高原の復活と、チームへの融合が待たれる<br>(photo by Kiminori SAWADA)

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 2008年の国際Aマッチの成績は、19試合で10勝7分け2敗となった。最終予選は2勝1分けで、3連勝のオーストラリアに次ぐ2位をキープしている。

 オシム流の継続からスタートしたチームは、この1年で違った表情を見せてきた。玉田圭司、大久保嘉人、田中達也ら、アジリティを武器とするストライカーを組み合わせた攻撃は、右サイドの成熟とともに流麗なパスワークを展開するようになってきた。ディフェンスの連動性も高まっている。選手の動きに迷いがないのだ。「人もボールも動くサッカー」というコンセプトは、「人もボールもよどみなく動くサッカー」へ前進している。

 とはいえ、世界のトップクラスに急接近したわけではない。

 最終予選で対戦したバーレーン、ウズベキスタン、カタールの三か国が、ひどく物足りないレベルだったのは改めて確認しておく必要がある。中東でのアウェイゲームに連勝した一方で、ホームのウズベキスタン戦で1−1のドローに終わったことも忘れてはならない。ペナルティボックス周辺のスペースをあらかじめ埋められ、アジリティを発揮しにくい状況での有効な手立ては持ち得ていない。

 その意味で待たれるのは、高原の復活だろうか。FW陣がアジリティ重視の顔ぶれとなったそもそもの引き金は、高原の不振だったはずだ。彼のポテンシャルをどのようにチームへ落とし込んでいくのかは、09年の課題のひとつになるだろう。

「この1年、代表を引き受けてからいろいろな試行錯誤のなかで、ようやくここまで辿り着きました。ではここからは大丈夫かというと、決してそんなことはない。まだまだいまのままではダメだと、目標達成のためにはまだまだ足りない。何割かと言われると困るのですが、感覚的にいまのままではダメだというのが実感です」

 12月9日の行われた年内最後の記者会見で、岡田監督はさらなる前進を誓った。

 同17日に発表された最新のFIFAランキングは35位だった。前月より3つ順位をあげたが、1年前の12月に比べると一歩後退している。FIFAランキングを基にワールドカップの出場国が決まるのであれば、出場できるかどうかの瀬戸際というのが日本の現在地だ。

 日本は進化している。だが、世界もまた進化している。日本独自のスタイルを構築しつつ、進化のスピードをさらにあげていくことが求められる。(了)

■関連リンク
第1回 「オシム流の継続と、封印された岡田色」
第2回 「加速する岡田流と、チームを去った黄金世代」
第3回 「アジリティ+アジリティ」
第4回 「成熟への階段」

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖