、機構団信を含めて1.33%となり10月から0.03%引き上げに。融資比率9割以下・返済期間15~20年の金利は1.21%と、前月から0.03%引き上げとなりました。

 

まとめ

最後に今月の金利変動について、不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんにまとめていただきます。

2021年11月分の【フラット35】(買取型)金利は前月から0.03ポイント上昇となりました。

機構債の表面利率が発表された前日の長期金利終値は0.09%と前月から0.06ポイントの急上昇となっています。これに対して機構債の表面利率は0.38%と前月から0.05ポイント上昇に抑えられました。さらに【フラット35】(買取型)の金利は1.33%と前月から0.03ポイントの上昇となっています。【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※下記に詳細を解説しています)からするとかなり上昇が抑えられたと評価して良いと思います。

下のグラフは9月から11月の機構債表面利率が発表された前日の長期金利終値と【フラット35】(買取型)の金利を重ねたものです。

9月から10月にかけてオレンジの折れ線グラフと青の棒グラフはほぼ接しているのですが、11月にはその差が大きく開いています。長期金利の上昇に対して【フラット35】の上昇がそれだけ抑えられているということです。

9月から10月にかけて機構債の表面利率が決まった時のマーケットの長期金利が0.02ポイント上昇したことを反映して機構債の表面利率が0.02ポイント上がり、その機構債の表面利率の0.02ポイント上昇を反映して【フラット35】の金利が0.02ポイント上昇したのです。

10月から11月にかけてはマーケットの長期金利が0.06ポイント上昇していますが、機構債の表面利率は0.05ポイントの上昇となっています。これは機関投資家があえて0.01ポイント低い利回りの機構債を購入していることを意味します。

機構債の表面利率が0.05ポイントの上昇に対して【フラット35】(買取型)の金利は0.03ポイントの上昇となっているのは、住宅金融支援機構が0.02ポイントの損を被ってわたしたちに住宅ローンを貸しているということになります。つまり、わたしたちが借りる住宅ローンの金利は、機関投資家と合わせて0.03ポイント上昇が抑えられたということになります。

【フラット35】は金融マーケットから直接資金を調達し、利用者に融資する仕組み上、長期金利の動向をダイレクトに反映しやすくなっています。その一方で公的融資であることから、急激な金利上昇の影響を緩和する傾向があります。これまでにも金利が急上昇する局面で【フラット35】の上昇が抑えられたことがありましたが、ここまで抑えられたのは筆者の経験では初めてです。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み
住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、下図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。

フラット35の仕組み

この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全な債券という考えで購入しますので、機構債の表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があります。