「一休.com」

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 ヤフーがホテル・旅館予約サイトを展開する一休を1000億円で買収する。1株3433円でTOB(株式公開買い付け)を実施中。2月3日までに全株を買い取る。

 2月10日付で一休社長の森正文氏が退任し、副社長の榊淳氏が昇格、ヤフー社長の宮坂学氏が一休の会長に就任する。

 一休は1998年7月の設立。宿泊予約サイト「一休.com」を手掛け、2005年8月に東証マザーズに上場した。高級ホテルや高級旅館の予約に特化することで差別化を図ってきた。

 訪日外国人客(インバウンド)の急増を受け業績は好調。15年4〜9月は取扱額が前年同期比14%増の290億円と大幅に伸びた。その勢いをかって16年3月期の通期決算の売上高は前期比12%増の74億円、純利益は14%増の16億円と4期連続の増収・増益の見込みだ。

 創業社長の森氏は絶好調の今が会社の売り時と判断。15年8月から証券会社を通じて売却先を探し、ヤフーが名乗りを上げた。とんとん拍子で話がまとまり15年12月15日に合意した。

 森氏は一休の41.33%を保有する筆頭株主である。TOBに応じて1株3433円で全株を売却し、413億円のキャッシュを手にすることになる。

 ベンチャー起業家は自ら起こした企業の経営にこだわったりはしない。高値で売り払い、手にした資金を元手にベンチャー企業に投資し、次のリターンを狙う。

●ヤフーはショッピングモールの出店数で楽天市場を上回る

 ヤフーは検索サイトのトップページにニュースと広告を掲載して閲覧者を集め、広告収入を得る事業を柱としてきた。広告収入が売り上げ全体の7割を占める。パソコンの時代に最も成功したネットビジネスのモデルだった。

 しかし、インターネットの利用がパソコンからスマートフォン(スマホ)に移り、ヤフーの優位性が崩れた。検索サイトのトップページにある広告から収入を得るビジネスモデルは先細りの恐れが強まったのだ。

 そこで電子商取引(EC)の分野の強化に着手した。オークションサイト「ヤフオク!」は国内トップだが、通販サイト「Yahoo!ショッピング」はアマゾン、楽天の後塵を拝していた。

 13年10月に出店・販売手数料無料化を打ち出し、攻勢をかけた。その効果でYahoo!ショッピングの出店数は15年9月末で34万店に達した。楽天市場の4.2万店に大差をつけた。

 楽天市場は出店・販売手数料で稼ぎ、Yahoo!ショッピングはサイトに出稿してもらう広告を収益源としている。ビジネスモデルが異なるため単純に比較はできないが、出店数では、明らかにYahoo!ショッピングが国内トップのショッピングモールとなった。

●宿泊ネット予約市場で楽天トラベルに攻勢をかける

 今後、大きな伸びが期待できるとされる宿泊のネット予約市場でヤフーは出遅れていた。楽天の「楽天トラベル」、リクルート系の「じゃらんnet」の2強に後れを取っていた。

 楽天トラベルの前身は「旅の窓口」。03年、楽天が日立造船から323億円で買収した。14年4月、運営会社、株式会社楽天トラベルは、楽天市場との相乗効果を狙い、親会社の楽天に吸収合併され解散。以後、楽天トラベルは楽天が運営する旅行ウェブサイトの名称として使用されている。14年12月期の総取扱額は6380億円。

 じゃらんnetはリクルートライフスタイルが運営。国内の旅館・民宿に強みを持ち、15年3月期の総取扱額は6815億円だ。

 一休.comの15年3月期の総取扱額は505億円。2強の1割にも満たない規模だが、高級宿泊施設の予約では一人勝ちの状態だ。

 Yahoo!トラベルの宿泊予約サービスの対象はビジネスホテルが中心で取扱額は非公開。一休が得意とするシティーホテルや高級旅館は手薄だったので、一休の買収で補完できる。

 一休の16年3月期の営業利益は25億円の見込み。その40倍の1000億円で買収するが、「ヤフーはいい買い物をした」と前向きな評価が多い。

 一休買収でヤフーは楽天に挑戦状を叩きつけた。量より質の営業方針で富裕層にターゲットを絞り込む構えだ。
(文=編集部)