ワイドショーなどで毎日のように取り上げられる有名人の熱愛や破局のニュース。誰だって長く生きていれば、好きな人に振られたり、または振ったりすることはありますよね。でも、この「振る」という言葉。いつから使われているのでしょうか。今回のお話の舞台は、江戸時代の遊郭・吉原です。


※写真はイメージです



江戸の町を華やかに彩っていた、女性たち。
吉原などの遊郭では遊女が、妖艶な美しさで男性を虜にしていました。
高いお金を払って手に入れる、一晩の恋。
ですが、このお金、かなりの確率で「払い損」だったのです。

高級遊女と夜を共にするには、お座敷遊びに何度も通い、気にいられる必要があります。
ここで必要なお金は、お座敷台、別途の飲食代、そしてスタッフなど関係者へのチップ代。
こうしたお金を何度も払い、ようやく遊女がその気になってくれます。

ですが、ここがゴールというわけではありません。
男性がウキウキとお布団で待っていても、遊女が部屋に現れないこともあるのです。
気分が乗りきらなかったら、遊女には断る権利があったのですね。
そして男性も、怒ることもできずスゴスゴと退散……。
またお座敷から、遊女のご機嫌をとるしかありません。

一番つらいパターンは、遊女がお布団の部屋までやってきたのに、いろいろと言い訳をしてきて何もできない場合。
こんなとき遊女は「持病の癪(しゃく)が……」というお決まりの言い訳をしたそう。
「癪」とは、いってみれば「腹痛」。
お腹が痛くて相手ができない……なんだか子どものような言い訳です。

こうして遊女がお客にお金を支払わせても、何もさせないことを「振る」と表現しました。
「恋人を振る、振られる」という言葉はここからです。
お客に文句を言う権利は基本的にありませんが、あまりに振ってばかりいては、その遊女にはお客が付かなくなるので、遊女側も駆け引きが難しいところだったでしょうね。

もし、デートにしつこく迫られて困っていたら。
遊女風に「持病の癪が……」と言って断ってみるのは、いかがでしょう。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「遊女がお客を振る時の決まり文句は?」として、3月9日に放送しました。

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<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
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