容疑者が着用していたアニメ「エヴァンゲリオン」の衣装。左が表で右が裏

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「1月以降、福岡県鞍手町などで民家を狙った空き巣事件が散発し、宗像署を拠点として県警捜査3課との合同捜査が始まった。捕まったのはアノ男だった」(地元記者)

【写真】コスプレ姿で出没した、のどかな風景が広がる地域

 福岡県警は、窃盗などの疑いで同県飯塚市の無職・藤澤鉄也容疑者(37)を逮捕したことを3月15日に発表した。県警によると、容疑者は2月6日正午すぎ、宗像市内の会社員女性宅に侵入し、財布や封筒から現金計1万7197円を盗んで現行犯逮捕され、すでに送検されている。

綾波レイ姿で御用

 この男、身体にピタッとはりつくコスチュームを身にまとい、盗みに入る空き巣の常習犯だった。

「変な人が徘徊していると警察に連絡が入った。その地域では空き巣などが散発していたため、捜査員が巡回を強化していたところ、藤澤容疑者が目の前の民家に侵入したため、その場で御用になったらしい」(前出・地元記者)

 犯行時のコスチュームは、人気アニメ『エヴァンゲリオン』に登場する綾波レイという少女キャラの衣装。作中では“プラグスーツ”と呼ばれボディラインが際立つのが特徴だ。同容疑者は細身ながら身長約180センチと長身。こんな格好でウロウロすれば、通報されるに決まっている。

「泥棒というのは普通目立たないようにするものだが、なぜこのような格好をするのかわからない。コスプレをすると泥棒をしたくなるそうだ。容疑者はほぼすべての犯行でコスプレ衣装を着用したと供述している」(捜査関係者)

 盗みに入っても、金目のもの以外には手をつけないという。

 このコスプレ癖には、さらに理解不能な一面があった。衣装をめくると全身を覆う網タイツを着用しており、さらにその下にスクール水着型の女性用水着を着こみ、おまけにタイツ2枚を重ねばきしていた。想像するだけで全身が締めつけられるようなピッタピタのコーディネートだ。

 藤澤容疑者は1〜2月のあいだに計10件の窃盗をはたらき、被害総額は計3万3172円相当。現金以外に商品券も含まれていた。

「容疑者の自宅周辺ではコスプレしている姿の目撃情報はなく、車で移動し車内でコスプレ衣装に着替えていたとみられる」(地元記者)

スパイダーマンとバニーガールでも御用

 同容疑者は過去に2度、窃盗未遂などで逮捕・起訴され、いずれも実刑判決を受けている。

 最初は2009年6月、犯行時のコスプレはスパイダーマンだった。

「スパイダーマンの衣装の下には女性用競泳水着とタイツを着用し、口元にはマスクまでしていた」(地元記者)

 次は'16年7月、バニーガール姿だった。同年の週刊女性8月23・30日号で《「バニーガール姿の男と目が合った」110番通報で逮捕男の不気味な前科》と題し、黒いタンクトップに網タイツ、ハイヒールをはいたバニーガールの格好で同県太宰府市の空き家の敷地内に無断で入り込み、郵便ポストを物色したことを報じている。ちなみにこのとき、バニーの耳と尻尾はつけていなかった。

「両事件でそれぞれ3年近く服役している。1度出所してから再犯に及ぶまで間があったが、犯行のスパンは短くなっている」(前出・地元記者)

 飯塚市の実家で両親と暮らしていた藤澤容疑者。高校卒業後、就職したが実家を出ることはなかった。

 近所の飲食店の店長は、

「また捕まったの? バカだねぇ。両親がかわいそうだよな」

 と、あきれる。

 幼少期の容疑者を見たことがあるという近くの女性は、

「スパイダーマンの話はうわさ程度ですが聞いたことがあります。小さいころはよくチワワの散歩をしていて、動物が好きな子という印象があったんですけど」とポツリ。

 容疑者一家を古くから知る近隣住民は、

「ご両親は息子さんが再犯しないように注意していたらしいんですが、また起こってしまって。本当に参っているようです」

 と同情する。

余命半年の母は……

 容疑者の更生を願っていた両親は、今何を思うのか。自宅を訪ねて母親に話を聞いた。

「刑務所から出てきたあと一生懸命、警戒しましたが、なんでこんなことをするのか私にもわかりません。実は息子が無職と知ったのも逮捕されてからなんです。毎朝、作業着で家を出て、夜に同じ服装で帰ってくるので、ちゃんと仕事をしているものだと思っていました。もうどうすればいいのかわからない」

 母親によると、出所後は自動車の整備関係の職についていたという。しかし、いつの間にか辞めて、家族に嘘をつき、働いているふりをして金を盗んでいた。そんなに金に困っていたのか。

「私は大腸がんを患っていまして、余命半年の宣告を受けています。抗がん剤治療などをしていますが、意外とお金がかかってしまう。推測ですが、それを都合しようとしたのかもしれません。

 “お母さんが死ぬ前に旅行に連れていってあげたい”と言われたんです。だったらまじめに働いていれば、お金はちゃんともらえるのに……」(母親)

 紺色のカーディガンを羽織った母親は見るからにやせ細っており、時折、言葉に詰まりながらも淡々と話した。「本当はものすごくいい子なんですよ」と少しだけ言葉に力を込めた。

「おとなしくて、犬とかカメとか動物が好きで、心は優しいんです。高校卒業後、まじめに働いていたんですが、24歳のころ詐欺に引っかかって“女の子を紹介してあげるから”と言われるまま仲介料やら何やらで貯金していた500万円を全部振り込んじゃったんです。それからというもの、消費者金融にお金を借りたり、キャバクラにハマってしまって……」(同)

 犯罪者に転落したきっかけが何にせよ、コスプレ泥棒の言い訳にはならないが……。

 送検後、拘置所にいる息子から母親あてに手紙が届き、福岡市へ身柄が移されたことを知ったという。

「自宅からは40キロ以上離れています。病気を抱えている私はもう会いたくても会いに行くのは難しいですね。送検前に面会したとき、息子は“3度目の今回は(懲役刑が)長くなりそう”って言っていました。私の死に目には会えないでしょうね。本当に悔いが残ります」(同)

 そう話す母親の目には、涙が浮かんでいた。容疑者が償わなければならないのは窃盗罪だけではない。親不孝の罪もまた重い。