12球団NO1の驚異的な「勝利の方程式」誇る楽天 各球団のブルペン事情は?
阪神はセトップ級、「勝利の方程式」は順位にも影響?
ペナントレースも後半戦に入り、各球団の趨勢がはっきりしてきた。ここへきてモノを言うのが投手陣、とりわけ救援投手陣だ。彼らが機能するかどうかで、勝利の行方は大きく変わってくる。
近年「勝利の方程式」という言葉がよく使われる。救援投手陣のリレーによって勝利をもたらすパターンのことだ。
2005年、阪神タイガースはジェフ・ウィリアムス(37ホールド)、藤川球児(46ホールド)、久保田智也(27セーブ)のいわゆる「JFK」トリオの活躍で優勝した。7回、8回をセットアッパーが投げて、リードを保ったままクローザーが最後を締める。こういうパターンを「勝利の方程式」と呼んでいる。
各球団の救援投手陣の「勝利の方程式」の成立状況についてみていこう。まずはパ・リーグから。
○日本ハム
マーティン 20登板0勝2敗1S、12H、防御率2.50
宮西尚生 29登板1勝3敗0S、17H、防御率3.47
谷元圭介 34登板0勝2敗1S、21H、防御率2.64
増井浩俊 30登板3勝1敗14S、3H、防御率2.10
セットアッパーのマーティンが戦線離脱が多い上に、自慢の宮西、谷元も今年は今ひとつ。そのため、セーブ機会で増井が投げることが少なく、方程式は成立しているとは言い難い。
○ソフトバンク
五十嵐亮太 39登板6勝0敗0S、10H、防御率1.30
森唯斗 40登板1勝2敗0S、19H、防御率2.43
岩嵜翔 43登板4勝2敗1S、21H、防御率1.42
サファテ 37登板1勝1敗29S、3H、防御率0.96
サファテという絶対的なクローザーの前に、3枚の優秀なセットアッパーがいる。「勝利の方程式」が成立していたが、7月11日に五十嵐が左太ももを負傷。1枚が抜けて、方程式に亀裂が生じている。
○ロッテ
内竜也 30登板4勝0敗5S、10H、防御率1.76
大谷智久 34登板2勝1敗0S、13H、防御率3.78
益田直也 30登板0勝3敗8S、3H、防御率4.75
内だけが安定感のある働きをしているが、それ以外の救援投手は機能せず。そもそもリードを保って救援投手につなぐ機会が少ないので、方程式は成立していない。
楽天の「勝利の方程式」は12球団NO1
○西武
シュリッター 40登板0勝2敗0S、26H、防御率1.56
牧田和久 36登板1勝2敗0S、23H、防御率0.68
増田達至 31登板1勝3敗19S、3H、防御率2.97
新外国人シュリッターが安定感ある投球を続けたことで、牧田の負担も減った。クローザーの増田は打ち込まれることもあるが、「勝利の方程式」が成立している。
○楽天
森原康平 29登板1勝3敗0S、13H、防御率4.50
福山博之 36登板5勝0敗1S、15H、防御率0.00
ハーマン 34登板2勝0敗1S、23H、防御率1.93
松井裕樹 40登板3勝1敗27S、3H、防御率0.22
新人森原はやや投球を覚えられた感があるが、福山がいまだ自責点0という空前の活躍。ハーマンも優秀、そして松井も自責点1という驚異的なクローザーぶり。まちがいなく12球団一の「勝利の方程式」だろう。
○オリックス
黒木優太 39登板5勝1敗1S、21H、防御率3.00
平野佳寿 38登板2勝5敗19S、7H、防御率2.87
ポストシーズンに進出した2014年の原動力となった救援投手陣が、平野を除いて崩壊。ルーキー黒木の頑張りはあるが、方程式は成立していない。
こう見ると、現在、パの2強を構成している楽天とソフトバンクは「勝利の方程式」が確立している。やはり優勝の決め手だと言えるだろう。一方、セ・リーグでも「勝利の方程式」を成立させている球団が上位にいる。ペナントレースの決め手と言ってよいだろう。
セ・リーグの救援事情
○広島
中崎翔太 26登板2勝0敗1S、13H、防御率1.40
ジャクソン 38登板2勝2敗1S、20H、防御率2.92
今村猛 39登板1勝1敗17S、7H、防御率1.88
「勝利の方程式」は一応成立しているが、7月18日はジャクソンが阪神打線に大きく打ち込まれ、セーブ機会ではないのに今村が登板する事態となった。1強状態だが、救援投手陣は万全とは言えない。
○巨人
マシソン 32登板2勝1敗1S、18H、防御率1.96
カミネロ 33登板0勝3敗、18S、2H、防御率2.25
7回を任せる存在が長く決まらなかった。また外国人枠の都合でカミネロを降格させ、マシソンがクローザーに回るなど、「勝利の方程式」はなかなか成立せず。最近は森福、西村健太朗が安定しているが、巨人も万全ではない。
○DeNA
砂田毅樹 36登板1勝0敗0S、13H、防御率3.03
パットン 34登板3勝3敗7S、11H、防御率4.18
三上朋也 41登板2勝2敗0S、21H、防御率4.24
山崎康晃 40登板1勝1敗14S、11H、防御率1.66
DeNAが3位で踏ん張っている大きな要因は救援投手だ。クローザーの山崎は一時不振に陥り、パットンと配置転換になったが復帰後は安定。セットアッパーは打ち込まれることも多いが、調子のいい投手を起用することでカバーしている。
セトップクラスの「勝利の方程式」誇る阪神
○阪神
高橋聡文 33登板2勝0敗1S、10H、防御率1.73
桑原謙太朗 39登板3勝1敗0S、22H、防御率0.70
マテオ 39登板6勝2敗0S、24H、防御率1.70
ドリス 36登板1勝3敗24S、3H、防御率2.86
桑原、マテオ、ドリスは、セで一番の「勝利の方程式」だろう。昨年1軍登板がなかった桑原の活躍は驚異的。しかしマテオ、ドリスは昨年、ともにスタミナ切れを起こしている。ここからが正念場だ。
○ヤクルト
石山泰稚 39登板1勝4敗0S、17H、防御率3.05
ルーキ 39登板2勝4敗0S、18H、防御率3.62
秋吉亮 29登板4勝3敗10S、5H、防御率3.10
2015年は抜群の「勝利の方程式」で優勝したが、今やみるかげもない。7月4日に秋吉亮が右肩の故障で戦線離脱してからは先発の小川泰弘がクローザーを務めるが失敗。方程式は成立しそうにない。
○中日
又吉克樹 23登板4勝1敗0S、9H、防御率2.30
三ツ間卓也 30登板2勝1敗0S、11H、防御率2.59
岩瀬仁紀 40登板2勝4敗1S、23H、防御率3.56
田島慎二 44登板1勝4敗24S、4H、防御率2.74
下馬評の低かった中日がそこそこがんばっているのは、救援投手の活躍によるところが大きい。特に最年長選手の岩瀬が奇跡の復活。抜群の出来の投手はいないが、先発から再び中継ぎに回った又吉も含めて、何とか「勝利の方程式」を維持している。
救援投手は過酷な仕事だ。突然投げられなくなることも多い。今「勝利の方程式」が機能している球団でも予断は許さない。今後とも注視していきたい。(広尾晃 / Koh Hiroo)