「プロフィール非公開」の作家が書店で対峙した思わぬ出来事とは?

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幻冬舎から出版された小説『Stay My Gold〜永遠の輝き〜』は、残酷な運命に翻弄される主人公の恋と成長を描く本格ラブストーリーだ。
本作のあらすじはこちらから

本作がデビュー作となる作者の藤堂希望さんは、主人公の名前をそのままペンネームとして使っており、かなりミステリアスな存在である。
一体どんな人が書いているのだろう。そして、希望という主人公が持つ強さ、儚さ、そして美しさに作者はどんなメッセージを詰め込んだのだろうか?
興味を抱いた新刊JP編集部は作者にコンタクトを取り、顔出しNGを条件にお話をうかがうことができた。

今回はインタビューの後編だ。(前編はこちらから

(新刊JP編集部)

■男性にも女性にも受け取れる作家名…「自由に楽しんでもらえれば」

――本作がデビュー作となりますが、もともと小説はお書きになっていたんですか?

藤堂:実はこれが初めてなんです。

――すごいですね! 小説って書き始めるとたいていの人が挫折するといわれていますが…。

藤堂:私自身も挫折しそうになったことが何度かありました(笑)。つらいなと思いつつ、編集者におだててもらいながら。でも物語を書く面白さは常に味わっていました。自分が思い描いた世界をそのままの形で筆を進められますから。

――これだけの文量を書ききるのは才能ですよ。

藤堂:ありがとうございます(笑)。でも、理想をだいぶ詰め込んで書いていたので、ありえないような設定を描いてしまいました。妄想癖があるのかもしれません。

――苦労して生まれたこの本ですが、最初に手に取った時のご感想は?

藤堂:実は本そのものではなく、最初に表紙のデザインとしてブックカバーをいただいたときの方が強く印象に残っています。「これは良いデザインだ」と思って、カバーだけだけど本屋に行って本棚に差し込みたくなりました(笑)。

5月31日に出版されたのですが、最寄り駅にある書店で発見したときは書店員さんに許可を取り、写真を撮ってSNSなどにアップしましたね。そうしたら「買います」なんていうたいへんにありがたい声もいただいて。

――いろいろな読者に広がっていますね。

藤堂:そうですね。いかに広げるかということは永遠の課題ですし、本を書く以上に大事だとも思えます。

ちょっと面白い話がありまして、本を探すと女性作家の棚に置かれているんです。プロフィール非公開なので、名前の印象からそういう判断をされているのでしょうけど…。私はどちらでも大丈夫です(笑)。

――確かに判別が難しい(笑)。

藤堂:それに、ボーイズ・ラブや百合モノにカテゴライズされるかもしれないですが、読んでくれた方が自由に感じとって、おとぎ話として楽しんでいただけたら嬉しいです。

――少し物語の話をお聞きしますが、主人公たちのバックに流れる背景がすごく具体的です。東京駅付近の景色などはしっかり書き込まれている印象がありました。

藤堂:実はその付近はよく趣味のウォーキングをしていて、季節の移り変わりを楽しんでいます。だからよく書き込めているのかな。また、葛西臨海公園や都庁なんかも自分が見た景色をそのままに書いていますよ。

――タイトルの『Stay My Gold』の意味について教えて下さい。

藤堂:実は最初は青海の名前から『Stay My Blue』というタイトルも考えていました。こちらはスターダスト・レビューさんの楽曲にも同じタイトルの名曲がありますので物語としては「Blue」ではなく、輝きを示す「Gold」だろうと思ったのと、ロバート・フロストの詩に由来する「Stay Gold」という表現があり、そこからヒントを得てこのタイトルにしたんです。

この詩はフランシス・コッポラ監督の『アウトサイダー』という貧困層と富裕層の対立をテーマにした青春映画にも、この「Stay Gold」という言葉が出てきます。自分の人生をいかに永遠に輝かせることができるか。

小説の中で希望は夢を見ます。薄暗い空間に人が横たわっていて、「強く抱きしめて」と言われる。不安と恐怖にためらいながらもその人を抱きしめた途端に、希望は強烈な光に包まれて輝く、横たわっていた人こそ自分自身の人生であると知るんです。自分自身を大切にすること、自分(人生)を強く抱きしめることが、永遠の輝きに変わる。それが『Stay My Gold』のテーマなんです。

――本作の続編は考えていますか?

藤堂:実は少し書き始めていて、この世界の10年後を描きたいと思っています。本にするかどうかは分かりませんが(笑)、人工知能(AI)により支配された世界で人間の選別が行われ…というSF的なものになる予定です。その中で希望、青海、そして生まれ変わりの流風も出てくる。本書もある意味SF的ですが、より一層ありえない設定の話を考えています(笑)。

――最後に、この本の読者の皆様にメッセージをお願いします。

藤堂:この本を手にして下さった方はありがとうございます。この作品は空想ゲームのようなところから完成しました。もし次があるとするならば、私の空想ゲームにまたお付き合い頂けると嬉しいです。

(了)

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