タカラトミーがツイッターで炎上

「とある筋から入手した、某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね……!」というツイートが、企業の公式アカウントから投稿されて大炎上した。

写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

これは、着せかえ人形「リカちゃん」を販売する玩具メーカー、タカラトミーの公式ツイッターが10月21日に行った投稿だ。

当時ツイッター内では、「#個人情報を勝手に暴露します」というハッシュタグがトレンド入りしていた。タカラトミーの公式ツイッターはこれに便乗し、リカちゃんの声が聞ける「リカちゃん電話」サービスの告知をすることにした。冒頭のツイートには、リカちゃん人形の公開情報である誕生日、星座、身長、体重、電話番号、公式のプロフィール画像を添付したが、さらに続けて、「久しぶりに電話したら、昨日の夜はクリームシチュー食べたって教えてくれました。こんなおじさんにも優しくしてくれるリカちゃん……」と投稿した。

これに対して、性犯罪を想起させるとして、ツイッターユーザーは強く反発した。一部を以下に引用する。

「子供向けおもちゃを販売する会社が子供に対する犯罪を、しかも自社の看板商品リカちゃんを用いてネタ(筆者注・個人情報晒しや子どもにケアを求めるネタ)にしちゃ駄目でしょ流石に……親御さんも引きますよそりゃ。」(原文ママ。ツイート引用は以下同)

「タカラトミーの炎上見てしまったけど、インターネットのオタク、ロリコン仕草をネタとしてカジュアルに消費しすぎなんだよなあ

リカちゃんの購買層はそれがリアルな脅威として存在する世界なので……」

指摘の多くは、子ども向けの玩具を扱うメーカーが子どもの性被害を連想させる投稿を行ったことへの怒りや失望だ。

中にはインターネットでよくあるネタだと擁護する人もいたが、否定的な意見が多数派だ。

「タカラトミーの炎上はさすがに気持ち悪い。リプで、ネタやん! みたいな擁護もちらほらあったぽいけど『笑えんネタはネタじゃない』」

結局、ツイートから3日後にタカラトミーは謝罪し、投稿文を削除。公式アカウントのツイートを当面の間停止することを発表した。

■人気のハッシュタグに乗っかるリスク

人気のハッシュタグや「○○の日」などにちなんだ投稿は情報が拡散しやすく、多くの企業公式アカウントでも活用している。しかしその結果、消費者が一気に不信感を高める結果となった。公式アカウントである以上、これが企業としての自社商品の扱い方であり企業姿勢だと捉えられたからだ。

今回の炎上の一因は、タカラトミーの公式ツイッターの運営体制にあると考えられる。過去に公式ツイッターの担当者が取材に答えた内容によると、同社の公式ツイッターはここ5年ほど一人でアカウント運用を行ってきたようだ。

ダブルチェックの体制はあったが、今回の投稿はチェックされていなかったという。ただし、19年秋に行われたイベントでは、タカラトミーのツイッター担当者は承認フローがなくなったという趣旨の発言をしており、ダブルチェックが行われない投稿が常態化していた可能性もある。

そもそも同社の投稿内容については、以前から危うさが指摘されていた。「パンツの日」とされる8月2日には、「リカちゃんのかわいいパンツセット」のリンクととも「ぱ! ん! つ! ぱ! ん! つ!」とパンツを振る人型の絵文字を投稿していた。明らかにリカちゃん人形で遊ぶ子どもや保護者向けの目線では書かれていない投稿だ。

こうした投稿内容に関しては、昨年(2019年)6月の同社の株主総会でも株主から「今までの(企業公式ツイッターの)イメージを覆すような、ノリの良い兄ちゃんのような感じだが、トランスフォーマーを『見る抗うつ剤』とツイートしたりする等、危なっかしいところもあり、暴走してしまうのではと懸念している」と指摘がされていた。

これに対し、同社の小島一洋社長は、「懸念が出たこと事態は真摯に受け止める。ツイッターによる広報は重要でこれからも創意工夫していく。懸念されていることについては事前にチェックする対策をしているが、それは今後も継続していく」と回答していた。

今回の事態を見ると、危うさがありながらも事前チェックで内容を精査することを怠っていた姿が浮かび上がる。

■企業の公式アカウントの炎上は意外に多い

こうした企業の公式ツイッターアカウントでの炎上事例は後を絶たない。

炎上事例で最も多いのは、「誤爆」と呼ばれるものだ。誤爆とは、公式アカウントの担当者が自身の個人アカウントやDMへの投稿と間違えて、個人的な内容を公式アカウントに投稿してしまうことを指す。最近では、8月に日経QUICKニュース社が、「首相辞意で乱高下」という日経平均株価について伝える記事にリンクを貼りながら「キターーー」と投稿し、直後に訂正している。

その他、人気の企業公式アカウントに多いのが、企業公式アカウントでありながら運用担当者である「中の人」が個人的な見解を書き、その内容が批判されて炎上するパターンだ。

企業の公式アカウントに人気が出る理由の一つは、オフィシャルで堅苦しいはずの公式アカウントを身近に感じさせる工夫にある。公式のはずなのに「中の人」の人柄を垣間見ることができたり、会社や商品の宣伝以外にもインターネット上のカルチャーや文脈をよく理解した“ウケる”投稿をしたりすることで人気を集めるのだ。

それだけに、公式と言いながらも、担当者の個人的な見解の投稿も増えがちになる。タカラトミーのツイッターフォロワー数は執筆時点で約38万人だが、82万人を誇るシャープや41万人のキングジムも過去にツイッターの「中の人」の投稿が炎上した。

キングジムの投稿では、カリスマ美容師よりフォロワー数が多いという趣旨の“上から目線”に捉えられるようなツイートをしたことで、「美容師さんに失礼」「奢りがある」などと批判的なツイートが寄せられた。

そして、最も企業が避けたいのが、“話題化”(情報発信により世間の話題になること)を狙った投稿により、逆にユーザーから反発を受け炎上するパターンである。2018年には、キリンビバレッジの公式アカウントで「#午後ティー女子」が炎上した。

自社製品である「午後の紅茶」を飲んでいそうな女性として、人気のイラストレーターによる「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」など4パターンのイラストを公開。“あるある”ネタとして話題化を狙ったが、「女性客をバカにしている」と炎上した。

今回のタカラトミーの投稿は、「個人の見解」と「話題化」が悪い意味で複合的に絡まって炎上したとも言える。

また話題化を狙っての炎上は、女性同士が裏で足を引っ張り合う様子を描いたロフトのバレンタイン動画や、女性を容姿で判断するようなストーリーで批判されたルミネの動画など、ツイッターに限らず企業広告でも枚挙にいとまがない。

■過激な投稿ほど反響が大きい現実

筆者は、タカラトミーは最初からある程度の炎上は覚悟の上で、多くの人に自社の情報を広げることを優先していたのだと推測する。

これにはツイッターならではの構造も関係している。企業がツイッターの公式アカウントを運用する目的はさまざまだが、基本的にはより多くの人に自社の商品を知ってもらったり、好意を持って買ってもらったりすることにある。しかし、モノがあふれる現代において、単なる商品宣伝だけを行うツイッターアカウントには誰も見向きもしない。

フェイスブックなどと違い、ツイッターはリツイート機能があるため、情報が拡散しやすい。また、過激な投稿ほど反応が返ってきやすいことも特徴だ。ユーザーは、堅いはずの企業公式アカウントが意外な発信をすることに共感したり面白がったりしてリツイートやフォローをするのだ。その意味では、企業公式アカウントがフォロワー数を増やそうとする時点で、炎上のリスクが生じてくる。多くの人々が反応しやすい投稿は、必ずしもブランドを守りやすい投稿とは限らないからだ。

写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

炎上を防ぐことを第一に考えるなら、ブランドを守る投稿だけに徹すれば良い。企業それぞれの考え方や価値観によって、ギリギリの線を狙ってでも話題化させることを優先する企業が存在するということだ。今回は度が過ぎてしまった。

もちろん、企業が公式アカウントの発信を増やすことには大きな意味がある。

19年にアライドアーキテクツが行った「ツイッター企業アカウント利用に関する意識調査」では、「SNSで見たことをきっかけに、商品・サービスを購入したことはありますか?」との問いに76.9%が「ある」と回答している。いまやSNSでの発信は、消費者の購買行動に大きく影響を与えるのだ。

■炎上させないための3つの注意点

ただし、いかにユーザーを惹きつけたいからといって、企業としての根本的な信頼を失うような致命的な事態を起こしてはならない。今回のタカラトミーの失態はこれに近い。企業がこうした事態を避けるには、3つの注意点がある。

まず一つ目が、「価値観のアップデート」だ。これは最も大切なポイントである。

ママを顧客とする赤ちゃん向け商品を扱う企業が、「ママを応援」とうたいながら“育児は女性の仕事”というバイアスを感じさせる「ワンオペ育児」を肯定するような動画を発表して炎上したことがあった。

現在は、ダイバーシティ&インクルージョンを基本指針に掲げる企業が増えるなど、個人の持つ価値観や多様性を重視する考え方が社会に浸透してきている。にもかかわらず、いまだに企業が発信する動画やCMなどの炎上が後を絶たない。性差や各種ハラスメント、働き方、子育てなど、さまざまなトピックで企業と消費者の価値観の乖離(かいり)が露呈し、最も大切な顧客の信頼を失う事態が発生している。

タカラトミーの例で言えば、“暴露します”という過激な発言と見せかけて、「実はみんなが知ってる『リカちゃん』のプロフィールでした」というネタにしたつもりだったのかもしれない。しかし、これによってブランドに大きなダメージを与えてしまった。

ほぼ一人の人間の価値観、判断で投稿を行っていた可能性があるとはいえ、企業公式アカウントであることに変わりはない。ひとたび公式アカウントから情報が発信されれば、それは企業の持つ見解、見識、価値観と捉えられる。

今後は、ツイッターアカウントであっても、自社の意思を表明するような情報発信をする際は、投稿内容に問題がないか多様な視点からダブルチェックすることは必須だろう。

炎上させない、もしくは炎上を軽微に抑えるための2つ目のポイントは、普段から自社のフォロワーと良好な関係を築きあげることだ。普段から良好な関係を築いているアカウントの場合、炎上中にも応援してくれるユーザーが一定数存在する。

先ほど例に挙げたシャープやキングジムのプチ炎上の際も、一定数は支持する声があがっており、フォロワー数も減少することなく次第に沈静化した。特に、必ずしも企業に非のない炎上などの場合は、企業の意思表示がフォロワーにスムーズに伝わり迅速に鎮静化するケースもある。企業の公式アカウントの運営目的に照らしても、普段からの良好な関係性づくりは必須と言える。

3つ目は、当たり前のことだが、企業公式アカウントの運営目的を常に忘れないということだ。ツイッターアカウントの運用は、自社と顧客のつながりが作れるだけでなく、ビジネス上の利益もありアカウントの発展を目指すことは健全なことだ。

フォロワー数を増やしたり反応を良くしたりするというのは「手段」であって、目的化することがあってはならない。企業やブランドのファンを増やすという本来の目的を常に忘れない運用が求められる。

ツイッターの公式アカウントの運用にはリスクも伴うが、メリットも多い。何より会社や商品を愛してフォローしてくれるユーザーのために、有意義な運用を行ってもらいたい。

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松田 純子(まつだ・じゅんこ)
リープフロッグ CEO
1980年生まれ。2003年早稲田大学卒業、エン・ジャパンでの求人広告コピーライターを経て、ITベンチャーのワークスアプリケーションズ、博報堂系デジタル広告会社スパイスボックスなどで約15年にわたって広報業務に従事。18年にスパイスボックス経営戦略室マネージャーに就任後、19年より現職。“広報の力で企業競争力をアップする”広報コンサルティング会社・LEAPFROG(リープフロッグ)代表。「広報の目的」=「企業成長」と捉え、伴走型、人材育成型による広報組織の立ち上げ支援を実施。専門は、経営戦略と連動した広報戦略の全体設計、企業成長に資する採用コミュニケーション、社内コミュニケーション施策の設計と実行支援。メディアにて、広報、人事、コミュニケーション領域の執筆多数。
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(リープフロッグ CEO 松田 純子)