野際陽子演じる月影先生の再現率に衝撃! TVドラマ版『ガラスの仮面』

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高島屋各店舗で開催されたバレンタインに合わせたショコライベントが、漫画『ガラスの仮面』とのコラボ、描き下ろし漫画や作者の美内すずえによるトークショーなども行われたことが話題になった。

1976年に『花とゆめ』でスタートした連載は、少女漫画界でも最長の部類で、単行本は現在49巻まで刊行、累計発行部数は5000万部を超える(現在は連載休止中)。
平凡な少女・北島マヤが、かつての大女優、月影千草に才能を見出され、ライバル・姫川亜弓と競い合いながら、かつて月影が演じた伝説の作品「紅天女」の座を目指していく。そのストーリ-もさることながら、登場人物のキャラが、それぞれものすごく濃い。さらに印象的なセリフや場面も多い。

安達祐実が主演を務めたドラマ『ガラスの仮面』


そんな『ガラかめ』がドラマ化されたのは1997年7月のこと。『南くんの恋人』(94年)、『イグアナの娘』(96年)、『イタズラなKiss』(97年)など、少女漫画系原作ドラマのヒット作が多い、月曜20時テレ朝系の枠での放送だった。

主人公の北島マヤを演じたのは安達祐実。当時15歳、「天才少女」のマヤを演じるには、天才子役・安達祐実はピッタリといっていいだろう。ライバルの姫川亜弓役が松本恵(現・松本莉緒)で、「紫のバラの人」こと速水真澄は田辺誠一が演じた。翌年には続編も放送されている。

しかし、安達祐実以上にピッタリすぎるほどピッタリだったのが、野際陽子が演じた、マヤの師匠で劇団つきかげ主宰・月影千草ではないだろうか。
現在まで数多くのマンガ原作ドラマが誕生してきたが、このドラマ版『ガラかめ』の野際・月影先生を超えるものは、いまだに見ていない気がする。
月影先生といえばまず、その見た目が大きくキャラ立ちしている。顔の半分近くを覆い隠す、ウェーブのつよいロングヘアが最大の特徴(かつての女優時代の大けがの跡を隠すためでもある)。そして全身黒ずくめの出で立ち。そういった見た目的な面では、月影千草は、「寄せやすい」キャラといえるのかもしれない。

マツコ・デラックスも過去に月影千草に変身


出版元の白泉社が、『ガラスの仮面』新刊のCMのため、2010年にマツコ・デラックスが月影先生に変身したり(オアシズの二人がマヤと亜弓)、2012年には劇団ひとりが同企画で主要キャラをひとりで演じたり、近年は「コスプレ」的面白さもふまえた楽しみ方も見せてくれる。

舞台では、1979年に香坂みゆき主演で上演されて以来、大竹しのぶや貫地谷しほりなどを主演とし、何度も上演されている。最新の貫地谷版で月影先生役を演じたのは一路真輝(9月に再演予定)。
しかし、やはりどの月影先生も、野際月影のインパクトにはかなわないような気がする。

野際陽子が月影千草役にハマった理由


なぜこんなにハマッたのだろうか。それはもちろん野際の女優としての存在感が大前提としてあるが、月影千草というキャラクターは、ものすごく厳しくある中、本質的な優しさを秘めた女性であるというところ。そこがまた、『ずっとあなたが好きだった』での冬彦さんのお母さん役などを経て、ノリにノッているタイミングだった時期の、そのオーラ。それが、伝説の女優・月影千草にしか見えなかったのではないだろうか。

月影先生はよく、マヤの演技のすごさに、「おそろしい子……」と、戦慄をおぼえていることがある。もちろんドラマでもその決めゼリフはあった。だが、こんなにもすごい月影先生を見せられるこっちからしたら、「アンタだよ!」と言いたくなっちゃうかもしれないが。
憑依型の演技をするマヤではないが、月影先生が野際陽子に憑依してたんじゃないだろうか。

ドラマ版2作で描かれたのは、「狼少女ジェーン」の上演のあたりまで。1999年には、スペシャルドラマとして「完結編」が放送され、「紅天女」に関してなど、ドラマ版の決着をつけている。
ちなみに1作目の放送当時発売されていた原作コミックスは40巻まで。その後何度も連載は中断と再開を繰り返し、2016年2月の時点での最新巻は49巻。20年のあいだ、9巻しか発売されていない。

まだまだ最終的にどう決着するのか、予測もできないところだが、なんというか、そこもまた、「おそろしい子……」と言いたくなる作品だ。
原作完結の暁には、ぜひ安達×野際×松本で、もう一度見たい気もするが、さすがに無理があるか……。
(太田サトル)

ガラスの仮面(1)〈完全版〉 [VHS]