消費者金融中堅の「レイク」が10月1日から始めた新事業展開「新生銀行カードローン レイク」が大きな波紋を広げている。

 レイクは2008年に新生銀行に買収されて以降、傘下の新生フィナンシャルの一ブランドとして運営されていて、先月までは「アコム」「アイフル」「プロミス」などと足並みをそろえ、消費者金融業者として改正貸金業法下で事業を行なっていた。ところが、今月からは一転、銀行業法下での事業展開を開始。

「そのことに対し、ライバル各社から『掟(おきて)破りだ』『抜け駆けした』と批判の声が噴出しているのです」

 そう語るのは経済ジャーナリストの須田慎一郎氏だ。いったい、レイクは何をやらかしたんですか?

「まず、昨年6月、改正貸金業法が完全施行され、グレーゾーン金利の撤廃や年収3分の1を超える融資を禁止する総量規制が導入されました。それにより、消費者金融業界全体がそれはもうかなりの打撃を受けているんですよ」

 それでも業界内には、痛みを分かち合いながらなんとか乗り切ろうという暗黙の了解があったそうだ。

「そんなとき、レイクが消費者金融業としてではなく、銀行業としての事業展開を開始。これでレイクだけが総量規制の足かせを外すことができ、さらに専業主婦に対する貸し付け規制や広告規制もなくなったんです」(須田氏)

 これまでレイク以外にも『モビット』(三菱UFJフィナンシャル・グループ)など、いわゆる銀行系消費者金融業者はほかにもあったが、あくまで消費者金融業として、改正貸金業法に基づき運営していた。それだけにレイクの今回の“法の穴を突いた”路線変更はインパクトがデカかったのだ。

 これにより、レイクはこれまで10万人だった年間新規顧客獲得数を、5年後には17万、18万人に拡大するという強気な目標をブチ上げている。ライバル他社がやっかむのも無理はない。

「やっかみだけではありません。そもそも改正貸金業法は4年後にもう一度見直される予定なので、消費者金融各社は足並みそろえて、総量規制の撤廃と上限金利の引き上げを金融庁に訴えていたんですよ。『厳しすぎる総量規制が闇金利用者の増大を助長している』という論法で、金融庁を説得しようとしていたのです」(須田氏)

 しかし、レイクが銀行業法下に乗り換えたことで事態が暗転。

「金融庁が『ほかの消費者金融業者も銀行業に移行した事業展開をすればいい。総量規制を撤廃する必要なし』と判断してしまう可能性が強まってしまった。レイクの取ったのは、消費者金融業界の主張を真っ向から否定するような方法だったんですよ」(須田氏)

 なるほど、怒りを買う理由はわかった。でも、これって他社も銀行業法下へ移行すればいいだけの話のようにも思えるけど……。

「そう簡単な話ではないんです。確かに、三菱UFJフィナンシャル・グループに属するアコムや、来年4月に三井住友銀の完全子会社となることが先日報じられたプロミスなどがレイクに追従する可能性はあります。ただ、銀行法下で運営するには一定以上の自己資本が求められますが、ここ数年の過払い金返還などで経営体力が低下している他社は、現実問題として銀行業法下への移行はまず不可能。また、金融庁からの定例検査を受け入れなくてはならなかったり、自己資本比率規制も課せられたりと、“あこぎな商売ができなくなる”というデメリットもありますからね」(須田氏)

 消費者金融業界が濡れ手で粟(あわ)だったのは遠い昔。レイクが投じた一手によって、生き残りを懸けた仁義なき戦いの幕が切って落とされたわけだ。

 ただ、ここで忘れてはいけないのは、貸金業法の改正は多重債務者を増やさないために行なわれたという大前提。各社による競争過熱によって、再び多重債務者が増えてしまうなんてことにならなければいいんだけど……。

(取材・文/昌谷大介)

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