「最近のサポーターは……」などと言うつもりは毛頭ないが、空席が目立つ埼玉スタジアムでは、以前のような殺伐とした独特の雰囲気が薄れている感じがする。スタジアムをデコレーションするコレオグラフィーだって、今の観客動員では表現することも限られてしまうだろう。

「自由席に自由がない。それが試合に行かなくなった理由です」

 聞けば、自由席にいっても座席を確保するのは難しいというのだ。記者席の住民となってしばらく経つ僕は、最初は何のことを言っているか分からなかった。今でもスタジアムに通い続ける家族に訊ねると、何席もまとまって空いている席に行けば、荷物が置かれていたり、ロープが張られていて、家族何人かで座るところを見つけけるのはなかなか大変なのだという。家族は埼玉スタジアムの南側(ビジターチームのサポーター席に使いサイド)で観戦していて、こういう状態だという。ならばと思い、≪北の住人≫に聞けば、「前日抽選とかがあって、既得権があるから、結局はいつも同じところです」とのこと。≪前日抽選≫とは北門のゴール裏なら「前日6:30に抽選して解散。当日はキックオフ4時間前に集合して並ぶ」というルールのことだという(北門のバックスタンドも同様のルールがある)。

 クラブはサポーターと一緒にルールを作ってきたと言うが、結果的にそれが既得権を生み、新しいファン開拓の妨げになっている可能性があることには気が付いていない。あるいは気が付いていても、気がつかいないふりをしているのではないだろうか?

 浦和レッズの観客動員の原因は、サポーターの応援が一番の問題ではないことは百も承知である。ドキドキ・ハラハラする試合が少なくなったり、スタジアムが遠かったり、仕事が忙しかったり、子供の世話に追われたり、スタジアムに行かなくなった理由、行けなくなった理由は人それぞれだ。ただ、また行きたい、戻ってきたいスタジアムであってほしいと誰もが願っているに違いない。

 僕は長い間、いつもゴール裏には自由があり、それがサッカーファン最高の表現の場だと思ってきた。だが、こうした固定観念こそが、新しいファンをスタジアムに招く障害になっているのではないかと最近感じるようになっている。だからこそ、こうした≪サッカーファン≫の悲喜こもごも入り混じった思いは、もっともっと掘り下げながら、じっくりと論じていく必要があるだろう。

 一度離れた観客を呼び戻す努力をし、新しいサッカーファンを獲得しなければ、Jリーグには未来がない。かつて荒んでいたスタジアムを見違えるほど復活させたイングランドやドイツを良い見本にするのもひとつの手ではないだろうか?