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 福島第1原発3号機の設計者であり、元佐賀大学学長の上原春男氏は2011年11月17日、自由報道協会主催の記者会見に出席。上原氏は、発生当初から現在に至るまでの原発事故対策について、専門家の視点から様々な問題点を指摘した。特に、政府や東京電力などの情報開示の姿勢に対して強い疑念をあらわにし、「何を言っているのかよく分からない」と、発表内容が不明瞭であると訴えた。

■福島からの漂流物が、南洋諸島まで到達

 上原氏は、東日本大震災の発生直後、福島第1原発のすべての電源が失われた事実を知り、自身が考案した原子炉への外付け冷却装置を早急に設置するよう官邸側へ強く訴えかけたという。しかし、当時の菅直人内閣により冷却装置の配備は見送られ、結果として、原子炉3基のメルトダウン(炉心溶融)が発生してしまったと経緯を説明した。

 原発事故の影響は日本国内だけでなく、太平洋に面する多くの国々に及んでいるとされる。上原氏によると、放射性物質を含む漂流物(汚染がれき)は予想よりも遥かに早く南洋諸島に到達しているという。また、上原氏は、会見の2日前に太平洋にあるマーシャル諸島の人から「2、3日前に福島からの漂流物が、マーシャル諸島に多量に到着した」と連絡があったことを明かし、非常にショックを受けたと話した。

■「早く真実を教えてほしい」

 会見で、ジャーナリストの田中龍作氏が、「チャイナシンドローム(炉心で溶融した高温の核燃料が、圧力容器と格納容器を貫通し漏れ出て、さらに地下土壌に潜りこむこと)の過程に入っていると思うか?」と見解を求めると、上原氏は「今までの時間的な経過から、実はそうならざるを得ないと思っている」と答えた。

 また、上原氏は「もしも、地下水脈まで(核)燃料棒が到達しているとなると、かなり恐ろしいことがいくつか起きる」と警告した上で、地下水脈自体が放射能に汚染されることで、土壌汚染や海洋汚染など、深刻な放射能汚染が広範囲に及ぶ可能性を指摘。地下水脈が高温の核燃料で熱せられ続けた場合、大規模な水蒸気爆発が起きるのではないか、との懸念を示した。その上で、関係当局に対して「早く真実を教えてほしい」と訴えた。

■東電からの情報「何を言っているのかよく分からない」

 上原氏は会見中、特に東電の発表内容について「正直、何を言っているのかよく分からない」と、何度も意見する場面があった。ジャーナリストの上杉隆氏から、現在の各原子炉(1、2、3号機)の状態やメルトスルーを含むチャイナシンドロームの可能性を問われると、

「メルトダウンして、メルトスルーをしていた時に、核燃料がどういう状態であるか分からない限りは、正確なことを言える人は世界中にいないのでは」

と皮肉を交えて答え、政府や東電などから提供される原発情報の不足や分かりづらさに対して、改めて不快感を示した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]記者による、チャイナシンドロームの可能性についての質問部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv71069415?po=newslivedoor&ref=news#34:06

(内田智隆)