■高木監督が「ほぼパーフェクト」と話した千葉戦

勝点差4で首位の千葉をホームに迎えた13節。熊本は立ち上がり3分にマーク・ミリガンのロングスローから竹内彬の2試合連続ゴールで先制を許す。しかしながら24分、長沢駿の今季3点目で追いつくと、その後はゲームを支配。追加点こそ奪えずに勝点3は手にできなかったが、やはり先制されながらもアディショナルタイムの市村篤司のゴールで追いついた昨シーズンの開幕戦とは、同じ勝点1でもその意味合いが異なる。さらには「勝てば勝点で並ぶ」というシチュエーションで迎えたが何もさせてもらえなかった昨シーズン8節の柏戦(●1-3)とも違い、首位相手に終始主導権を握ったという点で、チームとして成長を感じさせた(もっとも高木琢也監督は、その要因はむしろ千葉の方にあったと指摘しているが)。

特にこの試合では、廣井友信と矢野大輔のセンターバックがチャレンジ&カバーを徹底して千葉のターゲットとなっていたオーロイを自由にプレーさせず、またボランチのエジミウソンら中盤も献身的にセカンドボールを拾って攻撃につなげた。曖昧な基準で不安定だったジャッジに対しては、試合中に頻繁にベンチを立つなどいらだちを隠せなかった高木監督も、試合後の会見では落ち着いた表情で「ほぼパーフェクトなゲームができた」と振り返っており、ある程度の手応えを掴んでいる。

この試合を終えて熊本は3勝3分1敗の勝点12で6位と、前節から順位は1つ下げた。だが昇格の筆頭候補と目されていたFC東京が出だしにつまずき、ここまで無敗を守ってきた栃木が前節敗れるなど、かつてないほど混戦の様相を呈している今シーズンのJ2にあって、昨シーズンとほぼ同じペースでのスタートは、熊本にとってはまずまずと言っていいだろう。

■13節終了時点で最少の失点と被シュート数。その裏側にあるもの

ここまでの成績を支えているのが、高木監督が就任して2年目となってさらに進化した守備だ。7試合でわずか3という失点は湘南と並んでリーグ最少で、千葉戦では立ち上がりにセットプレーから失点したものの、それまでの6試合でリーグ最多96本(1試合平均16本)を放っていたシュートを5本に抑えるなど、7試合で43本という被シュート数の少なさはJ2で突出している。

13節までの7試合の内訳を見ると、10本以上のシュートを許したのは敗れた9節の草津戦のみ(11本)で、それ以外の試合では相手のシュートを1桁に抑えている(うち3試合は5本以下)。DF陣の新加入はCBの廣井のみで基本的な顔ぶれは昨シーズンから変わっておらず、最終的な局面でのシュートブロックはもちろん、チームとしてシュートを打たせない守備ができていることが読み取れる。しかし一方の攻撃でも、草津戦を除けば全ての試合で相手より多くのシュートを放っている。

前線に高さのある長沢が加わり、シンプルにロングボールを入れる場面も決して少なくないが、長沢が竸った後のセカンドボールの争いで完全に後手を踏んだようなゲームも少ない。開幕から10節北九州戦までの4試合では、つなぎや展開で特徴を持つ原田拓がアンカーを務めていたこと、さらには新加入の根占真伍や札幌戦から出場しているエジミウソンがバランスを意識したポジショニングで中盤を締め、簡単にボールを失わなくなったことなども関係して、ボールを保持する時間そのものが長くなっていることもうかがえる。

また、11節札幌戦では今シーズン初めてダブルボランチを採用、続く水戸戦では再び1アンカーに戻し、さらに前節千葉戦では今季初めて原田を左サイドバックに起用するなど、相手の特徴を踏まえてシステムや布陣をいじることで、ストロングポイントを出させない戦い方を選択していることも忘れてはならない。