小惑星「16 Psyche」(プシケ/サイキ)」の想像図(Credit: SSL/ASU/P. Rubin/NASA/JPL-Caltech)


NASAが探査予定の小惑星は、およそ10,000,000,000,000,000,000ドルもの価値を持つレアメタルを含んでいるのかもしれません。1万ドルの1000兆倍、あるいは「100万ドル×100万ドル×100万ドル×10」と言っても大きすぎてピンときませんが、たとえば世界のGDP(国内総生産)合計は80〜90兆ドルですので、仮に100兆ドルとしたとしてもその10万倍もの数字です。


この小惑星は「16 Psyche」(「プシケ」、英語読みでは「サイキ」)と呼ばれるもので、火星の公転軌道と木星の公転軌道の間にある「小惑星帯」というところに位置しています。冒頭の想像図の通りジャガイモのような形をしていると考えられており、平均的な直径は226キロメートルです。これは月の直径の約16分の1にあたります。注目すべきはその中身で、たいていの小惑星は岩や氷でできていますが、プシケはほとんどが金属でできていると考えられています。地球のような惑星の中心部(コア)にも金属が存在しており、プシケの調査が惑星内部を知ることにもつながることが注目の理由です。


プシケに含まれる金属は鉄とニッケルなのですが、このプシケについてハッブル宇宙望遠鏡で観測したデータを分析した研究の結果、これまで考えられていたよりもニッケルが多い可能性があることが指摘されています。プシケの表面はほとんどが純粋な鉄と考えることも可能ですが、鉄がわずか10%しかなくても、観測データに合う可能性があるということです。


ニッケルは地球ではレアメタルとして、価格は変動しますが近年では1トンあたり2万ドル弱で取引されています。プシケの重さ(質量)から考えて、非常にざっくりとした見積もりではありますが計算上は冒頭の価値があるということになるようです。


探査機「プシケ」(サイキ)の想像図(Credit: SSL/ASU/P. Rubin/NASA/JPL-Caltech)


プシケはNASAの小惑星探査ミッション「プシケ」(小惑星と同じ名前です)による調査対象となっており、探査機は2022年に打ち上げが予定されています。米スペースX社のファルコンヘビーロケットにより打ち上げられ、2026年にプシケに到着予定です。プシケは太陽系の始まりの頃に惑星になれずに残されてしまったコアか、あるいは他の多くの物体との衝突の結果このような姿になったのかとも言われています。このミッションの主任科学者であるElkins-Tanton氏は「プシケはこの種の天体では唯一知られているものであり、プシケの探査は『惑星のコア』に行く唯一の方法です。私たちは宇宙に行くことによって、(地球のコアという)『内部の宇宙』を学ぶのです」と語っています。


いくら大量のレアメタルが存在していても実際に小惑星プシケそのものを地球に持ってきて大金持ちになるということはできませんが、宇宙からの資源採掘ができたらと考えると遠い将来に産業とのつながりができるかもしれず、面白いですね。


 


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Image Credit: Maxar/ASU/P. Rubin/NASA/JPL-Caltech
Source: Observer, JPL, NASA
文/北越康敬