<金沢達也プロフィール>
脚本家。萩本企画所属。萩本欽一が主宰する欽ちゃん劇団に入団後、放送作家に転身。2009年にドラマ「華麗なるスパイ」で脚本家デビュー。これまで関わった作品に「踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!」(脚本協力)、「係長 青島俊作 THE MOBILE 事件は取調室で起きている!」「係長 青島俊作2 事件はまたまた取調室で起きている!」「ニュース速報は流れた」「ラッキーセブン」など。

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3月21日に全国公開された映画『暗殺教室』の見どころはどこなのか? 脚本を担当した金沢達也へのインタビュー、後編です。(前編はこちら)

《原作者と脚本の関係性》

─── 漫画にしても小説にして、原作ものを映像化する場合、本来であれば数多くあるエピソードの中からどれを抽出していくかが一番大変なことのはずなのに、変に足したりする作品も多いですよね。

金沢 まあ、なかにはそういう作品もありますね。

─── 先ほど、引き算で脚本を作った、という話がありましたが、その点はどう考えていますか?

金沢 絵づくりの問題や演技の制約上の兼ね合いで、何かを変える場合があるのはわかるんです。でも、足すっていうのは自分も昔から疑問です。そもそも、魅力ある原作だから映像化しようと思ったんじゃないの? と。そこは何なんでしょうね? 実写化におけるプライドなのか何なのか……もっと、原作をどう活かすかを考えたほうがいいんじゃないかと思います。その意味でも、今回はすごくいい作品に巡り会えたと思いますね。

─── 気になったのは、映画の内容と原作がとてもリンクしているというか。特にエンディングで「あれ? 今のって最近のジャンプで見なかったか?」というシーンがありまして。

金沢 ねぇ。あれ、驚きましたよね。そこは、松井先生のほうが合わせていただいたのかもしれないですね。

─── 原作者である松井優征さんとは何か打ち合わせをしたりとかは?

金沢 原作者と脚本家って、やっぱり直接は会わない方がいいと思うんですよ。なので、撮影まではプロデューサーを介していろいろとやり取りをさせていただきました。お会いしたのは打ち上げの席ですね。「今後も自分の作品が映像化される場合は、脚本家は金沢さんで」と言っていただけたのが一番の思い出です(笑)。

─── ちなみに、今年1月からはTVアニメ版『暗殺教室』(フジテレビ系列)も放送されています。同時期にアニメも描かれる、という点で何か意識したことはありますか?

金沢 脚本においては全くないです。監督もそんなに意識してないと思いますよ。プロデューサー陣はいろいろとあるかもしれないですけど。僕個人としては楽しく拝見しています。

─── でも、漫画だからできること、アニメだからできること、実写だからできることっていうのがそれぞれあると思うんです。だからこそ、映画版ではこうしたい、こう見せたい! というのがあったのかなと気になったのですが。

金沢 そこはもう、実写化のプロ集団が揃っているわけですから、変に意識しないで素直にストーリーを飲み込んで実写化していくだけだと思いますよ。

《プライベートの脚本の関係性》

─── この映画の企画が立ち上がったのはいつ頃?

金沢 一昨年の夏ぐらいだったと思います。当時、羽住監督は別作品の撮影中だったので、最初は自分とプロデューサーの2人でプロット作りをして、羽住監督とお会いして詳細を決めたあとは2ヶ月で一気に本を書き上げた感じですね。そして、群馬の山奥で2ヶ月の撮影合宿に入り、その後、撮影期間より長い地獄のCG合宿が半年以上……(笑)。そうそう、今回の群馬のロケ地、実は僕が推薦したんです。

─── おぉ! 群馬出身者として。

金沢 群馬のとある山奥に原作そっくりの校舎があるんです。もちろん、撮影するにあたっては撮影専用の校舎を別に建てたんですが、シーンによっては、もともとあった校舎を利用したりもしています。

─── 今回、学校がテーマというか作品の舞台になっています。金沢さん自身の学生時代の経験やエピソードが何かしら脚本のエッセンスになったりは?

金沢 基本的に原作に忠実に、と思って作っているので特にはないですよ。でも、思い出したことがひとつ。僕は高校時代、この作品の舞台である3年E組みたいなクラスで過ごしたんですよ。

─── エンドのE組のような? 

金沢 学校の中の落ちこぼれや問題児ばかりを集めたクラスが『暗殺教室』における3年E組。一方、僕の通っていた高校はラグビーに力を入れていたんですけど、まあそのラグビー部がヤンチャな奴らばっかりなんですよ。こいつらが分散してたら指導する側はたまらんから一つにまとめよう、とラグビー部ばっかりのクラスでき、なぜか自分もそこに加えられるという……サッカー部なのに(笑)。E組になる憂鬱さってああいうことかな、って思い出しましたね。

─── プライベートな話でいえば、金沢さん自身にお子さんが生まれたばかりだと思います。子を持つ親、という立場が今回のような学園ものを作るうえで影響したりはしましたか?

金沢 あまりないですね。でも振り返ると、以前(元AKB大堀恵との)結婚を発表したとき、ずっとオカマのドラマを書いていたんです。だから、新婚中はずっとオカマのことを考えて、子どもが生まれたら暗殺のことばかり考えてる。なんか、皮肉な仕事だなぁと(笑)。

─── でも、暗殺の話でもあり、教育の話でもあります。

金沢 そう! そこがこの作品の肝というか、難しい部分であり、面白い部分だと思います。やっぱり「暗殺〜」というタイトルで怖がられるじゃないですか。でも、原作を読んでいる方はご存じだと思うんですが、やっぱり教育の話なんですよね。教育スペクタクルというべきか。

─── 試写を見て、しっかりと「学園モノ」として描いているなと感じました。

金沢 学園モノだし、宇宙人的なSFモノでもあるし、アクション映画でもあるし。さらに言えば、青春もロマンスもサスペンスも笑いもある。普通、そういう要素満載を目指すと失敗しがちなんですけど、『暗殺教室』の場合はそこを目指していなかったのに結果として全部入ってしまった。それができたのは「教育」という軸がブレなかったからだと思うんです。確か、主演の山田君が言っていたのかな?「金八先生みたいだ」と。

─── 金八先生! 確かに。

金沢 だから、もし原作を知らずにこのタイトルだけで「ちょっとその映画、大丈夫?」と思った方がいたとしたら、金八先生みたいなエッセンスのある映画、と思ってもらうのがいいかもしれません。

─── 最後に、今後の金沢さんのお仕事の予定は?

金沢 まだ具体的に動いているものはないんですが、それこそ今月23日にこの映画のノベライズ版(『映画 暗殺教室 JUMP j BOOKS』)が出ます。映画とちょっとだけ違う部分もあったりしますので、映画を観たあとにその違いを楽しんでもらえれば嬉しいですね。

映画『暗殺教室』、3月21日(土・祝)から全国東宝系にてロードショー!!

(オグマナオト)