しつこいまでにナベツネ批判を繰り広げる、清武氏。敢然と権力に立ち向かう構図を作ったことで、一部からは英雄視され、かつての著書2冊にも注文が殺到しているというのだ。しかし、その内容はどちらも「ご都合主義」で笑えてしまうのである。



 清武氏が初の著書「巨人軍は非情か」(新潮社)を上梓したのは、08年のこと。当時を回顧して、巨人番記者が口を開いた。

「清武氏が報道陣を相手に、『これ読んで勉強しろ』と言ってきたんです。取材対象者ですから、資料として買って読みましたが、目に入るところに本が置いてあると腹が立つので、読み終わったらゴミ箱に捨てましたね」

 先週号でも触れたが、清武氏は都合の悪いことを書かれれば報道陣に「出入り禁止」を乱発してきた。「独裁」に眉をひそめてきた番記者であれば、こんな反応をするのも当然か。

 一方、清武氏は読売新聞の社会部記者時代、国税庁を担当していた。同著では、当時の話として、ネタをつかんでも当局と話し合って記事にする時期を決める慣習があり、そのシステムに立ち向かったと書かれている。

〈当局のコントロールに従うなら、それは御用記者への道を歩くということである。(中略)偉そうなことを書き、裏で「まあ、いいじゃないか」と談合を求める年長の記者らが許せなかった〉

 ん? 取材される側に回ったら、立場を異にしたということなのだろうか。

 確かに、直後には〈私はまだ若かったのだ〉との変節をうかがわせる記述もあったが、球界関係者は言う。

「出禁を乱発する裏で、清武氏の言うことを聞くスポーツ紙にはスクープがよく出ましたよね。代表時代にやってきたことは、それこそ『談合』でしょう」

 強権を発動し、飴とムチで記者を統制。かつて抱いていた理念とは180度違うではないか。

 同著には、こんな一文もあった。

〈あらゆる組織のなかに、部下の手柄を横取りしたり、踏みつけたりする上司がいる〉

 一見、清武氏が渡辺会長に対してブチまけている怒りを表しているようだが、自身が原監督に対してやってきたことと理解すれば合点がいく。

 原監督の功績を前面に出すことはなく、「育成制度」が巨人の3連覇につながったことを強調するのが清武氏の十八番だった。

 11月25日の会見でも育成枠上がりの山口や松本が新人王を獲得したことを例に出し、自身の手柄を強調したものである。

 その一方で、10年に出版された「こんな言葉で叱られたい」(文春新書)ではこう語っている。

〈一流に駆け上がろうという選手には共通した特徴がある。途中の苦労話をほとんど話さないことである〉

 育成制度の創設に尽力したことを折に触れて話すうぬぼれの御仁は、代表として一流でないということなのだろうか。

 西武の裏金問題もネチネチ

 ところで、「こんな言葉で─」には堀内恒夫前監督時代に、監督の日記を読ませるよう迫るシーンが描写されている。

 3つ年上の堀内前監督が、「あんたはもう新聞記者やめたんでしょ。記者根性出さないでよ」と拒否するも、押し問答の末に読ませてもらったというのである。しかも「オレが何かに書くから」と言い放ち、「代表、話が違うよ」と、堀内氏を激怒させたというのだ。実際、敗因などを分析する堀内氏の日記の一部は2冊の著書に掲載されている。

 球団関係者は言う。

「昨年の納会でのことでした。酔った堀内さんが『巨人がダメになったのはお前のせいだ!』と清武さんに絡んだんですよ。周囲が止めに入ってことなきを得ましたが、一部のOBは堀内さんによくやったという目を向けていた」

 また、「巨人軍は─」で、07年に発覚した西武の裏金問題をネチネチと攻撃したくだりも、清武氏の性質をうかがわせる。

〈(前略)西武のスカウトたちはビデオに頼らない。(中略)一部のアマ選手やその監督に裏金を渡したり事前に接触したりして(中略)入団の約束をしているから、ビデオなどで選手を追跡する必要がなかった(後略)〉

 巨人だって04年に「一場問題」で渡辺会長がオーナー職を辞任している。自身は関わっていなかった時期だから、自分だけは正しいと宣言したのだろうか。

「週刊誌で他球団のトラブルが報じられたり、表に出てはいないものの不祥事の噂が流れると、清武氏は他球団のフロントを激しく追及するといいます。『どうなってるんだ!』とどなりつけ、まるでコミッショナー気取りだそうです」(スポーツライター)

 そんな清武氏が渡辺会長の横暴を批判するとは、笑止千万である。

「こんな言葉で─」には、

〈古い指導者に限って、規格外の選手を辛抱強く見守ることができる〉

 との格言があったが、渡辺会長は増長した清武氏を辛抱強く見守ることはなかった。

「今、清武氏が書いたこれらの著作は書店で注文が殺到しているといいます。いわば清武氏は、巨人の内部情報を書いて稼いでいるんです。球団内部から『金、返せ』なんて声も出ています。騒動が落ち着いても、今度は暴露本で稼ぐんですかね」(前出・スポーツライター)

 暴走し続ける清武氏を、どんな言葉で叱ればいいのだろうか。