格安スマホは成長鈍化、日本初の“フルMVNO”の戦略は
「あっと言わせるような、新しいものをつくることが重要」―。IIJの矢吹重雄MVNO事業部長はこう力を込める。同社はNTTドコモと、SIMにひもづいたユーザー情報を管理できる加入者管理機能(HLR/HSS)で連携。フルMVNOとなり、日本で初めてSIMの独自カード発行と柔軟なサービス提供を可能とした。
訪日外国人(インバウンド)向けに提供している「JAPAN TRAVEL SIM」は、SIMカードを携帯電話端末に差し込むと、日本全国で通信できるプリペイド型のもの。空港や家電量販店、ホテルなどで販売しているが、販売管理費を削減し価格を下げられることから、引き合いが相次いでいる。こうしたサービスは国内で採用が続くが、当初予想しなかった需要も生まれた。
「フルMVNOをきっかけに、自社サービスのプレゼンス(存在感)が高まった」と矢吹部長。もともとクラウドサービスやセキュリティー、データセンター開発などで基盤を持っており、そうしたサービスも注目され、フルMVNOとセットで販売するケースが増えた。
調査会社であるMM総研の「国内MVNO市場規模の推移」(2018年3月末時点)によると、プリペイド契約を含まない独自サービス型SIM回線契約数は携帯電話市場の6・4%で、前年度に比べ1・4ポイント増加し、1000万回線を超えた。だが、携帯電話市場でのシェアの伸びは16年度の1・6ポイント増より鈍化した。19年度以降はIoT(モノのインターネット)用途での契約数が増加すると予測している。IIJは18年3月末時点での事業者シェアで1位の座を楽天モバイルに奪われたが、IoT用途向けでは「フルMVNOサービスの提供開始でさらなる伸びが期待される」(MM総研)と見られている。
IIJも、個人向け格安SIMカードは「獲得単価のつり上げ合戦が繰り広げられている。そこでの勝負は賢くない」(矢吹部長)と見る。だからこそ「フルMVNOという武器を持ってIoT市場の受け皿となる戦略」を掲げる。今後の市場拡大を見据え「あっと言わせるサービス」を生み出せるかどうかが、さらなる成長のカギをにぎりそうだ。
(文・大城蕗子)
