厚みのある攻撃で本田の追加点が生まれた。スピーディなボール回しからパス&ゴーを繰り返して、全員の連動性とイメージが上手く噛み合っていたよ。写真:徳原隆元

写真拡大 (全3枚)

 
 シンガポール戦の日本は、1試合を通じて波があったね。序盤は点を取ろうとして少し焦りが見られたし、先制点を取るまで手をこまねく時間も続いた。埼玉で対戦した時よりシンガポールが前に出てくれたことで助かった面もあったね。
 
 相手としても地元で負けられないし、ここで勝てば予選突破の可能性も膨らむだけに、相当の気合いが入っていたのだろう。ただ、先制点を取ってから日本がリズムを掴んで、上手く流れに乗れたように思う。
 
 評価したいのは2点目。スピーディなボール回しからパス&ゴーを繰り返して、厚みのある攻撃で本田の追加点が生まれた。相手が引いて、マークも緩かっただけに、比較的簡単に崩せたとはいえ、それでも全員の連動性とイメージが上手く噛み合っていたよ。
 
 展開自体は危なげなかったけど、反省すべきは後半の出来だ。2点リードした安心感に加え、運動量が一気に落ちて、ほとんど日本らしい形を作れなかった。“流す時間”がちょっと長かったね。
 
 とりわけ本田は明らかに足が止まっていたし、ミランでコンスタントにプレーできていない影響がプレーに現われていた。90分を通じた試合勘の鈍りもあるのかもしれないね。
 
 結局、後半はラッキーな形で吉田の3点目が生まれたけど、それ以外でも得点チャンスはあった。つまり、課題は決定力。前回のシンガポール戦は0-0と引き分けたけど、その時と課題自体は同じということだ。
 
 それから気になったのは、両サイドの攻撃だ。両SBが上手く絡めない場面も多かったし、そもそもSBにピンポイントのボールも上手く入らなかった。引いた相手に苦戦する理由のひとつがここにある。
 
 
 ハリルホジッチ体制で初先発の金崎が、起用に応えてゴールを決めたのは喜ばしいことだ。とはいえ、相手との実力差を考えると、1ゴールだけで評価できないというのが正直なところ。
 
 このレベルであれば、あと1点や2点は取ってもおかしくなかったし、それぐらいの活躍を見せてはじめて「ハリル体制で文句なしのデビュー」と言える。
 
 別に金崎のゴールにケチを付けたいわけではなくて、今後の厳しい戦いや強豪国との対戦を考えると、2次予選ではそれぐらい高いレベルを求めたいということ。
 
 それに、観る者全員に強烈なインパクトを与えるぐらいの活躍をしなければ、岡崎から定位置を奪うのは難しいと思うよ。そういう意味で、金崎の“現体制で初先発・初得点”というのは、それほど騒ぐことではないね。
 
 メンバー構成が変わって3-0と快勝し、一見すると新布陣が機能したように思えてしまう。もちろん、そういう側面もあるけれど、相手の圧力は驚くほど弱かったのも事実だ。
 
 長谷部と柏木も終始フリーで、自由にプレーしていた。今日のように相手の圧力が弱いと、正直ボランチは誰がプレーしても、ある程度の見栄えになったと思うよ。
 
 おそらく大勢のJリーガーがこの試合を観ていたはずだけど、「あれだけフリーなら、自分でもまずまずやれるな」と思った人もいたんじゃないかな。
 
 11日に天皇杯4回戦、浦和対町田の試合を観た。J1の浦和がJ3の町田に勝利したからといって、浦和の選手を必要以上に持ち上げたりしないでしょ。周りも「まぁ当然だよね」となるんじゃないかな。今回の試合もそれと似たような話だよ。
 
 
 2次予選の初戦で苦戦して、ワアワアと騒ぎ立てていたけれど、本来は勝って当たり前。日本が目指しているのは、2次予選の相手にどうこうではなく、強豪国をいかに倒すか。
 
 今日もそうだったけど、相手が格下のために、攻守が上手く機能しているように見えてしまう。実際に強敵と対峙した時にどこまでやれるかと言えば、まったくの未知数。金崎や柏木ら新顔にしても、本当の意味で“戦力”になるか、それはまだ分からないよ。