豚への人工培養肺移植が成功、正常な血管網を形成。将来の移植ドナー不足解消に一歩前進

テキサス・メディカル・ブランチ大学の研究者が、バイオテクノロジーで人工的に培養した肺を豚に移植し、正常に機能する血管ネットワークを構築できたと報告しました。その肺は実際に正常に酸素を胎内に取り込めるかどうかは未確認ながら、機能的に必要な構造をすべて有していました。研究チームは、別の動物の器官から細胞と血液を取り除いてタンパク質のみの培養床を作り、それを「慎重に設計されたレシピ」を用いた豚の肺の細胞組織とともに培養液に浸し、成長させました。完全な形の肺が形成されるのにかかった時間は30日ほどでした。

豚での成功を見たとはいえ、それはまだ人間に転用できる段階にはありません。まずきちんと機能することを確認する必要があり、そのうえで長期的に使用できるのかという懸念もまだ残っています。これまでところ、研究者らは移植人工臓器を2ヵ月ほど研究したにとどまっています。そして、その期間は人工の肺になんらかのトラブルが発生するに十分な期間でした。

したがって、何年も持つ肺を作り出すにはまだこれからいろいろな研究を重ねる必要があるはずです。それでも研究チームは、5〜10年もあれば人に移植できる肺を培養できるようになると楽観的です。

8月に入ってすぐの週末に、元F1チャンピオンで、映画「ラッシュ/プライドと友情」の主人公のモデルになったニキ・ラウダ氏が肺移植を受けたというニュースが飛び込んできました。手術後の推移は良好だと伝えられるものの、肺は非常に感染に弱く、移植後の5年生存率は50〜60%とも言われます。

また現状ではドナーが現れる前に持ちこたえられなくなる患者もたくさんいるはず。この研究はそうした臓器不足とでも言うべき状況を、将来的に解決するかもしれません。