コロナ後のビジネスで中小企業が勝つために必須の経営戦略とは?

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コロナ禍で経済活動が停滞するなか、業績悪化に苦しむ企業は今後さらに増えていくことはまちがいない。

ただ、こうした社会環境の変化に弱音を吐いてばかりではいられないのが経営者である。どんな社会になろうとも、会社を守り、発展させていくのが経営者の責務。「コロナ後」の社会の需要と商機を睨んで、自社の戦略を考え直しておくべきタイミングは、今だ。

■中小企業には中小企業の「勝ち方」がある

『「小が大に勝つ逆転経営」―弱者19社を業績向上させた社長のランチェスター戦略―』(福永雅文著、日本経営合理化協会出版局刊)は、リソースに乏しい中小企業が変化の激しい時代を、大企業と伍して戦い、勝ち抜いていくための戦略策定の指針を授ける一冊。

経営の世界ではあまりにも有名なランチェスター戦略だが、これは本来今回のコロナ禍のような、社会の大変動のさなかこそ真価を発揮する戦略でもある。こうした変動によって、それまで堅調だったビジネスの需要が細っていったり、逆に新たな需要が生まれるからである。大企業には大企業の、中小企業には中小企業の「勝ち方」がある。ランチェスター戦略とはその「勝ち方」そのものなのだ。

■小さな会社は「局地戦」を勝ち抜け

ランチェスター戦略には二つの法則がある。
第1法則:「戦闘力=武器性能×兵力数」
第2法則:「戦闘力=武器性能×兵力数の2乗」

戦闘力とは競争力と言い換えてもいいだろう。武器性能とは商品やサービスの性能という「質」の部分。兵力は人員なので「量」の部分である。それを踏まえると組織内での情報共有によって人員の数以上の相乗効果(2乗の部分)が生まれることを示す第2法則は大企業の勝ち方だとわかる。

だから、中小企業は第1法則が適用する戦いを選ばなければならない。それは勝負する戦場を小さく絞り、そこでナンバーワンを目指す戦い、つまり局地戦である。「この部分では誰にも負けない」という武器(商品・サービス)を磨き、小さな戦場に戦力を一点集中して戦うのが、中小企業の勝ち方となる。

■Amazonができないことを売りにした小売店

ひとつ事例を見ていこう。
Amazonをはじめとするネット通販に押され、苦しい戦いを強いられているのが小売業界である。それまでは同じような規模の他店舗がライバルだったのが、今や世界的大企業がライバル。自分の店舗を見にきた客が商品を見定めると、スマホを取り出してAmazonで最安値を調べて購入する姿を見て、絶望感に駆られた小売業者は多いはずだ。

本書で実例として挙げられている、建材と建材工具を扱う丸田株式会社(仮名・以下丸田)もその一つ。丸田もご多分に漏れずAmazon等のネット通販に押され、先行きが見えない状況に陥っていたが、独自の戦略による差別化が成功した。

小売店にとって、ネット通販が登場したことで一番困るのは、例外なく価格競争に巻き込まれることだ。この流れに乗ったままでは、小規模な店舗ほど苦しくなるのは目に見えている。

だから、丸田はまず、価格競争から降りることにした。自社の店舗を「良い仕事をしたい建築職人のための目立て職人が始めた相談できる店」と定義し、打ち出した。価格で勝負するのではなく、建築職人たちに「新しい道具や建材のことで困ったことがあったら、なんでも相談できる場所」という価値を売り物にしたのである。

また、急に仕事が空いてしまった職人のために、求人や求職、仕事の紹介などができる態勢も整えた。ネット通販ではできないことを強みにし、地域という狭い戦場でトップを目指す戦いを始めたのだ。これは、ランチェスター戦略が示す中小企業の勝ち方の典型例だろう。そして、こうした戦い方を一度経験し、知っておけば、次に変化が訪れた時も対応しやすい。



中小企業が自分たちの組織なりの戦い方を見つけ、勝っていくために、ランチェスター戦略は大きな助けになるはず。

本書では戦略コンサルタントである著者が手掛けた数々の事例とともに、この戦略のポイントとなる理論と知識が明かされている。変化に強く、「勝ち方」を知っている組織を作るために、本書から学べることは大きいはずだ。

(新刊JP編集部)

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