山崎と内藤を同時にスタメン起用するなど、さすがは穴掘り名人である。不慣れな守備に気を使いながら打撃で結果を出せとは酷な話で、選手が働きやすい環境作りに腐心するのが監督の仕事なのに、そんなことには興味がないのか、なんともはや選手にとっては居心地の悪い使い方をしてくれるものだ。
コンビニだって新人だけのシフトなんて組まないわけで、はじめましての二遊間など、連携の打ち合わせをしている間に試合は終わってしまう。

勝敗はともかく筒香の存在感は日に日に増すばかり。村田が凹みっぱなしのため余計に目立つのだろうが、若さと勢いだけで結果を残している選手と違い、今やるべきことをしっかり理解していて、物怖じしたり舞い上がる様子が見受けられない。松井秀や前田智もそんな雰囲気を持っていたので、将来、球界の宝と称されるほどの選手に成長するかもしれない。

最近、二軍から上がってくる投手や、小林太のように調整のために二軍落ちしていた投手の活躍が目立っているが、ひょっとすると川村コーチの手腕だろうか。

巨人は東京ドームでの対横浜戦で史上最低の観客動員数を記録したが、同じ人気球団の阪神も、京セラドームで行われた対ヤクルト戦で2万を割り込む低い数字に終わったという。横浜戦はともかく、首位を走るヤクルト戦ですら観客が入らないこの現実をどう見るか。

ヤクルトは人身掌握力に秀でた小川監督が、送りバント、右打ち、エンドランなどの小技を多彩に組み合わせ、決して戦力的に恵まれたとはいえないチームをまとめ勝ち進んでいる魅力的な野球である。
ところが首位争いをする中日も、その下の巨人や阪神や広島はもとより、最下位の永久シードの横浜までが、走者が出ればバントで送ってなどという野球をやっている。
みな同じ戦法なのだから、監督がアホな順から下に置いていけば大体順位は当たる。

この戦法の本家中の本家である野村監督が、精魂込めて作り上げた集大成ともいえるヤクルトですら、権藤監督率いる横浜に3年間ただの一度も勝ち越すことはできなかった。所詮送りバント戦術などそんなものである。
戦力に勝るチームの監督がそろってアホの時代、リスク管理の上手な監督が戦術的なムダを極限まで削って、戦力をもてあましたチームを出し抜いた、ということである。
プロレスでもウエスタンラリアートを得意技とするスタンハンセンと、同様の技であるアックスボンバーを決め技とするハルクホーガンが、ラリアートの応酬をしてもただの殴り合いにしか見えないが、関節技や寝技に秀でたレスラーが相手なら、互いの持ち味が活きるのでマッチアップとしては面白くなる。

プロ野球とてその原理は同じ。対抗軸があって初めて互いの特徴が際立つのである。
チームがいくら負けようともお構いなしにジャカジャカやっている連中は、野球がいつの間にかラグビーに変わっていても気づかず騒いでいるだろうが、内容にこだわるファンは日々繰り返されるバント合戦に辟易として、他のスポーツに鞍替えしたということである。

高校野球の影響で見慣れてしまったため、誰一人今の戦法に異議をはさむ者はいないが、本来、送りバントという戦術は定石ではなく奇策。
ここ一番で確率に目をつむり、1点だけを遮二無二獲りに行く作戦である。
確率を無視した作戦だからシーズンを通して繰り返せば確実にマイナスになる。
しかし日本の監督レベルは低く、一部の監督を除くと戦術を深く掘り下げることなく、ただひたすら今までの慣習をなぞっているので、なんら疑問を抱くことなく毎日送りバントの大量生産に精を出している。
だからバレンタインやヒルマンなど、外国人の監督が来るといとも容易く優勝されてしまう。

ザッケローニに率いられた日本代表が、短期間で目を見張るような進化を遂げているのをみれば、今までの日本人監督がどれだけ選手の能力をスポイルしてきたか一目瞭然である。
もうそろそろプロ野球も目を覚まさないと、練度の低いバント合戦ばかりを観せていては、若い人から「野球なんてつまらない」と思われて、オールドファンの自然減少に伴い過去のプロスポーツに成り下がってしまうだろう。