AKB48のメタフィクション。女ヤンキーたちが「てっぺん」を目指すドラマ「マジすか学園4」の過激
1月19日から放送開始した月曜深夜ドラマ「マジすか学園4」(日本テレビ系)。AKB48グループのアイドルたちが出演する学園ドラマだ。企画・原作は秋元康、演出は「女王の教室」「斉藤さん」の岩本仁志。
女ヤンキーばかりが集う馬路須加(まじすか)女学園、通称マジ女。この学園では日々ヤンキーたちが「てっぺん」を目指して競い合っている。そんなマジ女の最強軍団は、吹奏楽部・ラッパッパ。部長・ソルト(島崎遥香)をトップに、四天王のおたべ(横山由依)、バカモノ(川栄李奈)、ヨガ(入山杏奈)、マジック(木崎ゆりあ)が控えている。
そのほかにも、2年生のチーム火鍋、1年生のカミソリ&ゾンビなど、勢いと実力のあるヤンキーもいる、群雄割拠状態のマジ女。
一方、激尾古(げきおこ)高校看護科もマジ女に対抗する勢力を持ち始めていた。総長・アントニオ(山本彩)、副総長・こびー(渡辺美優紀)。ナース服を着たヤンキーだ。下にはツリシ(須田亜香里)、KY(谷真理佳)、ザコボス(松村香織)の3人。
内部のてっぺん争い、外部との抗争。ヤンキーたちがバチバチやっている中にやってきたのは、鹿児島からの転校生・さくら(宮脇咲良)。優等生的な外見とは裏腹に、彼女には相当な力があるようで……?
「マジすか学園」は、2010年、2011年、2012年と放送されたシリーズだ。メインになるキャラや設定、舞台は「1」「2」「3」でそれぞれ少しずつ異なる。
このドラマ、メタフィクション的な要素が大きい。過剰なヤンキードラマの「てっぺん争い」は、AKB48グループの中のてっぺん「センター」を目指して争い合うアイドルたちを表している。各キャラクターの設定や関係性は、現実のアイドルたちを一部反映している。
たとえば島崎遥香の「ソルト」は、握手会での塩対応が元ネタ。「ソルトはてっぺんには興味ないんですよ」という性格も「センターにはなりたくない」と常日頃発信している島崎に近い。
「マジすか学園4」は、原点の初代「マジすか学園」を強く意識して作られている。初代のマジ女の頂点は大島優子。そしてその優子と戦っててっぺんを獲ったのは転校生の前田敦子だった(ちなみに四天王は板野友美・柏木由紀・松井玲奈・小嶋陽菜、副部長は篠田麻里子)。
絶対的トップに挑む転校生──初代と「4」の構図は似ている。それを視聴者に意識させるように、前田と大島の名前は劇中でよく引き合いに出される。
「(今のマジ女は)前田さん優子さんの時代に比べると……」
「(ラッパッパは)昔ほどのまとまりはないというか、冷めてます」
マジ女とはAKB48グループのこと。外部から揶揄されているだろう言葉を、そっくりそのままアイドル自身に言わせている。えげつない!
また、初代ではライバル校は矢場久根(やばくね)女子商業高校。総長はあじゃ。つまり、AKB48グループのアイドルではなかった。それが今回は、姉妹グループNMB48・SKE48・HKT48のアイドルたちがライバル。もちろん少しでも出演枠を大きくしたいという事情はあるだろうが、「ライバルは外部」だった2010年から5年、「ライバルは姉妹グループ」となっている……と深読みすることもできる。
「マジすか学園」をきっかけにブレイクしたメンバーは多い。たとえば松井玲奈はぶっ飛んだキャラ・ゲキカラに抜擢されたのをきっかけに、人気・実力ともにグループ内の上位に上り詰めた。「マジすか学園」はグループの「今」を反映した作品だが、同時に「未来」を描くもの、「未来」をつくるものでもある。島崎遥香も宮脇咲良も、「今のトップ」ではなく、「将来のAKB48グループの柱になる」とされているメンバーだ。
戦うさくらを見たスキャンダル(指原莉乃)はこう呟く。
「宮脇咲良……ポスト前田敦子か」
もちろん、これは劇中のキャラクター設定。宮脇と前田のアイドル性というのはかなり違うように思えるので、「ポスト前田敦子」と称されるのは不思議な感じがする。でも、これを明言することで、それだけのメンバーに成長してほしい、成長してくれ! というメッセージを強く感じる。
AKB48グループを少しでも知っていれば、「マジすか学園」はこの上なく楽しいドラマだ。じゃあ、知らなければ楽しめないのか? そんなことはない。
このドラマは、ひたすら過剰だ。「ヤンキーがてっぺんを獲るために戦う」というお話はひじょうにベタだ。二次元っぽい設定だが、今どきアニメでも漫画でもベタすぎてなかなか出てこない。
かわいい女の子たちの真剣な演技と(中にはちょっと棒っぽい子もいる)、ベタすぎる展開とキザなセリフ回し、そしてあえてリアルではない茶番&演劇っぽい演出……これらが重なるとエンターテイメントになる。この辺り、前クールから放送している「実在性ミリオンアーサー」に似ている。
AKB48グループのアイドル、わかんないんだよなーという人でも、その過剰さ、やりすぎ感を楽しめるはずだ。
「マジすか学園4」は、今日深夜24時59分から2話が放送。ちなみにhuluで1週間先行配信されている。
「私の退屈は、止められない……」と虚無を抱えるソルト、めっちゃBLキャラっぽい(個人的感想です)。
(青柳美帆子)
女ヤンキーばかりが集う馬路須加(まじすか)女学園、通称マジ女。この学園では日々ヤンキーたちが「てっぺん」を目指して競い合っている。そんなマジ女の最強軍団は、吹奏楽部・ラッパッパ。部長・ソルト(島崎遥香)をトップに、四天王のおたべ(横山由依)、バカモノ(川栄李奈)、ヨガ(入山杏奈)、マジック(木崎ゆりあ)が控えている。
そのほかにも、2年生のチーム火鍋、1年生のカミソリ&ゾンビなど、勢いと実力のあるヤンキーもいる、群雄割拠状態のマジ女。
一方、激尾古(げきおこ)高校看護科もマジ女に対抗する勢力を持ち始めていた。総長・アントニオ(山本彩)、副総長・こびー(渡辺美優紀)。ナース服を着たヤンキーだ。下にはツリシ(須田亜香里)、KY(谷真理佳)、ザコボス(松村香織)の3人。
内部のてっぺん争い、外部との抗争。ヤンキーたちがバチバチやっている中にやってきたのは、鹿児島からの転校生・さくら(宮脇咲良)。優等生的な外見とは裏腹に、彼女には相当な力があるようで……?
このドラマ、メタフィクション的な要素が大きい。過剰なヤンキードラマの「てっぺん争い」は、AKB48グループの中のてっぺん「センター」を目指して争い合うアイドルたちを表している。各キャラクターの設定や関係性は、現実のアイドルたちを一部反映している。
たとえば島崎遥香の「ソルト」は、握手会での塩対応が元ネタ。「ソルトはてっぺんには興味ないんですよ」という性格も「センターにはなりたくない」と常日頃発信している島崎に近い。
「マジすか学園4」は、原点の初代「マジすか学園」を強く意識して作られている。初代のマジ女の頂点は大島優子。そしてその優子と戦っててっぺんを獲ったのは転校生の前田敦子だった(ちなみに四天王は板野友美・柏木由紀・松井玲奈・小嶋陽菜、副部長は篠田麻里子)。
絶対的トップに挑む転校生──初代と「4」の構図は似ている。それを視聴者に意識させるように、前田と大島の名前は劇中でよく引き合いに出される。
「(今のマジ女は)前田さん優子さんの時代に比べると……」
「(ラッパッパは)昔ほどのまとまりはないというか、冷めてます」
マジ女とはAKB48グループのこと。外部から揶揄されているだろう言葉を、そっくりそのままアイドル自身に言わせている。えげつない!
また、初代ではライバル校は矢場久根(やばくね)女子商業高校。総長はあじゃ。つまり、AKB48グループのアイドルではなかった。それが今回は、姉妹グループNMB48・SKE48・HKT48のアイドルたちがライバル。もちろん少しでも出演枠を大きくしたいという事情はあるだろうが、「ライバルは外部」だった2010年から5年、「ライバルは姉妹グループ」となっている……と深読みすることもできる。
「マジすか学園」をきっかけにブレイクしたメンバーは多い。たとえば松井玲奈はぶっ飛んだキャラ・ゲキカラに抜擢されたのをきっかけに、人気・実力ともにグループ内の上位に上り詰めた。「マジすか学園」はグループの「今」を反映した作品だが、同時に「未来」を描くもの、「未来」をつくるものでもある。島崎遥香も宮脇咲良も、「今のトップ」ではなく、「将来のAKB48グループの柱になる」とされているメンバーだ。
戦うさくらを見たスキャンダル(指原莉乃)はこう呟く。
「宮脇咲良……ポスト前田敦子か」
もちろん、これは劇中のキャラクター設定。宮脇と前田のアイドル性というのはかなり違うように思えるので、「ポスト前田敦子」と称されるのは不思議な感じがする。でも、これを明言することで、それだけのメンバーに成長してほしい、成長してくれ! というメッセージを強く感じる。
AKB48グループを少しでも知っていれば、「マジすか学園」はこの上なく楽しいドラマだ。じゃあ、知らなければ楽しめないのか? そんなことはない。
このドラマは、ひたすら過剰だ。「ヤンキーがてっぺんを獲るために戦う」というお話はひじょうにベタだ。二次元っぽい設定だが、今どきアニメでも漫画でもベタすぎてなかなか出てこない。
かわいい女の子たちの真剣な演技と(中にはちょっと棒っぽい子もいる)、ベタすぎる展開とキザなセリフ回し、そしてあえてリアルではない茶番&演劇っぽい演出……これらが重なるとエンターテイメントになる。この辺り、前クールから放送している「実在性ミリオンアーサー」に似ている。
AKB48グループのアイドル、わかんないんだよなーという人でも、その過剰さ、やりすぎ感を楽しめるはずだ。
「マジすか学園4」は、今日深夜24時59分から2話が放送。ちなみにhuluで1週間先行配信されている。
「私の退屈は、止められない……」と虚無を抱えるソルト、めっちゃBLキャラっぽい(個人的感想です)。
(青柳美帆子)