[Issei Kato / Reuters]

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 ホーム開幕戦の柏レイソル戦41,609人、4節川崎フロンターレ戦25,743人、6節ヴィッセル神戸戦25,894人、ヤマザキナビスコカップ1節ベガルタ仙台戦23,076人、3節セレッソ大阪戦16,533人。これが今シーズンの浦和レッズホームゲームの観客動員数だ。リーグ戦の観客動員の平均が31,082人。ヤマザキナビスコカップの観客動員の平均が19,804人(小数点以下切り捨て)と、人気チームといわれている浦和レッズだが、今年の観客動員はここまでふるっていない。

 リーグ戦は開催日がすべて雨で、ヤマザキナビスコカップは1試合が水曜日のナイトゲームだったということも理由のひとつだが、他にも理由はあるはずだ。もっとも、どんな理由があろうとも、空席の目立つ埼玉スタジアムは浦和レッズには似合わない。

「弱いから応援しない」

 こんな言葉をレッズサポーターから聞きたくない。どんなに弱くても、そのチームを支え続けたサポーターがいたからこそ、浦和レッズは今の人気を確立できたのだから。それでも観客離れは確実に進んでいる。

「どんなシーンでも同じ応援歌が続いて単調だとしらけてしまう」

「ずっと続く同じ歌は、お経みたいで眠たくなる」

「コールがワンパターン&試合の流れに沿ったものでないので、でうるさいだけで面白くない(一体感がない)」

 スタジアムの応援がつまらないという人も、意外にも多かったりする。自然発生的なイングランドスタイルの応援を、日本で見かけることはほとんどない。Jリーグには、どのチームにも≪コールリーダー≫と呼ばれる、応援をリードとグループが存在する。ピッチに立つ選手をコントロールするのは監督だが、スタンドの応援は「コールリーダー」と周辺グループが中心になって繰り広げている。

 監督が代わればサッカースタイルががらりと変わったりするのもサッカーの特徴のひとつだが、同じことはスタンドに陣取る「コールリーダー」にも見ることができる。監督交代はめまぐるしいけれど、コール―リーダーの交代は数年に一度あるかないか。あるクラブのコールリーダーは、創設時から変わっていないケースもある。逆にコールリーダーが代わっていくことでグループとしての力を蓄え、独自のスタイルを見出し始めたクラブも、近年はいくつか見受けられる。

 良いか、悪いかは別にして、ピッチと同様にスタンドにも代謝が必要ではないだろうか? 必ずしも応援をリードするリーダーの考えが正しいことばかりではない。のべつまくなし、単調に聞こえる応援は、それが許される環境がスタジアムにあるとも言えるはずだ。つまらない応援なら、口をつぼみ、微動だにしないということも、実は大切な意思表示だったりする。
 
 浦和レッズのゴール裏の場合、その殺伐として緊張感のあるスタンドの独特の雰囲気は、危うさもあるけれど魅力的である。僕自身がかつてそこに身を置いていたからこそ、知っている、そこに行かなければ知ることができない、言葉では説明できない空気が充満している。ハンドマイクから響くその声の力だけで、多くのサポーターを動かしてしまうコールリーダーはカリスマであり、シンボルとして大きなオーラを放っている。

 いつの時代も少年たちはこの応援の爆心地を目指す。彼らはそこで青年となり、今では父親となりスタジアムの方々に散っていっている。ここまでは現在進行形でみることが出来る。だだ20年の歴史しかないJリーグではこの先のストーリーはまだ見ることができない。それは、かつて爆心地で声を枯らしスタジアム全体を鼓舞した伝説のサポーターたちが、老いて杖を突いてもスタンドのどこかに陣取り、かつての爆心地に目を配らせながらピッチに踊る選手たちを見守るような環境はまだないということだ。