東福岡vs福岡第一
雨が続いていた福岡県だが、この日は快晴。座っているだけでも汗が出てくるような暑さである。春日公園野球場の第1試合は東福岡vs福岡第一と福岡を代表する名門同士の対決ということもあり、スタンドは満員であった。
東福岡は1番日高 佐輔(3年)がいきなり中越え二塁打を放つと、そのあと、福岡第一のミスもあり先制する。 東福岡の先発・福島 滉貴(3年)は、常時135キロ〜140キロ(最速140キロ)の速球を武器に、スライダー、カーブ、フォークを投げ分ける本格派右腕。速球はスピンがかかって、手元でも失速しない素晴らしいストレートで、さらに調子をあげていけば、140キロ前半も記録するような勢いがあった。変化球はどの球種も、しっかりと腕を振って、さらに鋭角に曲がるので、かなり打ち難い。投球フォームも、ワインドアップから始動し、左足を高々と上げるフォームから、バランス良く足を上げていき、振り下ろすフォーム。縦の角度をうまく使ったフォームで、172センチ72キロと投手として大きくないが、技術的にしっかりした投手である。
福島は初回から走者を出すことはあっても、粘り強く投球ができるのがこの投手の持ち味。相手のペースにさせず、自分の間合いで投球ができる好投手である。完成度の高さがあり、全国レベルの好投手であった。この福島の好投を導いたのが、正捕手・河野 真哉(3年)だ。NPBのスカウトから注目を集める存在だが、1回裏に自慢の強肩を見せる。一死一塁の場面で一塁走者がスタート。あっという間に二塁ベースに到達する矢のような送球でアウトにした。
河野はイニング間の送球では本気を見せないが、ここぞという場面では素晴らしいスローイングを見せる。初回でアウトにしたことで、福岡第一は出塁をしても、全く走らなくなかった。これが強肩捕手の特権といえるだろう。しいていえば、イニング間の本気の送球を見てみたかった。リード面では速球、変化球を効果的に使分けたり、イニングの合間にマウンドへ駆け寄ってと、配慮する気持ちが見られた。
打撃は1打数0安打2四球1死球とかなり警戒された感じであった。打撃を見るとこの日は体にキレを欠いていたのか、スイングが速くなく、福岡第一のエース・下川龍弥の130キロ台の直球を捉えきれず、ファールになる姿があった。一撃必殺で、コンタクトできていればもっと良い印象を残すことができただろう。
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その福島を援護しようと、さらに4回表、一死一、三塁から1番日高の犠飛で2点目を入れる。日高は非常にバランスが取れた遊撃手で、打撃はインパクトまで無駄のないスイングができており、守備もフットワークが軽快で堅実な守備を見せる。大きな存在である。
だが福岡第一の下川 龍志(3年)から追加点を奪うことができない。下川は、最速は135キロで、ほとんどが130キロ前半だが、コントロールが実に良い。スライダー、カーブを両サイドに散らせながら、ストレートを速く見せる投球が実に上手い。そして変化球も外角にギリギリにきっちりとコントロールができており、強力な東福岡打線に対し、しっかりと自分の投球ができていた。8回2失点で降板した下川だが、実に見応えある投球であった。
2番手として登板したのは、最速143キロを誇る大型左腕・平塚 貴伎(3年)。ワインドアップから始動し、右腕のグラブを高く掲げて、振り下ろすが、この日は調子があまりよくなく、腕の振りの鋭さがやや欠けた。これは下半身主導の動きができず、うまく体を旋回できない影響だろう。
球速も120キロ後半〜130キロ前半の速球にとどまり、カーブ、スライダーを投げ分ける投手。まだ細かな制球力がなく、ベルト付近に集まるボールも多い。
2番野原 健(3年)の適時打が飛び出し、3対0と東福岡がリードを広げると、先発の福島は終盤になっても球威を衰えず、139キロをマーク。二者連続三振を奪い、最後は中飛で完封勝利を挙げた。なんとこれが公式戦初完封であった。投打ともにバランスの良い野球を展開。優勝を目指す東福岡にとっては次の試合へ向けて弾みがつく試合となった。
(文=河嶋 宗一)
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