スイス戦のような出来なら、これはもう他の人選を考えてもいい。日本の攻撃がアタッキングゾーンに入って行けなかったのは、トップ下に位置する本田がボールを受けてタメを作れなかったからに他ならない。
 
 運動量が少ない本田は、とにかくボールを受けてもすぐに囲まれてしまい、相手に寄せられて潰されるか、バックパスをするしか選択肢がなかった。「ボールが来たらやりますよ」ではなく、もっと敵のDFから離れてもらえるように細かくポジションを変えるとか、他のアタッカーといかに連係するかといったようなビジョンのある動きが欲しかったが、なんだかボールをもらって自分ひとりでなんとかしようとしているようにも見えた。

 もちろん、これは本田だけの問題じゃない。本田にボールを預ける側も、彼のポジショニングを常に把握して相手のマークを少しでも外すようなタイミングでパスを送るべきだし、本田にボールが入る瞬間に、周りもそれに連動していく意識を持たなければ、本田を起点とした攻撃のバリエーションは広がらないよ。
 
 スイス戦の攻撃面に関して言えば、アタッカーの選手たちはこういう流れで崩すんだという同じ絵を共有できていたのか疑問だ。これはその場のコミュニケーションで解決するといった問題ではなく、まずイメージとして攻撃の形をしっかり持てていなければ始まらない。

 さっきの本田を例に挙げれば、本田にボールが入った時に、他の選手はどんな動きをするのか、本田自身にはどんな選択肢があるのか、そういったことを全員で共有しなければ、今後も本田がトップ下で輝くことはないと思うよ。もちろん、香川がトップ下を務めても同じことが言えると思うけどね。
 
 しかし、そもそもトップ下はもっと運動量のある選手が務めるべきじゃないかな。イニエスタにしても、いつも中盤をフラフラ動きながらも必ずボール付近にいて、そこから最短距離でゴールへ導くようなプレーを見せている。彼ほどの運動量とビジョンが伴った選手は、日本にはいないけど、せめてまずは動きの量で相手をかき回すくらいはしてほしいね。