【漢字トリビア】「空」の成り立ち物語
「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「空」。土を掘って作った穴、室の入り口を描いた象形文字に、ゆるく弓状に曲がった形を示す「工」という字を添え、ドーム状の形を表した漢字です。今回は「空」に込められた物語を紹介します。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/c/e/ce130_1530_073f9cdc9ab1441976f5dc72000efb9c.jpg)
「空」は「穴」という字に「工場」「工具」の「工」と書きます。
「穴」は分厚い土の層を掘って作った室の入り口を描いた象形文字。
その下に添えられた「工」という字は、ゆるく弓状に曲がった形のものを示すことがあります。
そこから、穴の上部が曲がったドーム状の形を表したのが「空」という字。
もとは「穴」そのものを意味していました。
また、穴は中に何もないことから、「あく、あける、から、むなしい」といった意味ももつようになります。
いにしえの人たちの頭上にあるのも、大きな穴。
からっぽの穴からは神々が舞い降り、雲や雷が出てきては消えてゆく。
そこで、いにしえの人たちは、「穴」を意味するこの漢字を、頭上に広がる“そら”としても使うようになったのです。
霞がかった山のかなたから、一日の始まりを告げる光が届く朝。
春の野に、いにしえの人がひとりたたずんでいます。
懐かしい人との幸せな語らいが夢だったことに気づき、涙をこぼしながら空を見上げている娘。
きっと今頃あの人は、神さまのもとへ帰り、空の穴のふちに腰掛けながら私を見下ろしている。
いつしか、泣き濡れた瞳をあたたかな陽射しが乾かしてゆきます。
それは、やさしかったあの人からの贈りもの。
彼女はふたたび、この世を生きてゆくための強さを取り戻すのでした。
ではここで、もう一度「空」という字を感じてみてください。
震災が起こった五年前のあの日。
私たちは、この世にあるすべてがはかないものであるということを、あらためて思い知らされました。
ただ空を見上げ、呆然とするしかなかった日々。
その間、涙も、祈りも、ため息も、空は黙ってうけとめてくれました。
やがて空は、美しい模様を描き出します。
金色の朝焼け、茜色の夕暮れ、笑顔がこぼれる希望の虹。
雲の切れ間から差し込む光は、天地をつなぐ繊細な梯子。
ひとときのやすらぎと新たな力を空から受けとって、私たちはふたたび、決意を新たにします。
もろく、弱く、はかない存在だからこそ、一所懸命に今を生きてゆこう、と。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
3月12日の放送では「菜」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
【あわせて読みたい】
★「ぎゃふん!」は“昭和の死語”じゃなかった!? (2016/3/11) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/yyFxWC755X.html
★大人同士の初デートで「クーポン使用」は、あり? なし?(2016/3/10) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/vintD8WVgi.html
★【漢字トリビア】「修」の成り立ち物語(2016/3/4) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/mjsfq66KS5.html
<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/c/e/ce130_1530_073f9cdc9ab1441976f5dc72000efb9c.jpg)
「空」は「穴」という字に「工場」「工具」の「工」と書きます。
その下に添えられた「工」という字は、ゆるく弓状に曲がった形のものを示すことがあります。
そこから、穴の上部が曲がったドーム状の形を表したのが「空」という字。
もとは「穴」そのものを意味していました。
また、穴は中に何もないことから、「あく、あける、から、むなしい」といった意味ももつようになります。
いにしえの人たちの頭上にあるのも、大きな穴。
からっぽの穴からは神々が舞い降り、雲や雷が出てきては消えてゆく。
そこで、いにしえの人たちは、「穴」を意味するこの漢字を、頭上に広がる“そら”としても使うようになったのです。
霞がかった山のかなたから、一日の始まりを告げる光が届く朝。
春の野に、いにしえの人がひとりたたずんでいます。
懐かしい人との幸せな語らいが夢だったことに気づき、涙をこぼしながら空を見上げている娘。
きっと今頃あの人は、神さまのもとへ帰り、空の穴のふちに腰掛けながら私を見下ろしている。
いつしか、泣き濡れた瞳をあたたかな陽射しが乾かしてゆきます。
それは、やさしかったあの人からの贈りもの。
彼女はふたたび、この世を生きてゆくための強さを取り戻すのでした。
ではここで、もう一度「空」という字を感じてみてください。
震災が起こった五年前のあの日。
私たちは、この世にあるすべてがはかないものであるということを、あらためて思い知らされました。
ただ空を見上げ、呆然とするしかなかった日々。
その間、涙も、祈りも、ため息も、空は黙ってうけとめてくれました。
やがて空は、美しい模様を描き出します。
金色の朝焼け、茜色の夕暮れ、笑顔がこぼれる希望の虹。
雲の切れ間から差し込む光は、天地をつなぐ繊細な梯子。
ひとときのやすらぎと新たな力を空から受けとって、私たちはふたたび、決意を新たにします。
もろく、弱く、はかない存在だからこそ、一所懸命に今を生きてゆこう、と。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
3月12日の放送では「菜」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
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★「ぎゃふん!」は“昭和の死語”じゃなかった!? (2016/3/11) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/yyFxWC755X.html
★大人同士の初デートで「クーポン使用」は、あり? なし?(2016/3/10) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/vintD8WVgi.html
★【漢字トリビア】「修」の成り立ち物語(2016/3/4) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/mjsfq66KS5.html
<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/