気になるのは価格だけ!? SIMフリースマホの大本命「ZenFone 3」を試す
ASUS JAPANのSIMフリースマートフォン(スマホ)「ZenFone」シリーズは、同社調べではあるが、今年の上半期のSIMフリースマホの国内販売台数でトップを獲得したという。価格.com上でも人気が高く、国内SIMフリースマホ市場をリードするモデルといっても過言ではないだろう。今回は、2016年10月7日に発売された最新モデル「ZenFone 3」をレビューしていきたい。価格.com最安価格は42,793円(2016年10月19日時点)。SIMフリースマホの売れ筋価格帯である、2万円台〜3万円台より高く、“格安スマホ”とは言えないものの、それでも価格.comの「スマートフォン」カテゴリーの人気ランキングで堂々の1位を獲得している(2016年10月19日時点)。その人気の理由に迫っていきたい。
ZenFone 3は、ASUS JAPANの最新SIMフリースマホ。デュアルSIMデュアルスタンバイに対応し、2枚のSIMカードを使って、双方の待ち受けができるのが特徴だ。5.2型のフルHD液晶ディスプレイや指紋センサー、1600万画素カメラなどを搭載する。価格.com最安価格は42,793円(2016年10月19日時点)
いい意味でZenFoneらしくない新デザイン
ZenFone 3の特徴は、(1)新しいデザイン、(2)デュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)への対応、(3)充実した基本性能の3つだ。
まずは新しいデザインを見ていきたい。ZenFoneシリーズはこれまで、背面がカーブした形状を一貫して採用してきた。持ちやすく、薄く見えるのがポイントだが、外装に樹脂素材を使っているため、金属やガラス素材を使った他社の高級モデルと比べると質感や高級感は正直劣っていた。それに対して、新モデルのZenFone 3は前面と背面にガラス素材を使用して、一気に質感と高級感がアップしている。今回お借りしたパールホワイトモデルは、フレームが落ち着いた金色で、女性が使っても違和感のないカラーリングとなっている。いい意味でASUSらしくない洗練されたデザインに仕上がっている。
ディスプレイは5.2型の液晶で解像度は1080×1920のフルHD。表示品質は高く、自然な発色で、輝度も高い。写真や動画を高画質で楽しめるディスプレイだ。「ZenFone 5」や「ZenFone 2」は、画面がやや暗い印象を受けたが、ZenFone 3は600nitsまで明るくなっており、屋外での視認性が格段にアップしている。
本体サイズは73.9(幅)×146.8(高さ)×7.69(厚さ)mm、重量は144g。画面の左右の縁(ベゼル)が細く、画面サイズの割にはコンパクトにまとまっており、持ちやすいボディだ。滑りにくいガラス素材を使っているのも、この持ちやすさにつながっている。金属ボディのスマホと持ち比べると、フィット感の違いがよくわかる。白色ということもあるが、ガラス素材の背面は、指紋が目立ちにくく、カバーを付けずに使ってもよさそうだ。個人的な好みはあると思うが、デザイン面で気になるのは、背面の出っ張ったカメラ部分くらいだろうか。実利用に影響することはないが、せっかく7.69mmのスリムなボディなのに、カメラ部分がぽっこり出ているのはスマートではない。
ガラス素材を使ったボディは、手によくフィットする。ベゼルが細く5.2型のスマホとしてはコンパクトにまとまっており、握りやすい。さすがに片手だけで操作するのは難しいが、画面を左隅に寄せる「片手モード」を備える
パールホワイトモデルだと見えにくいが、ガラス素材を使った背面にはZenFoneシリーズの象徴である、「禅」にインスパイアされたという同心円の模様が入っている
もう1色のサファイアブラックモデルは青色が混じった黒色。シックで落ち着いた雰囲気のカラーだ
背面のカメラ部分がかなり出っ張っている。机の上に置いて操作すると、カメラ部分に力が加わりそうで心配になる。気になる場合はカバーなどを付けるといいだろう
注目機能のDSDS対応! auのVoLTEも利用できる
ZenFone 3は、最近注目のデュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)に対応している。DSDSとは、2枚のSIMカードを使って、2回線を同時に待ち受け(スタンバイ)できる機能のこと。今年7月にDSDS対応のモトローラ「Moto G4 Plus」が発売され、価格.com上で大人気となり、DSDSに対応したスマホが注目を集めるようになってきた。
DSDSの活用法としては、たとえば、仕事用とプライベート用の2枚のSIMカードを挿して、用途や相手に合わせて回線を使い分けるといったことができる。仕事用のスマホや携帯電話を会社から支給されているビジネスパーソンなら、プライベート用のスマホといっしょにできるというわけだ。また、格安SIM利用者が増えている中で注目されているのが、音声通話に完全定額の大手キャリアのSIMを使い、データ通信にMVNOの格安SIMを使うという組み合わせだ。頻繁にかつ長時間電話をするという人でも、これならトータルの利用料金を安く抑えられる。普段は大手キャリアのSIMをメーンに利用して、高速通信容量を使い切ってしまった場合に、MVNOの格安SIMでデータ通信をするという手もある。
デュアルSIMカードの設定画面。音声通話、SMS、データ通信で、優先的に利用するSIMカードを選べる
どちらのSIMカードを使って発信するかを選べる。「SIM 1」「SIM 2」という名称は変更できるので、わかりやすい名称にしておくと誤操作を防げるだろう。着信時もどちらのSIMカードにかかってきているかがわかるようになっている
さらに、ZenFone 3はauのVoLTEにも対応しており、au回線を使うUQコミュニケーションズの「UQ mobile」やケイ・オプティコムの「mineo」(Aプラン)でも使える。auのネットワークに対応したSIMフリースマホの選択肢は少ないので、auのネットワークを使いたいというユーザーにとっては朗報と言えそうだ。実際に試そうとau本家のSIMカードを挿してみたが、データ通信はできるが音声通話とSMSが利用できなかった。それもそのはず、筆者のSIMカードはCDMA2000対応機種用の「au Nano IC Card(LTE)」だったので、CDMA2000非対応のZenFone 3では基本的にデータ通信しか利用できなかったのだ。音声通話とSMSを使いたい場合は、「au Nano IC Card 04(au VoLTE)」への変更が必要になるようだ。本家auのSIMカードを使う場合は、APNの設定を自分自身でやらなければならず、auのサポートも当然受けられない。ハードルは決して低くないので、この点は肝に銘じておきたい。
auネットワークを利用するMVNOのAPNがあらかじめセットされている(auのものは手動で入力したもの)
また、1つのSIMカードスロットはmicroSDメモリーカードスロットと兼用する仕様なので、SIMカードを2枚挿すと、microSDメモリーカードが使えなくなる点にも注意したい。さらに、SIMスロットの形状がmicroSIMとnanoSIMと別々なので、この点にも気を付けたい。国内でいち早くDSDSに対応したMoto G4 Plusは、microSDメモリーカードスロットを別に設けており、SIMスロットもmicroSIM×2かつ、nanoSIMカードを装着できる純正のアダプターが付属するなど、ZenFone 3よりも親切だ。
SIM2スロットはmicroSDカードスロットと兼用なので、2枚のSIMカードを挿入するとmicroSDメモリーカードは使えなくなる
ミドルクラスの中では最上級のスペック、カメラ機能は超高速AFが売り
CPUはオクタコアの「Snapdragon 625」(2.0GHz)を搭載する。世界初搭載というクアルコム製のミドルクラスのCPUだ。メモリーは3GB、ストレージは32GB。実際に使ってみても、動作はキビキビしており、アプリの切り替え、カメラの起動ともに高速だ。ヘビーなアプリをガンガン楽しみたいという人は、クアッドコアの「Snapdragon 821」(2.4GHz)と6GBの大容量メモリー、256GBの大容量ストレージを搭載した上位機種「ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)」を選ぶといいだろう。
定番ベンチマークアプリ「AnTuTu Benchmark v6.2.1」の結果。6万台なので、ミドルクラスのスマホとしては悪くないスコアだ
スマホの重要な機能の1つであるカメラ機能は、背面カメラが1600万画素で、F2.0の明るいレンズを搭載しており、高級スマホにも劣らない仕様だ。光学式と電子式の手ブレ補正機構も備える。前面カメラも800万画素と、こちらも高級スマホに負けていない。背面カメラは超高速なオートフォーカスも売りで、レーザーオートフォーカス、像面位相差オートフォーカス、コンティニュアスオートフォーカスの3つを統合した「TriTech(トライテック)オートフォーカス」を搭載する。明るい場所なら、動きのある被写体も素早く正確に捉えてくれる。暗い場所だと、少し時間のかかるときもあったが、オートフォーカスは高速で正確だ。肝心の画質も満足のいくクオリティだった。マニュアル撮影、HDR Pro、超解像度、ローライトなど多彩な撮影モードを備える。4K動画も撮影可能だ。
シャッターチャンスと思い、ロック画面からカメラ機能を起動し、遠ざかる電車を撮影してみた。オートフォーカスが高速で、動きの速い電車もしっかりと撮影できた
ZenFone 3のカメラ機能には、マニュアル撮影や美人エフェクト、超解像度など多彩な撮影モードが用意されている。この写真は単焦点モードを選んで撮影したもの。背景をぼかした写真を簡単に撮影できる
暗い室内で撮影してみたが、目立つようなノイズもなく満足のいくクオリティの写真を撮影できた。真っ暗な場所でも撮影できるローライトというモードも用意されている
多彩な撮影モードを用意。アイコンが写真からイラストに変わっているが、こちらのほうがシンプルでわかりやすい
そのほか、指紋センサーやUSB Type-C(USB 2.0)、ハイレゾ音源への対応など最新のトレンドをしっかりとカバーしている。指紋センサーは背面のカメラの下にあり、読み取りも高速だ。ただ、指紋センサーで認証しても、バイブなどで知らせてくれる機能がなく、ロックがさっと解除されるだけで、ちょっと不親切に感じた。OSは「Android 6.0.1」で、独自の「ZenUI 3.0」を採用する。ゲーム中にメモリーを開放してパフォーマンスをアップしたり、プレイ中の動画を撮影したりできる「Game Genie」という新機能も備えている。
ハイレゾ音源の再生に対応するが、付属するイヤホンは残念ながらハイレゾ非対応
Game Genieは、ゲームプレイ中にアイコンから呼び出せる。ちなみに、人気アプリ「ポケモンGO」も快適に楽しめた。ARを有効にしてモンスターを捕獲することも可能だ
まとめ
海外モデルと比べると安さという魅力は薄れているが、SIMフリースマホの本命なのは間違いない
ZenFone 3は今年6月に海外で発表され、充実したスペックとともに249米ドルからという魅力的な価格で注目されていた。2016年10月19日時点では、Amazon.comにて288米ドルで販売されている。それに対して、国内では価格.com最安価格42,793円と少々高めの価格設定となっている。それでも、今回試してみて人気ランキングで1位を獲得しているだけの実力が備わっていることがよくわかった。洗練された新デザインのボディは持ちやすく、高級感もアップしている。注目のDSDSにも対応しており、格安SIMを上手に活用したいスマホ上級者の要求にもしっかりと応えてくれるはずだ。ミドルクラスのモデルとしては、機能が充実しており、パフォーマンスも高い。
国内メーカー製のSIMフリースマホと比べると、防水・防塵、おサイフケータイへの対応など、機能的に見劣る部分があるものの、スペックはワンランク上で、快適さを重視するならZenFone 3に軍配が上がる。DSDS対応のMoto G4 Plusと比べると、価格は1万円ほど高いが、その分、スペックが充実しており、これから買うなら最新のZenFone 3のほうをおすすめしたい。2枚のSIMカードとmicroSDメモリーカードを同時に利用したいという人は、Moto G4 Plusを選ぼう。ZenFone 3は、すでにSIMフリースマホの本命モデルと言って過言ではないが、年末商戦に向けて、価格が3万円台に下がるようなことがあると、その人気は不動のものになりそうだ。
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