スコッティ「使い捨て布巾」のすごすぎる実力
今、布巾代わりにこれを使う人が増えているようです(写真:尾形文繁)
日々のあまりの忙しさから、今、家事の仕方を見直したいと思う人も多いだろう。仕事をしながらワンオペ育児を続けてきた筆者もその一人だ。
筆者が早くから見直したのは、布巾。布巾を卒業してキッチンタオルにシフトした。使い捨てるので衛生的な気がするし、煮沸やハイターによる消毒作業から解放され、だいぶ楽になった。
しかし、台所周りは拭く場所が多く、キッチンタオルの減りの速さに驚愕。そこで、洗ってすぐ乾く不織布のキッチンダスターを導入し、数日使ってヨレたら捨てるという方法に変更した。ところが、次第にキッチンタオルと比べ吸水性がイマイチで、水滴が残ることも多々ある点が気になるように……。
そんな経緯から他のものを探したところ、ブログや口コミなどで布巾代わりになると評判の、ある商品が目に留まった。日本製紙クレシアの「スコッティファイン 洗って使えるペーパータオル」だ。聞けば、売り上げは2014年度からずっと前年比150%程度で推移しているとのこと。一体、どのような商品なのだろうか。
一般的なパルプ100%ではない!
同社は、スコッティやクリネックスブランドを有する米国キンバリー・クラーク社(以下、キンバリー)と提携しているが、この商品もキンバリーが開発したものだという。キンバリーが家庭用品を強化する中、「工業用ワイパー」のエンボスや形状を変え、家庭用にリメイクした商品なのだそう。ちなみに、この工業用ワイパーとは、工場などで油やインクなどの汚れを落とすウエス(汚れを拭き取るための布)で、日本でも20年以上前から使われてきたという。
開発本部商品開発部長代理の村田剛さん
素材がもともと業務用だからか、「洗って使えるペーパータオル」は、濡れた時の丈夫さが大きな特徴となっている。
今、多くの家庭が使っている一般的なキッチンタオルの原材料はパルプ100%。ところが、同社製品はちょっと違う。詳しくは企業秘密だそうだが、大まかにいうと「一枚のポリプロピレン不織布のシートにパルプを織り込んだ作りになっている」と、同社開発本部商品開発部長代理の村田剛さんは説明する。
つまり、ベースが不織布なので、パルプ100%のキッチンタオルに比べ、濡れた時に11.3倍(同社比)の強度があるという。
実際使ってみたが、確かに丈夫。洗って絞っても破けない。さらに、食器を拭いてシンク周りを拭く→洗ってテーブルを拭く→また洗って最後はコンロなどキッチン周りの掃除に使うといういつもの台所での拭く作業が、たった1枚で完了。それでも全く破けなかった。
筆者が使っている不織布のキッチンダスター。洗えて使えるしすぐ乾くので気に入っているが、拭いた後の水滴残りが気になることも(写真:筆者撮影)
ロールタイプの「洗って使えるペーパータオル」は1枚あたり242×270mm。このサイズが大きいと感じる人もいるようだが、筆者のように「絞って拭く」ことが目的の人にはちょうどよいのではないだろうか。
また、「パルプの量も多いため、吸水性も従来のキッチンタオルよりいい」と、村田さん。洗って繰り返し使うことを重視するなら不織布のキッチンダスターの方が長持ちしそうだが、確かに同商品の方が水滴の拭き残しが少なく、吸水性に優れていると感じた。野菜の水切りの他、まな板や包丁の水気をとるのも1枚で済むし、調理中の作業にも重宝しそうだ。
このように不織布の頑丈さと紙の吸水性を兼ね備えた商品なので何かを拭くのに便利で、台所仕事に限らず、床や網戸などのお掃除に使う人も多いという。ただ、ポリプロピレン不織布を使用しているので高温の揚げ物などの油切りには向かないそう。揚げ物の時はライオンの「リード」のようなクッキングペーパーを使うなど、場面によってアイテムを使い分ける必要はありそうだ。
ちなみに筆者は、生の食品に触れたペーパー類は洗えたとしても再利用したくないので、野菜の水切りや魚肉のドリップを抑えるときはキッチンタオルを使い、同商品は布巾として数回活躍させるという併用が、我が家のベストかもしれないと考えている。
気になるコスパは?
使い方にもよるが、パルプ100%の一般的なキッチンタオルの再利用は一回、厚手タイプで人気のあるバウンティなどでもせいぜい二回くらいではないだろうか。よって、キッチンタオルを布巾として使うと1日4〜5枚は消費してしまう。一方、同商品なら消費量は1日1〜2枚とグッと抑えられそうだ。
ロールタイプは無地とプリント柄の2種類、その他ボックスタイプもあるが、一番人気は無地の1ロールタイプだという。1ロール61カット348円(税込、店頭想定価格)なので、布巾の代用として1日2枚使うとしたら1か月もつ。一方、前述のパルプ100%で人気のバウンティはアマゾンなどで購入すると1ロール84カットで355円(税込)前後。同じく布巾代わりに1日4枚使うと持つのは20日程なので、「洗って使えるペーパータオル」の方が若干お得感があるかもしれない。
発売当初のパッケージ。現在のビジュアルに比べると、確かに使用シーンはわかりづらい(写真:日本製紙クレシア提供)
現在、右肩上がりで売れている商品だが、実は2010年秋の発売から2年半ほどは全く売れなかったという。61カット×2ロール(税込598円)に加え、限定のお試しサイズとして小さめ34カットの1ロール(税込198円)も売り出したが、当時、キッチンタオルの主流相場は10カット×2ロール(100円くらい)だったため、消費者には割高に映ったようだ。
そこで、同社は2013年春にリニューアルを実施。消費者が手に取りやすいよう、61カットの1ロールのみで売り出すことに。根強いニーズのあるプリントタイプ(52カットの1ロール)も新たに投入した。
また、「ネーミングはわかりやすいものの、実際の使用シーンが見えにくかった」(同社営業推進本部マーケティング部課長の加藤雅紀さん)との反省から、「使用シーンの見える化」を徹底。パッケージに写真を入れて使用方法を視覚的に訴求し、使い方を説明する動画もアップした。実際に使ってもらうため、サンプルの拡散にも力を入れた。2枚入りのサンプルを既存商品に貼ったり、店頭で配ったりと、半年で10万サンプルを配布したという。
販促の中でも、特に店頭での推奨販売は効果があったそう。ドラッグストアの店頭に社員を派遣し、一般的なキッチンタオルと比べ濡らした時の強度がいかに違うかを目の前で見せると、売れ行きが伸びたという。実演した店舗ではリピート率も高まった。最近では、取り扱い店舗が増え、ホームセンターなどにも販路が広がり始めているという。
清潔&時短ニーズが背景に
営業推進本部マーケティング部課長の加藤雅紀さん(写真:尾形文繁)
現在、同商品に限らずキッチンタオル類の売り上げや消費量は全体的に伸びているそうだ。興味深いのは、4割の人がキッチンタオルをワイプ(テーブル等を拭く)目的で使っているということ(同社調べ)。
背景の一つは、清潔志向の広がりにあるようだ。「新型インフルエンザ流行直後の2009年頃から除菌ブームに。ネットの普及もあり、特にお母さん世代は感染症などに過敏に反応するようになっています」と、加藤さん。こうした世相柄、雑菌繁殖を避けられる「使い捨てができるワイプ商品」は、よく売れるようになったそうだ。
もう一つ、共働きの増加で時短ニーズが高まっていることも、売り上げが伸びる一因とみられている。多忙で布巾の消毒がつらいのは筆者だけではないようで、「家に布巾がなく、ティッシュペーパーやキッチンタオルで代用するご家庭が増えている印象」と、加藤さんは話す。
また、興味深いことに、「洗って使えるペーパータオル」は、男性ファンが多いとのこと。同社が2014年に、週に一回以上キッチンタオルを使う首都圏在住の男女に調査を行ったところ、60%以上の男性が同商品を使用しており、特に20代男性が多かったという。「意外でした。一人暮らしの男性のニーズがありそうです」(加藤さん)。
現在、台所周りのペーパータオル市場はパルプ100%のロールが多く、「技術的にはまだマネされる段階にはきていない」(村田さん)とのことで、今のところ明らかな類似商品は存在しないようだ。従来のキッチンタオルに満足していない人や、筆者のように長らく“布巾代用品ジプシー”となっている人は、一度試してみるといいかもしれない。