浦和OBの福田正博が語るJリーグの観客動員数減少問題「レッズだけの問題ではない」
浦和レッズマガジンの連載企画『浦和レッズ再建委員会〜浦和レッズへの提言〜』。最新号では、島崎英純編集長が、“ミスター・レッズ”こと、福田正博氏を迎えて浦和レッズの現状、問題点、そして復活へのヒントを語る対談(前編)を掲載している。ここではそんな浦和レッズへの愛に満ちた対談の一部を紹介しよう。
編集長「前回のこの企画で、レッズの社長にしたいのは、というアンケートを採りました。いろいろな意見がありましたが、犬飼基昭さんの名前が多かったのと、福田さんや祖母井秀隆さんの名前もありました」
福田「俺が社長なんかやったら、会社潰れちゃうよ(笑)」
編集長「現象から言うと、まず観客動員が落ちています」
福田「かなり深刻だね」
編集長「ただ、レッズ単体の問題もありますが、今年の日本全体の出来事はもちろん影響していますよね」
福田「全体として落ちているんでしょ?」
編集長「レッズだけじゃないですね。Jリーグは全体的に動員が落ち込んでいます」
福田「一昨年かな、政治的な問題があって新聞がフィンケさんのことを悪く書くため観客動員が減った、去年と比べて何千人減りましたなんて言われていたよね。書いてあること自体は間違ってないけど、冷静に考えてもらいたいのは、スタジアムのキャパシティに対して、各チーム何パーセント減ったのかということなんだよね。浦和の場合、他のクラブと比べて1パーセント当たりの人数が多いのだから、パーセンテージ的なことも理解して話をしないと、表面的な“何千人”という表現に躍らされすぎてしまう。他と比べて何パーセント減っているのか、さらに浦和単体の問題なのか社会的な問題なのか。そこをはっきりさせて、ごちゃごちゃにしないで考えるべきだよね」
編集長「社会的な問題で言いますと、まず昨今の経済不況、それから今年で言うと東日本大震災があってリーグが中断されたという影響よりも、皆さんが自粛した気持ちになってしまっているのかなと。また東北、関東地方では未だに余震が続いているので、あれだけ多くの人が集まることへの不安なども、あるのかもしれません」
福田「それは当然影響しているだろうね」
編集長「Jリーグとしても、人気が低下しているという部分はあるかもしれません」
福田「日常でJリーグに触れる頻度が低下しているからね。テレビも、地上波での露出はどんどん減っている」
編集長「例えば海外に選手が何人も出て行っていることが、レベルの低下を招いたという判断をされている部分もあると思います」
福田「代表で活躍している選手がJリーグにあまりいないからね。俺はメディアの仕事をしているからよく分かるんだけど、Jリーグの話題をしたくてもサポーターではない一般の方は、チームを応援するんじゃなくて人を見たいんだよね。その時にJリーグの中で人を紹介しようとした時にどうするのかというと、代表選手を紹介せざるを得ないんだよ。代表選手って誰? ってなると、前田遼一とか李忠成とか、そのぐらいしかいないんだよ、実は。だから、テレビのニュースがJリーグの話題を流すことは少なくて、ヨーロッパの選手たちの情報を流すことが多くなる。Jリーグの情報を目にすること、耳にすること自体が減っていて、注目度が薄れていることは事実。海外に選手が出て行っているのもそうだし、それなら新しい選手が出てくればいいけど、それほどうまくいってない現状がある。ただ、日本の場合はオリンピックの人気が高いので、23歳以下の選手たちが一度脚光を浴びるんだ。今年はそういう時期になると思うんで、メディアの方もそこで煽ったりすることもあるから、助けになるかもしれないね。どちらにしても、メディアとしては扱いが難しいのは事実だね」
編集長「皮肉なのは、昨年のワールドカップでベスト16に入ったり、アジアカップで優勝したりしたことで、日本代表の人気は復活しているじゃないですか。それに反比例するかのごとく、Jリーグの動員が落ちているというのは、同じサッカーなのに違うコンテンツとして捉えられている感じがします」
福田「メディアのあり方が変わってきているのも事実。“地域に根ざした”というのがJリーグの理念であるけど、日本のメディアのあり方としても全国放送なんてできないよね。地上波でなかなか放送しづらいというのがあり、いろいろなところでビジネスモデルが変化しているというのがあって、認知されづらい部分がより増えているんじゃない? 日本代表の試合は全国放送してもいいけど、例えば浦和と横浜の試合を全国で流して誰か見る人いるの? という問題になっている。JリーグはJリーグの、地域に根ざしたやり方をもう一段踏み込んで考えなければならないだろうな。今年はJリーグのスポンサーに、博報堂だけじゃなく電通が入ってきたり、マクドナルドがついたりといろいろなことをやっているけど、もう少し注目度が上がるようなやり方をしないと、一クラブだけでどうにかしようとしても難しいのかなと思う」
浦和はもとより、Jリーグ全体の問題として騒がれている、観客動員数の低下問題。サッカー人気をもっと高めるためには、まずこの問題を解決しなければいけない。Jリーグは果たして、どのような手段やアイデアでこの壁を打ち破るのだろうか。なお、浦和レッズマガジン8月号では、島崎編集長と福田氏の対談・後編を掲載する予定となっている。
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福田「俺が社長なんかやったら、会社潰れちゃうよ(笑)」
編集長「現象から言うと、まず観客動員が落ちています」
福田「かなり深刻だね」
編集長「ただ、レッズ単体の問題もありますが、今年の日本全体の出来事はもちろん影響していますよね」
福田「全体として落ちているんでしょ?」
編集長「レッズだけじゃないですね。Jリーグは全体的に動員が落ち込んでいます」
福田「一昨年かな、政治的な問題があって新聞がフィンケさんのことを悪く書くため観客動員が減った、去年と比べて何千人減りましたなんて言われていたよね。書いてあること自体は間違ってないけど、冷静に考えてもらいたいのは、スタジアムのキャパシティに対して、各チーム何パーセント減ったのかということなんだよね。浦和の場合、他のクラブと比べて1パーセント当たりの人数が多いのだから、パーセンテージ的なことも理解して話をしないと、表面的な“何千人”という表現に躍らされすぎてしまう。他と比べて何パーセント減っているのか、さらに浦和単体の問題なのか社会的な問題なのか。そこをはっきりさせて、ごちゃごちゃにしないで考えるべきだよね」
編集長「社会的な問題で言いますと、まず昨今の経済不況、それから今年で言うと東日本大震災があってリーグが中断されたという影響よりも、皆さんが自粛した気持ちになってしまっているのかなと。また東北、関東地方では未だに余震が続いているので、あれだけ多くの人が集まることへの不安なども、あるのかもしれません」
福田「それは当然影響しているだろうね」
編集長「Jリーグとしても、人気が低下しているという部分はあるかもしれません」
福田「日常でJリーグに触れる頻度が低下しているからね。テレビも、地上波での露出はどんどん減っている」
編集長「例えば海外に選手が何人も出て行っていることが、レベルの低下を招いたという判断をされている部分もあると思います」
福田「代表で活躍している選手がJリーグにあまりいないからね。俺はメディアの仕事をしているからよく分かるんだけど、Jリーグの話題をしたくてもサポーターではない一般の方は、チームを応援するんじゃなくて人を見たいんだよね。その時にJリーグの中で人を紹介しようとした時にどうするのかというと、代表選手を紹介せざるを得ないんだよ。代表選手って誰? ってなると、前田遼一とか李忠成とか、そのぐらいしかいないんだよ、実は。だから、テレビのニュースがJリーグの話題を流すことは少なくて、ヨーロッパの選手たちの情報を流すことが多くなる。Jリーグの情報を目にすること、耳にすること自体が減っていて、注目度が薄れていることは事実。海外に選手が出て行っているのもそうだし、それなら新しい選手が出てくればいいけど、それほどうまくいってない現状がある。ただ、日本の場合はオリンピックの人気が高いので、23歳以下の選手たちが一度脚光を浴びるんだ。今年はそういう時期になると思うんで、メディアの方もそこで煽ったりすることもあるから、助けになるかもしれないね。どちらにしても、メディアとしては扱いが難しいのは事実だね」
編集長「皮肉なのは、昨年のワールドカップでベスト16に入ったり、アジアカップで優勝したりしたことで、日本代表の人気は復活しているじゃないですか。それに反比例するかのごとく、Jリーグの動員が落ちているというのは、同じサッカーなのに違うコンテンツとして捉えられている感じがします」
福田「メディアのあり方が変わってきているのも事実。“地域に根ざした”というのがJリーグの理念であるけど、日本のメディアのあり方としても全国放送なんてできないよね。地上波でなかなか放送しづらいというのがあり、いろいろなところでビジネスモデルが変化しているというのがあって、認知されづらい部分がより増えているんじゃない? 日本代表の試合は全国放送してもいいけど、例えば浦和と横浜の試合を全国で流して誰か見る人いるの? という問題になっている。JリーグはJリーグの、地域に根ざしたやり方をもう一段踏み込んで考えなければならないだろうな。今年はJリーグのスポンサーに、博報堂だけじゃなく電通が入ってきたり、マクドナルドがついたりといろいろなことをやっているけど、もう少し注目度が上がるようなやり方をしないと、一クラブだけでどうにかしようとしても難しいのかなと思う」
浦和はもとより、Jリーグ全体の問題として騒がれている、観客動員数の低下問題。サッカー人気をもっと高めるためには、まずこの問題を解決しなければいけない。Jリーグは果たして、どのような手段やアイデアでこの壁を打ち破るのだろうか。なお、浦和レッズマガジン8月号では、島崎編集長と福田氏の対談・後編を掲載する予定となっている。
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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。