好きな歌手の曲の「アンサーソング」として小説を執筆、それがデビュー作に!?
だれよりも美しくしなやかな肉体を持つ藤堂希望は、あらゆる血液に輸血できる「黄金の血」を持ち、そして男女両性の特徴を持つ「インターセックス」だった。
自分の持つ運命に打ちひしがれ、心に闇と絶望を宿す希望。
そんな「彼女」に手を差し伸べたのが、香月流風(ルカ)という少年であり、彼もまた「心の闇」を抱えていた…。
幻冬舎から出版された小説『Stay My Gold〜永遠の輝き〜』は、残酷な運命に翻弄される主人公の恋と成長を描く本格ラブストーリーだ。
本作のあらすじはこちらから
本作がデビュー作となる作者の藤堂希望さんは、主人公の名前をそのままペンネームとして使っており、かなりミステリアスな存在といえる。
一体どんな人が書いているのだろう。そして、希望という主人公が持つ強さ、儚さ、そして美しさに作者はどんなメッセージを詰め込んだのだろうか?
興味を抱いた新刊JP編集部は作者にコンタクトを取り、顔出しNGを条件にお話をうかがうことができた。
(新刊JP編集部)
■好きな歌手の楽曲の「アンサーソング」として小説を書いた
――藤堂希望というお名前は本名ではないんですよね?
藤堂:そうです。主人公の名前からペンネームをそのままつけました。
――本作の藤堂希望という主人公はかなり特殊なキャラクターです。作者の藤堂さんも相まってミステリアスな存在に思えてしまいます。
藤堂:では、ミステリアスな存在ということにしておきましょう(笑)
――これは主人公の希望の成長物語ともいえる作品ですが、その特殊な設定から描き方に苦労されたのではなかったですか?
藤堂:「インターセックス」や「奇跡の血液」という設定は特殊ですが、実はこの設定は最初からあったものではなく物語に合わせる形でできたものでした。
最初にあった設定は、希望が誰もが振り向くような美しさを持ち、誰からも好かれるけれど、誰も愛することができないという闇を抱えているという部分です。また、もう一つあったのが起承転結の結の部分――つまり、普通の女の子と純粋な恋をするというものです。これ以上はネタバレになるので言えませんが、その合間を埋めるようにして、どんどん物語が出来ていきました。
――最初から明確なプロットがあったわけではなく。
藤堂:そうです。私は普段システムエンジニアの仕事をしているのですが、プログラムと小説は似ているところがあるんですよ。プログラムはゴールなく書き始められないですし、起承転結もはっきりしている。それと同じ感じで組み立てていったというか。だから、プログラムも一種の文学だと私は思っています。
――この『Stay My Gold』を書き始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
藤堂:私は音楽が好きで、この本の帯にコメントを寄せていただいた井上昌己さんやいろんなアーティストのライブに行く音楽ファンの一人です。その中で、いつも自分は勇気づけられているばかりなので、素晴らしいアーティストの方々の楽曲に対する私のアンサーソングみたいなものを作りたいと思ったのがきっかけです。
ただ、私はミュージシャンではありませんから、どういう形で表現しようか…そう悩んでいたときに、小説という方法を思いつきました。
――井上昌己さんの楽曲からインスピレーションを得た。
藤堂:そうです。本作は第一章と第二章からなるのですが、第二章に出てくる青海という女の子は井上さんの「B-blood」という楽曲に出てくるB型の女の子を投影しています。
また、小説を書いているときは音楽を聴いていたのですが、歌詞や楽曲のイメージに影響を受けて物語や人物像を創りあげていった側面もありますね。
――「若者の心の闇」などを含めて、現代的なテーマが多く内含されている作品です。ただその一方で人を愛することの素晴らしさや、希望と流風、青海の関係に瑞々しさといったポジティブな側面もうかがえる作品です。
藤堂:恋愛も1つのサブテーマとしてありました。今は不倫をはじめとした破たんした男女関係がクローズアップされていますが、もうそんな話にみなさんは聞き飽きていると思うんですね。だから、ありえないような設定でも純粋な恋愛ストーリーを書きたかった。
そして、この作品でこだわったことは、「悪人を出さないこと」です。主人公は深い悲しみを抱えているけれど、素晴らしい人たちが自分の周囲に必ずいる。そこに気付いてもらいたいですね。人生はそうでなくてはいけないと思います。
――恋愛がサブテーマというと、メインテーマは他にあるということでしょうか?
藤堂:そうです。メインテーマは、古代ギリシャの哲学者だったプラントが提唱した「人間球体説」に基づくものです。
これは、もともと男女は1つの球であり、完全な存在だったところを、神様の嫉妬によって引き裂かれ、男性と女性という2つの性に分かれてしまった。だから求め合うのだ、というものです。
でも、希望は男性と女性両方の特徴を持っています。だからこそこの作品で過酷な運命を背負わせました。本当の自分(現実)と向き合う勇気を持つ。そして、人は一体何のために生まれてくるのか、どう生きるべきなのか?完璧な人間とは?そんな部分をこの作品の中で描きたかったんです。
――第一章は流風、第二章は青海がそれぞれ希望の相手役として登場します。この2人についてはいかがですか?
藤堂:青海は先ほどお話ししたように、井上さんの楽曲からインスピレーションを得て創ったキャラクターです。流風の方は、実は誰かをサンプリングしたわけではありません。ただ、漠然と病院で出会う人物という設定があったので、そこで出会う人という縛りから性同一性障害という設定がでてきました。
――いずれもみな10代です。若さって何だと思いますか?
藤堂:なんでしょうか…。何度でも失敗が許される世代、失敗をしながら本当の自分の人生を見つける世代ですかね。若ければ何度でもやり直しが効きます。それは若さの特権じゃないですか。
(後編へ続く)
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そんな「彼女」に手を差し伸べたのが、香月流風(ルカ)という少年であり、彼もまた「心の闇」を抱えていた…。
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本作のあらすじはこちらから
一体どんな人が書いているのだろう。そして、希望という主人公が持つ強さ、儚さ、そして美しさに作者はどんなメッセージを詰め込んだのだろうか?
興味を抱いた新刊JP編集部は作者にコンタクトを取り、顔出しNGを条件にお話をうかがうことができた。
(新刊JP編集部)
■好きな歌手の楽曲の「アンサーソング」として小説を書いた
――藤堂希望というお名前は本名ではないんですよね?
藤堂:そうです。主人公の名前からペンネームをそのままつけました。
――本作の藤堂希望という主人公はかなり特殊なキャラクターです。作者の藤堂さんも相まってミステリアスな存在に思えてしまいます。
藤堂:では、ミステリアスな存在ということにしておきましょう(笑)
――これは主人公の希望の成長物語ともいえる作品ですが、その特殊な設定から描き方に苦労されたのではなかったですか?
藤堂:「インターセックス」や「奇跡の血液」という設定は特殊ですが、実はこの設定は最初からあったものではなく物語に合わせる形でできたものでした。
最初にあった設定は、希望が誰もが振り向くような美しさを持ち、誰からも好かれるけれど、誰も愛することができないという闇を抱えているという部分です。また、もう一つあったのが起承転結の結の部分――つまり、普通の女の子と純粋な恋をするというものです。これ以上はネタバレになるので言えませんが、その合間を埋めるようにして、どんどん物語が出来ていきました。
――最初から明確なプロットがあったわけではなく。
藤堂:そうです。私は普段システムエンジニアの仕事をしているのですが、プログラムと小説は似ているところがあるんですよ。プログラムはゴールなく書き始められないですし、起承転結もはっきりしている。それと同じ感じで組み立てていったというか。だから、プログラムも一種の文学だと私は思っています。
――この『Stay My Gold』を書き始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
藤堂:私は音楽が好きで、この本の帯にコメントを寄せていただいた井上昌己さんやいろんなアーティストのライブに行く音楽ファンの一人です。その中で、いつも自分は勇気づけられているばかりなので、素晴らしいアーティストの方々の楽曲に対する私のアンサーソングみたいなものを作りたいと思ったのがきっかけです。
ただ、私はミュージシャンではありませんから、どういう形で表現しようか…そう悩んでいたときに、小説という方法を思いつきました。
――井上昌己さんの楽曲からインスピレーションを得た。
藤堂:そうです。本作は第一章と第二章からなるのですが、第二章に出てくる青海という女の子は井上さんの「B-blood」という楽曲に出てくるB型の女の子を投影しています。
また、小説を書いているときは音楽を聴いていたのですが、歌詞や楽曲のイメージに影響を受けて物語や人物像を創りあげていった側面もありますね。
――「若者の心の闇」などを含めて、現代的なテーマが多く内含されている作品です。ただその一方で人を愛することの素晴らしさや、希望と流風、青海の関係に瑞々しさといったポジティブな側面もうかがえる作品です。
藤堂:恋愛も1つのサブテーマとしてありました。今は不倫をはじめとした破たんした男女関係がクローズアップされていますが、もうそんな話にみなさんは聞き飽きていると思うんですね。だから、ありえないような設定でも純粋な恋愛ストーリーを書きたかった。
そして、この作品でこだわったことは、「悪人を出さないこと」です。主人公は深い悲しみを抱えているけれど、素晴らしい人たちが自分の周囲に必ずいる。そこに気付いてもらいたいですね。人生はそうでなくてはいけないと思います。
――恋愛がサブテーマというと、メインテーマは他にあるということでしょうか?
藤堂:そうです。メインテーマは、古代ギリシャの哲学者だったプラントが提唱した「人間球体説」に基づくものです。
これは、もともと男女は1つの球であり、完全な存在だったところを、神様の嫉妬によって引き裂かれ、男性と女性という2つの性に分かれてしまった。だから求め合うのだ、というものです。
でも、希望は男性と女性両方の特徴を持っています。だからこそこの作品で過酷な運命を背負わせました。本当の自分(現実)と向き合う勇気を持つ。そして、人は一体何のために生まれてくるのか、どう生きるべきなのか?完璧な人間とは?そんな部分をこの作品の中で描きたかったんです。
――第一章は流風、第二章は青海がそれぞれ希望の相手役として登場します。この2人についてはいかがですか?
藤堂:青海は先ほどお話ししたように、井上さんの楽曲からインスピレーションを得て創ったキャラクターです。流風の方は、実は誰かをサンプリングしたわけではありません。ただ、漠然と病院で出会う人物という設定があったので、そこで出会う人という縛りから性同一性障害という設定がでてきました。
――いずれもみな10代です。若さって何だと思いますか?
藤堂:なんでしょうか…。何度でも失敗が許される世代、失敗をしながら本当の自分の人生を見つける世代ですかね。若ければ何度でもやり直しが効きます。それは若さの特権じゃないですか。
(後編へ続く)
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