米国と戦争危機でも金正恩体制がつぶれない、本当の仕組み
中国の習近平国家主席は12日、トランプ米大統領と電話で会談した。
米ホワイトハウスは会談の内容について、両首脳が「北朝鮮は挑発的行為をやめるべき」「国連安全保障理事会が採択した北朝鮮への制裁決議は重要な一歩」との見解で一致したと発表した。
北朝鮮国民も恐れている
他方、中国外務省の発表では、習氏は会談で、朝鮮半島の緊張を高めるような言動を慎むよう米朝双方に求め、外交の重要性を強調したという。米中でニュアンスが異なるが、トランプ政権のこれまでの言動を考えると、中国側の発表の方が信じられる気がする。
いずれにせよ習氏は、北朝鮮への武力行使に反対する姿勢を明確にしたということだ。
その一方、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は11日付の社説で、「国益が脅かされれば中国は断固として対応するとの立場を明確にし、全ての関係国に理解させる必要がある」と主張。そのうえで、「仮に北朝鮮が先に米国に向けてミサイルを発射し、米国が反撃した場合は、中国は中立を保つことを明らかにすべきだ」との立場を示した。
そして同時に、「北朝鮮の体制転換と朝鮮半島の政治情勢変更を狙って米国と韓国が先制攻撃を仕掛けた場合は、中国は阻止する」ともしている。
中国の対北朝鮮政策を巡ってはかねてから、「自国の安定を優先し、米国のパワーとの間の緩衝地帯を維持するため、北朝鮮の体制存続を望んでいる」と言われてきた。環球時報の論調は、まさにこの見方が正しかったことを示すものだ。
中国は、脱北者を摘発しては強制送還しており、「人権侵害を助長している」との批判にも耳を貸さない。
(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち)
それもこれも、自らの国益のため、北朝鮮の体制を安定させたいが故なのだ。
世界のすべての国は、自国の安全と安定を優先する権利を持つ。朝鮮半島が韓国主導で統一され、丸ごと米国の同盟国となる事態は、中国としては何としても避けたいに違いない。
しかし、安全と安定を求めているのは他の国も同じである。
金正恩党委員長が核兵器開発とミサイル発射の暴走を続けられる根本的な理由は、北朝鮮に民主主義がないことにある。北朝鮮国民の多くは、戦争を恐れ、平和で安定した暮らしを望んでいる。
だが、そのような主張を体制にぶつけるようなことをしたら、軍隊に殺されるか政治犯収容に送られるなどして抹殺されてしまう。
つまり、北朝鮮の核の脅威を除去するためには、北朝鮮の民主化が必要なのだ。これなくしては、日本人拉致問題だって最終的に解決することはできない。日本や韓国が安全と安定を確保するためには、結局のところ北朝鮮の民主化を待たざるを得ない。
それを実現する方法として、韓国主導の朝鮮半島統一は、比較的有力な可能性だ。中国は望まずとも、日本や韓国、米国にはそれが必要なのだ。
もっとも、他に方法がないわけではない。例えば、中国が北朝鮮を民主化に導くというのも一案だろう。いまだ民主化したとは言えない中国にそんなことが可能なのか、との声もあろうが、北朝鮮社会を今よりずっとマシにすることぐらいは出来るのではないか。
もしかしたらこのあたりが、中国と韓国、日本、米国、そして北朝鮮国民にとって、利害の一致を見出せる最大公約数的な領域と言えるかも知れない。