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2018年も残すところあとわずか。スマートフォン業界でも、この2018年は大きなトピックが相次いで登場しました。本企画では、2018年に巻き起こったスマホ業界の大きなトピックを、Q&A形式で紹介。携帯電話に関連した幅広い分野で活躍するフリーライターの佐野正弘氏が、概要や背景をわかりやすく解説していきます。

それでは、2018年のスマートフォン業界を振り返っていきましょう。今回はスマートフォン本体にまつわるトピックを紹介する「端末編」です。

○トピック1:今年出たiPhone、どうしてこんなに高いの?

毎年大きな注目を集める、アップルのスマートフォンiPhone」の新機種。2018年に発売されたiPhone新機種は、いずれも2017年に投入された新機軸の「iPhon X」の系譜を継いだ「iPhone XS」「iPhone XS Max」「iPhone XR」の3機種でした。しかしその価格は、最も安いiPhone XRでも8万円以上、iPhone XSやiPhone XS Maxに至っては全てのモデルが10万円を超えるなど、端末価格の高さに驚いた人も多いかと思います。

3機種はいずれも最新のCPUを搭載しており、iPhone XS/XS Maxは大画面の有機ELディスプレイや高い性能のデュアルカメラを備えるなど、価格相応の非常に高い性能や機能を備えているのは確かです。しかしながらなぜ新機種が全て高額なのかというと、そこにはアップルの戦略転換が大きく影響しています。

というのもアップルは、iPhoneの販売を新興国にも広めて販売台数を増やす戦略から、先進国や富裕層に向けた高額・高付加価値モデルに力を入れ、利益を高める方針に切り替えたようなのです。アップルが2018年11月に発表した決算で、iPhoneの販売台数を非開示にしたことが、そのことを象徴しているといえます。

そうしたことから今後、iPhoneの価格が安くなることはあまり期待できないでしょう。分離プランの導入の影響もあり、最新のiPhoneを買いたいという人にとって、今後はお財布に厳しい時代が来ることになりそうです。

○トピック2:iPhone SEはなぜ発表されなかったの?

4インチディスプレイを搭載し片手で画面の隅々まで操作できるコンパクトなサイズ感ながら、iPhone 6sと同等の性能を備える高い性能で人気となった「iPhone SE」。ですが発売から既に2年が経過し、古くなってしまった感は否めません。

それゆえ今年、iPhone SEの後継機が登場するのでは……? という憶測報道が多くなされたのですが、結果として発表されたのは、いずれも6インチ前後の大画面を備えたモデルのみ。コンパクトなiPhone SEは発売されず、落胆した人も多かったようです。

その理由は、やはりアップルの戦略転換にあります。多くの人が「iPhoneのコンパクトモデル」と思っているiPhone SEですが、実はアップルにとって、iPhone SEは旧機種の「iPhone 5S」のボディを活用することで開発・製造に係るコストを抑え、新興国での販売拡大を狙った低価格モデルという位置付けだったのです。

しかしながら新興国の人にとってはiPhone SEでも価格が高く、より価格が安くて性能が高い中国メーカーにシェアを奪われてしまいました。アップルが高価格のモデルだけを販売する戦略に切り替えたのにはそうした背景があるわけで、このことを考えれば今後、iPhone SEの後継となるコンパクトモデルが出る可能性は限りなく低いと言わざるをえません。

○トピック3:Pixel 3ってどんなスマホ?

グーグルは2018年11月、日本で「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」というスマートフォンを発売し、大規模なプロモーションを実施するなどして話題となりました。かつてグーグルは「Nexus」というブランドで、日本でも2015年までスマートフォンを販売していましたが、2016年以降は姿を消しています。それが「Pixel」となって再上陸したのには、グーグルの戦略が大きく影響しています。

元々グーグルはインターネットサービスの会社であり、スマートフォンに関してもOSとなる「Android」と、これに関連するインターネットサービスに力を入れていました。それゆえNexusシリーズのスマートフォンは一般消費者に向けたものというより、最新かつ“素”のAndroidを利用したい、アプリ開発者に向けたAndroidの標準モデルという意味合いが強いものだったのです。

ですがグーグルは現在、自社サービスの提供の場をインターネット上だけでなく、現実世界にも広げようとしています。そのためにはサービスを利用するためのハードウェアが必要なことから、ハードとソフトを一体で開発・提供するという戦略に切り替えたのです。声で操作しさまざまなサービスが利用できる「Googleアシスタント」が利用できるスマートスピーカー「Google Home」が、その代表例といえるでしょう。

実はPixelシリーズもGoogle Homeと同様、米国などでは2016年から提供されているもの。ではなぜ、日本への上陸が2018年になったのかというと、現実世界で利用できるグーグルのサービスの要でもある「Googleアシスタント」や「Google Pay」などのサービスが日本でも使えるようになったためです。環境が整っただけに、グーグルは2019年以降、日本でのPixelシリーズの販売に一層力を入れてくることとなりそうです。

○トピック4:中国メーカーのスマホが増えているのはなぜ?

NTTドコモから発売された「HUAWEI P20 Pro」をはじめとして、2018年はファーウェイが大手3キャリア全てにスマートフォンを提供し、第2〜3四半期の国内スマートフォン販売シェアでも上位5位にランクインするなど大躍進を遂げました。また同様に2018年、世界第4位のスマートフォンメーカーであるOPPOが日本進出を果たし、FeliCaを搭載した「R15 Pro」を販売するなど次々と新製品を投入して話題となっています。

これらはいずれも中国のメーカーなのですが、なぜ中国メーカーが日本で急速に存在感を高めているのかというと、そこには日本の行政が大きく影響しています。日本のキャリアはこれまで、大手キャリアが通信料金を原資として端末価格を大幅に引き下げて販売するという販売手法をとっていましたが、総務省がこの販売手法を問題視。分離プランの導入を推し進めるなどしたことで、端末を安く販売するのが難しくなっています。

そうしたことから低価格のスマートフォンに対するニーズが高まっており、元々低価格のスマートフォン開発に強みを持つ中国メーカーが、日本市場に入り込みやすくなったわけです。しかも中国メーカーは低価格スマートフォンで世界的に販売シェアを伸ばしており、その売り上げを研究開発に積極投資してハイエンドスマートフォンの開発にも力を入れるようになったことで、ハイエンド市場でも存在感を高めている、という結果につながっています。

では2019年も中国メーカーの人気が高まるかというと、必ずしもそうとは言えなくなってきました。その理由もまた政治にあり、年末には米中摩擦の影響を受ける形で、日本政府もファーウェイなど中国メーカー製の通信機器を導入しない方針を打ち出したとの報道がなされています。このことがスマートフォンの販売に直接関係する訳ではないのですが、イメージダウンは免れないでしょう。2018年には中国のZTEが、米国の制裁を受け破たん寸前に追い込まれるという出来事も起きているだけに、中国メーカーの今後は国際情勢に大きく左右されることになりそうです。