野球界を引っ張る遅れてきた88年世代の選手たち
今のプロ野球界の中心にいるのは間違いなく1988年世代(以下88世代)だろう。その88世代といえば、田中 将大(インタビュー)、前田 健太(インタビュー【前編】【後編】)、坂本 勇人(インタビュー)などが世代の中心選手としてここ数年君臨してきた。彼らは高校時代に甲子園に出場し、プロ野球の世界へと羽ばたいた、いわゆる世代を引っ張る先頭グループだ。
一方で、先頭グループに遅れること数年。高校時代は無名でも、大学・社会人・独立リーグを経由してプロ野球の世界に入った第二グループの選手たち。今シーズンは彼らの活躍が光っている。先頭グループに追いつき、そして凌駕するほどの活躍を見せる88世代の選手たちの躍動を紹介したい。
柳田 悠岐選手(福岡ソフトバンクホークス)
「日本で一番飛ばす」という言葉が似合うプロ野球界きっての大型外野手。
地元の広島商(県予選準決勝敗退)から広島経済大学に進学。大学進学の際は中央大学のセレクションも受けたが不合格となっている。
高校では目立った成績が残せなかったが、引退後ウエイトトレーニングで肉体改造。入学した広島経済大学では才能が開花する。1年の秋から試合出場の機会を得ると、4年間では同リーグで最優秀選手賞、首位打者、ベストナインを受賞。大学通算82試合で打率.428、本塁打8、打点60という文句なしの好成績を残し、2010年ドラフト2位でソフトバンクホークスに入団。
アスリートとしての素材と将来性を期待された柳田は、毎年キャリアを着実に積み上げていき、2014年にブレイク。打率.317、本塁打15本、盗塁33とその才能の片鱗を見せると、今シーズンは更にジャンプアップ。打率.378、本塁打17本、盗塁15(7月8日現在)と日本を代表する外野手に成長した。
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【秋山 翔吾】(横浜創学館―八戸大学―埼玉西武ライオンズ)球界きっての安打製造機である秋山 翔吾。
高校は神奈川の名門・横浜創学館に進学。育成に定評がある同校で1年生から試合出場を果たすが3年間、甲子園には縁がなかった。大学は北東北大学野球連盟の八戸学院大学に進学。1年生から勝負強い打撃を発揮し4年春には優秀選手賞、首位打者、最多打点、ベストナインと4冠に輝く。
2010年ドラフト3位で埼玉西武ライオンズに入団すると、ルーキーイヤーに開幕スタメンで出場するなど、レギュラーに定着。2013年にはゴールデングラブ賞を受賞するなどキャリアを積んできた。
今シーズンは打撃面で格段の進化を見せ、7月8日現在28試合連続安打(パ・リーグ史上5位タイ・球団新記録)を記録し、打率は.378と、同じ88世代の柳田と首位打者争いをしている。元々、俊足・強肩のアスリート型の外野手だけに、打撃がブレイクしている今シーズンは球界を代表する外野手に名乗りをあげた。
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[page_break:亀澤 恭平 / 澤村 拓一 / 大野 雄大]【亀澤 恭平】(作陽―環太平洋大学―香川オリーブガイナーズー福岡ソフトバンクホークスー中日ドラゴンズ)亀澤 恭平内野手(中日ドラゴンズ)(写真提供:香川オリーブガイナーズ)
高校(県予選3回戦敗退)、大学は地元に進学したもののプロ注目として候補には上がらず。大学卒業後、入団した香川オリーブガイナーズでソフトバンク関係者の目に留まり、2011年育成ドラフト2位で福岡ソフトバンクホークスに入団。
しかし、規則である3年経って支配下登録になることができなかったことから自由契約に。ソフトバンクが新たに育成契約を結ぼうとしていた矢先に、中日ドラゴンズから支配下登録して契約することを視野に入れたオファーもあったことから、秋季キャンプにテスト生として参加し、見事支配下登録して契約された。
2014年まで一軍経験はないものの、オープン戦で結果を出し開幕一軍の切符を掴むと、一気にブレイク。長年、ドラゴンズの二遊間を担ってきた荒木から二塁手の地位を確かなものにしつつある。
【澤村 拓一】(佐野日大―中央大学―読売ジャイアンツ)高校時代は3番手投手として登板のないまま県大会決勝で敗退。大学進学後、徹底したウエイトトレーニングからMAX157キロの本格派投手に成長。中央大学では高橋 善正監督との出会いが投手として成長をさせてくれたという。大学野球日本代表にも当然のように選出され、日の丸を背負って戦った。
2010年にドラフト1位でジャイアンツに入団。ルーキーイヤー・2年目と二桁勝利をあげ、2013年にはWBC日本代表にも選出されたが、ここ2年は先発としてなかなか成果をあげることができなかった。そして2015年シーズンからは抑えに転向。ジャイアンツの守護神として7月8日現在、33試合に登板し19Sを上げるなど、再びブレイクしている。
【大野 雄大】(京都外大西―佛教大学―中日ドラゴンズ)左腕から繰り出される151キロのストレートと低めに決まる変化球が武器のドラゴンズのエース。京都外大西では2年の春からベンチ入りし、2005年夏に甲子園準優勝を経験。3年春には選抜大会に出場。東海大相模戦で敗れるも先発で登板した。佛教大学に進学すると、1年生の時からリーグ戦に登板。京滋大学リーグ18勝1敗という好成績を残す。2010年ドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。3年目の2013年に二桁勝利をあげると、翌2014年も2年連続の二桁勝利。今シーズンは更に安定感を増し、9勝3敗(完投4)防御率2.05(7月8日現在)と名実ともにエースの働きを見せている。
早稲田実業vs駒大苫小牧の延長15回引き分け再試合の決勝戦で世間の注目を集めた第88回全国高等学校野球選手権大会から9年。高校時代、決して世代のトップランナーではなかった選手たちが、今シーズン大きな活躍を見せ、球界を席捲中だ。様々なキャリアを経てプロの世界に入り、今年で27歳となる88世代。これからプレイヤーとしてまさに脂が乗ってくる年齢になってくる。今後も彼らのパフォーマンスから目が離せない。
最後に1988世代を代表する投手・田中 将大(ニューヨーク・ヤンキース)の今シーズンを見てみたい。4勝3敗防御率3.94(7月6日現在)。今シーズンも一度DL入りするなど、まだ本来の調子とは程遠いが、それでも随所に良いピッチングを見せている。残りのシーズン、しっかりと巻き返しをしてくれるだろう。
やはり88世代を語る上で田中の存在は必要不可欠。今後も世代を引っ張るトッププレイヤーとして活躍を期待したい。
【まだまだ、いるぞ!88年世代のプレイヤーたち】
・大石 達也(福岡大大濠-早稲田大学-埼玉西武ライオンズ)・堂上 直倫(愛工大名電-中日ドラゴンズ)・大嶺 祐太(八重山商工-千葉ロッテマリーンズ)・吉川 光夫(広陵-北海道日本ハムファイターズ)・福田 永将(横浜-中日ドラゴンズ)・伊志嶺 翔大(沖縄尚学-東海大学-千葉ロッテマリーンズ)・上田 剛史(関西-東京ヤクルトスワローズ)・阿部 俊人(花咲徳栄-東北福祉大学-東北楽天ゴールデンイーグルス)
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