【佐藤 翔平】イオンの78円ビール「バーリアル」、ここへきてバカ売れの理由 この安さで侮れない美味さ

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累計20億本を突破

リニューアルしたこの「ビール」を、もう飲まれただろうか?

イオンのプライベートブランド「バーリアル」シリーズ。レギュラー商品の「バーリアル」と、「バーリアルリッチテイスト」「バーリアル糖質50%オフ」の3つのシリーズ展開がされている。いわゆる第4のビール(麦芽比率25%以下のビールに、大麦スピリッツなどを加えたもの)と呼ばれる種類の発泡酒だ。

先月24日にはシリーズの全銘柄のリニューアルを発表し、29日(火)より全国のグループ最大約4000店舗にて発売を始めている。

これらが350ml缶で、78円(税抜)で購入できるというから驚きだ。他社の同様の発泡酒製品を見ても100円を超える商品が多い中、規格外の価格といえよう。

では、味もそれなりなのかというと、これが美味しい。実はバカ売れしているのだ。
発売された2010年6月当初から売れ行きは好調で、19年5月には累計20億本を突破。今後もさらに販売本数を伸ばしていくに違いない。

なぜ、「バーリアル」はこんなにも売り上げを伸ばしてのか? バズっている理由は、度重なるリニューアルによる「品質の向上」と、いい意味でそれに見合わない「低価格」にある。

国内工場にしたことで「低価格」を実現

販売開始から2017年5月までのシリーズ累計販売本数は16億本(350ml換算)であり、右肩上がりとはこういうこと。売上本数は順調に伸びていた。

それでも、同年6月には一度目の変更。麦汁の比重を高め、ドイツ産ホップの使用による改善が図られている。

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注目すべきは2018年6月。製造委託先が韓国のビールメーカーから、国内大手の「キリンビール」に変更(岡山、神戸、横浜、取手工場)されたことだ。

これが、圧倒的な「品質」に対する「低価格」を決定打にしたのだ。

ビールという飲み物は、非常に輸送効率が悪いお酒と言える。

ウィスキーなどの蒸留酒は、いわば濃縮した「アルコール飲料」を1コンテナ当たりに多く積むことができる。それに対してビールは製品の成分の9割ほどが水であり、ウィスキー本から提供できるものと同じ杯数分のビールを送るとするとその分コストがかさむ。

国内工場に変わることで、海外からの海を渡っての輸送費がカットされた。まず、これが価格に大きく貢献している。

合わせて、輸送時間が短縮された。韓国からの海輸にかかっていた時間がなくなり、移動中に起きる劣化の可能性が格段に低下したのだ。問屋をはさまず、直取引を行っていることも大きな利点と言える。

卓越した工程管理が美味しさを生んだ

そもそも、ビールは「特に劣化に弱いお酒」だと、皆様はご存じだろうか?

どのくらいデリケートかというと、本場ドイツでは「ビールは醸造所の煙突の見える範囲で飲め」と言われるほどと知っていただきたい。

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前述のとおり、ビールの90%以上は水で、アルコール度数も、国内で見かける大半は5〜7%。日本酒やワインなど他の醸造酒以上に傷みやすい。

さらに言えば、「熱」や「光」によってオフフレーバー(ある一定以上発生すると香味を不快にする香気成分の総称)が顕著になりやすい。「振動」が加われば、ビールに溶け込んでいる炭酸が抜けだしてきてしまい、泡の噴き出しやピリピリとした刺激を生み出してしまう。

レシピ変更による味の追及はもちろん、キリンビールの卓越した工程管理も相まって、一定の鮮度状態を担保できるようになったと言えよう。

キリンビールを製造元に選んだ理由としては、2018年の変更時にイオンリカーの神戸一明社長は「輸入ビールも品質は高いが、繊細な日本人の味覚に合わせた商品は国内メーカーの方が得意だ。キリンビールのものづくりの丁寧さを評価した」と述べている。

「本麒麟」に見るキリンの技術力

キリンのビールだけではない、発泡酒造りに対する品質の高さは同社の製品「本麒麟」からもうかがえる。

こちらも爆発的大ヒットを記録し続けており、過去10年の同社新製品で売り上げNo.1を達成。今年の年間販売目標も上方修正するほどの破竹の勢いだ。

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また、その美味しさを証明するかのように「インターナショナル・ビアカップ2018(以下、IBC2018)」など3つの国際ビール審査会での賞を受賞している。

実をいうと、私もこのIBC2018にビール審査員として参加していた。通常、この手の審査会にエントリーしてくるビールはクラフトブルワリーのものがほとんどだ。

世界23か国から754点がエントリーされたその中で「フリースタイルライトラガー」部門で1位を取ったのが「本麒麟」だった。審査はブラインドで行われるため、もちろんビールの銘柄も分からないまま評価される。

審査結果を見た際に私も衝撃を覚えたし、世界中を代表するビアジャッジたちも、改めてキリンビールの技術力の高さを垣間見た瞬間だった。

78円でこの味はズルい

さて、気になる「バーリアル」の味のほうはどうなのか? 今回のリニューアル点を、イオンは下記のように説明している。

<お客さまの声をもとに今回リニューアルした「バーリアル」は、2018年6月に発売した3つのテイストを改良し、黄色の「バーリアル」は“キレの良い後味”を、青の「バーリアルリッチテイスト」は“コクのある飲みごたえ”を、緑の「バーリアル 糖質50%オフ」は“スッキリとした後味”をより一層お楽しみいただける味わいに仕上げています。>(同社HPより引用)

キレの良い後味の「バーリアル」

まずは、レギュラー商品の「バーリアル」から。

非常にバランスが良い。それが第一印象であった。どうしてもこの手のビールは、スピリッツ特有の風味とボディの薄さが気になっていたのだが、アルコール5%ながら、ある程度のコクもあり、ホップの苦味と麦の甘味が心地よく拮抗している。

コクのある飲みごたえの「バーリアルリッチテイスト」

次に、青の「バーリアルリッチテイスト」。

他の2種に比べると、6%というアルコールも相まって、確かに飲みごたえがある印象だ。発泡酒でこの重厚さを感じられるなら、確かに病みつきになりそうだ。

スッキリした後味の「バーリアル 糖質50%オフ」

最後に、「バーリアル 糖質50%オフ」。

上面発酵系の酵母を使っているのだろうか? 他の2銘柄には感じなかったバナナやリンゴを思わせる華やかなエステル香(いわゆる、日本酒の吟醸香)を感じることができた。

ボディはかなりライトに仕上げていて、余韻にはリキュールのような味わいや酸味が目立つものの、さっぱりと飲める味わいだ。

総じて、これを350ml缶78円で飲めるのはズルいとしか言いようがない。

消費増税で財布のひもが締まる中、24本1ケースを購入しても1780円(税抜)、と2000円を切ってしまうならこれで、となるのはうなずけるテイストだ。

「バーリアル」は、発泡酒における「値付け」の基準を大きく塗り替えてしまった。
これに他社は追随してこれるのか。トップバリュの猛攻が止まらない。