効果的な水分補給と試合前の準備

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 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 暑い夏の時期が近づいてきました。選手の皆さん、夏の大会に向けての体調は万全ですか?この時期に体調を崩してしまうと、せっかくの今までの練習やトレーニングの成果が発揮できないまま、終わってしまうことにもなりかねません。まずはベストコンディションで試合に臨めるように準備をしていきたいものですね。

 ここでコンディションを整えるために、とても重要になってくるのが水分補給です。チームや個人で水分補給を行っていると思いますが、効果的な水分補給について改めて確認してみましょう。

ケース別・水分補給の仕方

「水分補給をしよう」とわかってはいるものの、では具体的にどのタイミングで、何を、どのくらいとればいいのか、というのは難しいところです。水分を大量に飲みすぎるとお腹が重くなり、プレーに支障が出るだけではなく、血液中の電解質バランスが崩れて(塩分不足)、筋肉のけいれんなどを引き起こすことがあります。逆に水分が不足すると脱水症状を起こし、頭痛や疲労感、筋肉のけいれん、熱中症の症状を起こすこともあります。

 こうしたことを防ぐためにも、適切なタイミングで適切な量の水分補給を行いたいものです。運動前、運動中、運動後という3つのタイミングについて見てみましょう。

水が飲みたいと感じる前にこまめに水分補給を

<運動前>「水が飲みたい」と思ったときにはすでに体内では脱水症状が始まっていると言われますので、運動前にあらかじめ水分補給をしておきましょう。運動する30分前〜直前に250ml〜500ml程度を数回に分けてとるようにします。汗をかいた分を補うつもりで、あらかじめ水分量を確保しましょう。

<運動中>気温や練習強度によっても変わりますが、一口程度に含む〜200ml程度の水分を練習の合間にとるようにしましょう。30分に1回は水分をとれるとベストです。練習時間が長くなったり、遠征や環境などが変わってなかなかタイミングが取れないときは、チームで強制的に「ウォーターブレイク」をとって水分補給をするようにしたいものです。

<運動後>体重減少分を補える量を数回にわけてとるようにしましょう。また練習後に食事をとることになると思いますので、一度にたくさん飲んで、食事に影響が出ないように注意しましょう。疲労回復のためにオレンジジュースやグレープフルーツジュースなどクエン酸(酸っぱい成分)入りの飲み物をとることもオススメです。

[page_break:水分補給は何がいいのか / 暑い日の試合前に行いたい準備]水分補給は何がいいのか

 水分補給は水だけを大量に取りすぎるとコンディション不良を引き起こすことがわかっています。汗は塩分を含みますので、流れ出た不足分を補う程度に塩分を含んだ飲み物をとることが理想的です。スポーツドリンクはこうした塩分を補う目的で作られていますので、効率よく水分補給ができると思います。

 一方で飲みやすさを追求するため糖分が多く含まれており、過剰摂取は「ペットボトル症候群」とよばれる急性糖尿病のリスクが高まります。お茶についても利尿作用のあるものはトイレが近くなってしまうというデメリットがあります。麦茶やほうじ茶などはカフェインを含まないため、水分補給に適した飲み物といえるでしょう。

 また気をつけたいのが飲み物の温度です。夏の暑い時期、冷たい飲み物を飲みたくなる気持ちは理解できますが、あまりにも冷たすぎると胃腸に負担をかけてしまい、体の疲労を助長することになってしまいます。常温、もしくは糖分を含むものについては8〜13℃程度に冷やしたもの(少し冷たいかなと感じる程度)を準備するようにしましょう。

暑い日の試合前に行いたい準備

熱中症は気温が低くても起こることがある

 夏の大会はほとんどが日中に行われるため、あらかじめ天気予報などで当日の最高気温などを確認しておく必要があります。ただし熱中症は気温が高くても低くても、起こることがありますので、熱中症対策は必ず行いましょう。可能であれば試合前に体重を測定しておき、試合後に汗で失われた水分を補えるようにするといいですね。また直前の準備としては、冷たいおしぼりを準備しておき、試合中に頭や首元、脇の下などを冷やすようにすると、体温を下げる効果が期待できます。

 夏は暑さとの勝負でもあります。睡眠不足や疲労の蓄積は熱中症を起こしやすくなるため、試合前日の過ごし方も大切になってきます。胃腸に大きな負担をかけないように生ものや油ものは避け、十分に睡眠を取るようにしましょう。集中力を高めるためにも体のコンディションを整えるのは、必要不可欠です。試合当日が勝負ではなく、その前から試合は始まっていると心得ておきましょう。

【効果的な水分補給と試合前の準備】・運動前から水分補給を行おう・練習時間が長くなるときはチームで「ウォーターブレイク」を導入しよう・クエン酸を含む飲み物は練習後の疲労回復にオススメ・冷たすぎる飲み物は胃腸に負担がかかるため、ややぬるめの温度のものをとる・冷たいおしぼりで首や脇のところを冷やすと体温を下げる効果がある・試合前から試合は始まっていると心得る

(文=西村 典子)

次回コラム公開は7月15日を予定しております。