研究チームが提唱した新しいモデルに基づいたエウロパの間欠泉のイメージ図(Image Credit: Justice Wainwright)


スタンフォード大学のシュタインブリュッゲ博士などからなる研究チームは11月5日、木星の衛星エウロパにあると考えられている間欠泉(プルーム)について、新しい発生モデルを提唱しました。


ハッブル宇宙望遠鏡やケック天文台、NASAの木星探査機ガリレオなどの観測結果からエウロパに水蒸気を吹き上げる間欠泉が存在することはほぼ間違いないと考えられています。


ただその発生源についてはよく解っていませんが、厚さ数キロにもなる氷の外殻の下にある広大な内部海や氷の外殻のなかにある大きな貯水池が考えられています。


今回、研究チームが提唱した新しいモデルはこのうちの氷の外殻のなかにある大きな貯水池から間欠泉が発生する仕組みの解明に挑むものです。研究チームは数千万年前に隕石の衝突によって形成された幅29kmになるマナナンと呼ばれるクレーターの分析からこの新しいモデルを提唱しました。


では、その新しいモデルの内容をみてみましょう!


隕石がエウロパの氷の外殻に衝突すると、その熱で、氷の外殻が溶けますが、すぐにまた凍り始めます。このとき氷の外殻のなかに小さな塩水の塊が残ります。塩分を含むと、水が凍り始める氷点が下がるためです。


しかし、この小さな塩水の塊はじっとはしていません。より塩分濃度が低い周りの氷を溶かしながら、より温度が高いクレーターの中心部分に向かって、氷の外殻のなかを移動していきます。


こうして、小さな塩水の塊が集まり、クレーターの中心部の氷の外殻のなかに、大きな貯水池ができます。


しかし、この大きな貯水池もやがて凍り始めます。水は氷ると体積が増します。そのため、この大きな貯水池は、やがて、内圧が高まり、破裂します。こうして間欠泉が発生するというわけです。


この新しいモデルはあくまでもまだ仮説にすぎませんが、2020年代中頃に打ち上げ予定のNASAのエウロパ探査機エウロパ・クリッパーによってこのようなエウロパの間欠泉の謎が解明されるかもしれませんね。とても待ち遠しいです。


 


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Image Credit: NASA/ESA/K. Retherford/SWR
Source: 論文/SCI-NEWS
文/飯銅重幸