昨年9月のW杯の感動も冷めやらぬ中、先日から日本が再び世界に挑むスーパーラグビーが開幕。さらに8月のリオ五輪では7人制ラグビーが行われ、男女の日本代表チームが出場するとあって、ますます過熱している「ラグビー」人気。今回はそんな「ラグビー」の魅力や見どころを、TOKYO FMの番組の中で専門家や代表選手の方々に教えてもらいました。
(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」3月5日放送より)


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◆「日本ラグビーの特長は我慢強さです」
〜ラグビー日本代表ゼネラルマネージャー 岩渕健輔さん


昨年のW杯イングランド大会が始まるまで、過去7回のW杯で日本代表は1回しか勝ったことがありませんでした。そこで世界で実績を残している指導者で、日本のラグビーをよく知っている人という条件でヘッドコーチに選ばれたのがエディー・ジョーンズです。彼は過去に2回、ヘッドコーチとしてW杯に出場して13勝1敗という成績を残していました。しかも日本でも1996年から指導していた実績があり、トップリーグで優勝しています。

エディー・ジョーンズはW杯で勝つために4年間かけてかなり激しい練習を積み重ねました。合宿は500日以上にわたって行われ、体からしっかり鍛え直し、まるでひとつのクラブチームのように日本代表を強化していったんです。もちろん以前から選手たちは体を鍛えていました。でも世界で勝つためには鍛え方のレベルがかなり違ったんです。そのことを知っているコーチが日本代表には必要でした。

そうやって4年間で見違えるような体つきになった選手たちは、W杯初戦の南ア戦を迎えます。そして試合の最後、キックで確実に同点を狙うか、スクラムで最後の大逆転を狙うかという場面で、ヘッドコーチはキックを指示しました。しかし選手たちはスクラムを選択して、見事に逆転のトライを決めます。これは試合当日の朝、エディ・ジョーンズはキャプテンのリーチマイケルに「最後の判断はお前に任せる」と話したからです。

W杯の後、エディー・ジョーンズは退任し、新しい日本代表のヘッドコーチにジェイミー・ジョセフが就任しました。この人は去年、ニュージーランドのハイランダーズというチームを率いてスーパーラグビーで優勝した世界的な指導者です。しかも現役時代に日本代表としてプレーしたこともあり「福岡の居酒屋で日本語を覚えた」という日本通。監督が代われば戦い方は変わりますが、日本代表の「我慢強い」「激しいタックルを何度でも繰り返せる」という特長を活かしたラグビーは変わらないと思います。

◆「リオ五輪で7人制ラグビー!」
〜スポーツライター 藤島大さん


リオ五輪で行われるのは「セブンズ」こと7人制ラグビーです。7人でもフィールドの大きさは15人制と同じ。ルールも概ね同じです。人数が少ない分スペースがたくさんあって、どんどん走り回って抜きあうスリリングな魅せるスポーツで、試合時間は7分ハーフ。その短い試合時間の試合をどんどんやるのが特徴的です。

リオ五輪の代表候補にも昨年のW杯に出場した選手がいます。山田章仁、藤田慶和、福岡堅樹といった後ろの方で走るタイプの選手がそうですね。山田選手はW杯のサモア戦でクルッと回ってトライを決めたシーンを覚えている方も多いのではないでしょうか。福岡選手はスピードスター。ただ、こういった選手たちでも確実にリオ五輪の代表に選ばれるとは限りません。7人制には7人制のスペシャリストがいますから。

7人制ではバックスの選手がフォワードに回ってスクラムを組むケースもよくあります。だから90kgくらいのフォワードとしては細めの選手が向いているんです。それでも人数が少ない分、フォローしてくれる人がいないのでタックルが強くないといけません。そんなふうにラグビーのすべてが凝縮しているのが7人制です。

7人制の強い国といえばやっぱりニュージーランド。意外なところではアメリカも強くなっています。アメリカは五輪種目になると助成金が出るので、もともとアスリートの多いお国柄もあって強くなっています。アイルズというウイングの選手は100mを10秒1で走る俊足なんですが、陸上では五輪に届かないのでラグビーに挑戦したんだそうです。

桑水流裕策(くわずる・ゆうさく)という選手は日本の7人制ラグビーを牽引してきた功労者です。激しいタックルを繰り返すあまり、耳が揚げ餃子のようになっているので注目してみて下さい。なお、本来ラグビーではパスポートの色(国籍)は関係ないのですが、五輪に関しては五輪のルールでやらなくてはいけないので、日本代表には日本国籍の人から選ばれます。

◆「世界に通用する日本のラグビー」
〜ラグビー選手 大野均さん


W杯の南ア戦、会場に集まった観衆は「南アが何十点差を付けて勝つか」を期待していた雰囲気でした。でも試合が進むにつれてみんな日本の応援をし始めて、最後は日本のホームのような感じになりました。大会が行われたイングランドはラグビー発祥の地。観客の目も肥えているので、目の前で起ころうとしているジャイアントキリングを愉しんでいる感じがすごくありました。

あの試合を勝てたのは4年間にわたってエディー・ジョーンズの下でハードワークしてきたからです。朝5〜6時から眠い目をこすりながらバチバチぶつかりあって、それが1日に3回も繰り返されました。全部終わって部屋に戻るのが夜9時。南アと対戦すると決まった段階から勝つためのプランを立て、この4年間は世界で一番練習したという自信を持って試合に臨みました。

それでも最後の逆転トライが決まった瞬間は「本当に勝っちゃった」というのが正直な感想でした。それまで日本代表はW杯で1勝しかできなかったのですが、今大会だけで3勝、それも世界3位の南アを倒すという結果で「ラグビーは日本人が世界に通用するスポーツ」ということを証明できたと思います。

そして先週から始まったのが「スーパーラグビー」です。これは南ア、ニュージーランド、オーストラリアの南半球3カ国のクラブチームが競い合うリーグ戦で、そこに今年から日本とアルゼンチンが参加します。日本は「サンウルブズ」という日本代表に近いチームなのですが、五郎丸選手はオーストラリアのチーム、リーチ主将はニュージーランドのチームに加わっているので、敵として対戦する機会もあるでしょう。

スーパーラグビーは7月末まで続きますが、シンガポールや南ア、オーストラリアなどを転戦するのでタフなシーズンになりそうです。海外の大きな選手との対戦は、僕がスタンドで観ていても「よくこんなことをやってるな」と思います(笑)。世界最高峰の選手たちに日本の選手たちがどう立ち向かうのか、期待して観てもらえたら嬉しいです。

TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。3月12日(土)の放送のテーマは《イチゴ》。お聴き逃しなく!

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<番組概要>
番組名:「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00〜17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/garage