「耳鳴り軽減」や「集中力アップ」に効果があるといわれるホワイトノイズは聞き続けると脳に悪影響が出る可能性あり
By Jeremy Segrott
「シャー」という音色を持つノイズ音「ホワイトノイズ」は、集中力のアップや睡眠誘導の効果があるとされていますが、最新の研究によるとホワイトノイズの聴きすぎは脳に良からぬ影響を与える可能性が指摘されています。
Unintended Consequences of White Noise Therapy for Tinnitus-Otolaryngology's Cobra Effect: A Review | Otolaryngology | JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery | JAMA Network
Listening to White Noise Might Affect Your Brain in a Weird Way, Study Suggests
https://www.sciencealert.com/white-noise-doing-something-bad-to-brain-study-suggests-tinnitus-hearing-loss-plasticity-neural
ホワイトノイズとは、人間の耳に聞こえる可聴域の全ての周波数が均等な強度となるノイズです。特定の周波数が飛び出ていないためにピアノやギターのような「音色」らしい音色を持たない音で、特に水のせせらぎなどがホワイトノイズに近い特性を持っているといわれることもあります。
このホワイトノイズには集中力を高める効果がある、と考えられ始めたのは1960年代のこと。それ以来、脳科学者はホワイトノイズが人間の心理や脳に与える影響について研究を進めてきましたが、アイオワ大学の博士課程学生だったMouna Attarha氏は、ホワイトノイズを聴きすぎると脳の内部構造が変化するという研究結果を発表してホワイトノイズには「ダークサイド」が存在することを明らかにしました。
アイオワ大学の後は脳トレーニング用ソフトウェアを開発するPosit Scienceに在籍するAttarha氏は、「過去50年にわたり、脳科学者は脳の可塑性について多くの研究を続けてきており、知覚あるいはそれ以外のインプットによって脳が化学的、構造的、機能的に変化することを明らかにしてきました」「しかし、脳はホワイトノイズのようなランダムな情報を与えられた時に、神経細胞のつながりをネガティブな方向に再接続することを示す多くの証拠が明らかになってきています」と述べています。Attarha氏がカリフォルニア大学の研究者らと進めた調査の結果からは、「耳鳴り」の症状を和らげるための方法として推奨されているホワイトノイズは聴覚系に対して有害であることが浮き彫りになっています。
耳鳴りが発生するメカニズムにはまだわからない部分が多く残されていますが、多くの場合は大きな音にさらされたり鼓膜に外傷を受けたりすることで影響が現れると考えられています。一方、背景音として小さな音で与えられる騒音がどのような影響を聴覚系に及ぼすのかを示すはっきりとした証拠は見つかっていませんが、Attarha氏らのチームはバックグラウンドノイズへの長時間にわたる曝露により脳が影響を受けるという動物実験の結果に着目しました。
この分野における近年の発見をもとに研究チームは論文の中で、「最近10年間に動物モデルで主に行われていた急速に成長している文献は、非外傷性騒音への長期間の曝露が中央聴覚神経系の不適応な再構成を引き起こし、人間の耳鳴りの根底にあると考えられている聴覚系の永続的な広範な阻害を伴っている可能性があることを示しています」と述べています。
By Nickolai Kashirin
さらに論文には「特にこれらの変化は、一般向けに市販されている『ノイズ生成機』において典型的な60〜70デシベルの音圧レベル範囲の騒音レベルにさらされた後に観察されました。この騒音レベルは、アメリカ労働安全衛生局が『安全である』と示していた数値です」とも記されています。
研究チームによると、中枢聴覚系に対する神経作用として推定されるものは数多くありますが、その中には重要でない情報をフィルタリングする能力である「神経抑制」の低下や脳が信号変化を処理するのに要する時間の延長、そして脳の中で情報が表現される「皮質再現」における正確性の低下などが含まれると考えられるとのこと。
ただし、今回の結果をもとに「ホワイトノイズは危険」と結論を出してしまうには時期尚早です。しかし、ホワイトノイズを使った治療法が実際に取り入れられている状況が存在する以上、さらなる実態の解明が求められるところです。