投手の酷使を「お手本」にしてはいけない(写真はイメージ)

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1人の投手を「酷使」することが、高校野球の「お手本」なのか――。

2018年8月21日、決勝戦後のグラウンドで開かれた夏の甲子園の閉会式で、大会の審判委員長をつとめた高野連会長の八田英二氏が口にした一言が、インターネット上で物議を醸している。

「1人でマウンドを守る吉田投手を...」

この日の決勝では、大阪桐蔭(北大阪)が13-2で金足農業(秋田)を破り、史上初となる2度目の春夏連覇を果たした。金足農は、地方大会から準決勝まで1人で投げ抜いたエース・吉田輝星投手がついに崩れ、東北勢初の優勝を逃した。

こうした試合後、大会審判委員長としての「講評」のため壇上に立った八田氏の発言に、「おかしい」「それは違う」などと違和感を覚える野球ファンが続出している。

問題視されているのは、八田氏が金足農の準優勝を称える中で、

「秋田大会から1人でマウンドを守る吉田投手を、他の選手が盛り立てる姿は、目標に向かって全員が一丸となる、高校野球のお手本のようなチームでした」

と発言したことだ。

吉田投手は今大会、初戦から準決勝まで5試合連続完投。短い登板間隔のなか、決勝までに749球を投げ抜いた。だがそれだけに、元プロ野球選手やスポーツジャーナリストなど多くの識者が、吉田投手の「酷使」を不安視していた。

準決勝から中ゼロ日で行われた決勝戦では、そうした不安が的中してしまったのか、吉田投手は本来の力を発揮できなかった。甘く浮いたボールを大阪桐蔭打線に痛打され、5イニングで12失点を喫した。

実際、決勝後の吉田投手の談話を伝えたスポーツニッポン(ウェブ版)記事によれば、本人は試合後に「4回くらいから足が動かなくなった」と話したという。

「お手本じゃなくて前時代的な理想だろ」

そうした背景があるだけに、八田氏が金足農を「高校野球のお手本」と評したことをめぐって、ツイッターやネット掲示板には、

「エース1人を酷使させることをお手本のようなって表現するのは違う」
「酷使を高校野球のお手本と公に発言しちゃいかん」
「1人で投げきるのが高校野球のお手本?それは違う」
高校野球のお手本じゃなくて前時代的な理想だろ」

といった批判的な意見が相次ぐことになった。

また、柿木蓮投手、横川凱投手、根尾昂選手の好投手3人を擁し、巧みな継投策で投手の負担を分散させた優勝校・大阪桐蔭こそ「お手本」として評価すべきと訴えるユーザーの姿も。ツイッターには、

「お手本にすべきは金足農業の『エースと心中』ではなくて大阪桐蔭や」
「お手本にしなあかんのは大阪桐蔭なんや。高野連の爺さん、わからんか。わからんわな...」

などと呆れたような反応も目立っていた。