わがままな松陰、女々しい久坂、妻を放置プレーの伊之助。 それでも視聴率微増の謎「花燃ゆ」
1話、2話と、視聴率が低い低いと心配されていた大河ドラマ「花燃ゆ」(日曜8時〜)ですが、1月18日放送の3話「ついてない男」では持ち直して、2話の13.4%から15.8%になりました(関東地区 ビデオリサーチ調べ)。
これまでの大河としては高い数字ではないようですが、上がったことが正直意外でした。
なぜって、この回のメインキャラだった“ついてない男”こと久坂玄瑞(東出昌大)がかなり女々しく描かれ過ぎていて、脱藩じゃなくて脱落してしまいそうになった人が多いのではないかと危惧したものですから。
久坂玄瑞は、高杉晋作(高良健吾)と並び松下村塾の四天王と周囲から一目置かれ、のちの吉田松陰・寅次郎(伊勢谷友介)の妹にしてこのドラマの主人公・文(井上真央)の夫に。そして、松蔭の死後は、尊王攘夷派の先頭に立ちます。
妹を嫁に薦めるほど松陰に期待をかけられていた英才で(松陰って気に入った人に妹を嫁にやるのが好きなんですね)、1話の冒頭では、高杉と賢げに語り合っていましたが、本格的登場の今回は、その聡明さをほとんど見せません。まあ、一応、後の塾生仲間たちや文に、国を憂い、国を良くしたいと志を語りはしますが。でもねえ。
3話の久坂は、ポテンシャルはあるものの、それを生かせないもったいない男子でした。おみくじを引くたびに凶を出してしまい、そのせいなのか、1年のうちに、父、母、兄を亡くし、15歳にして天涯孤独の身になってしまい、自分は呪われていると思い込み、一歩先に進めないでいます。
そんな彼に文が手を差し伸べ、やる気にさせる。文に励まされて引いたおみくじが大吉で、その時、来ないかと思った黒船の汽笛が聴こえてきて、最後は「またね」「またな」と声を掛け合うというのも、大河ドラマのイメージからかなりかけ離れたちょっとロマンチックな展開。
文による「幕末男子の育て方」がいよいよはじまりました。でも、これでいいの? ちょっとはしゃいだ感じのキャッチコピーでありながら、幕末男子を育てるのは松陰先生かと思っていたのですけど、やっぱり育てるのは文なのですね。
「花燃ゆ」の男子はまだまだ成長の途中。
松陰こと寅次郎も、兄・梅太郎(原田泰造)に、やってることが5歳児のわがままのようだと叱責されて、教育されていますし・・・。
伊之助(大沢たかお)も妻・寿(優香)を放置プレーとか、よき夫としてもう少し育てたい感じです。この時代の男性は妻とラブラブなんてことはない無骨な人が多かったのかもしれず、寿のほうが教育されてないのかもしれないですが、それにしても、かっこいいイメージの男たちがことごとく頼りない。
それでも、2話より上がっての15.8%は、東出昌大の「ごちそうさん」人気の名残なのか、松陰と黒船の出会いが描かれるという期待か。いや、もしかしたら、伊之助の、妻より寅次郎が大切と思わせる素振りにBL好きが反応したのでしょうか。
いずれにしても、「あまちゃん」で朝ドラを見てなかった層が盛り上がったことに近い、従来大河を見てない浮動票が入るパターンで、視聴率多少低めでも安定を狙う作品なのかもしれません。
文が女性視聴者の気持ちの代弁者として、幕末を生きる男たちを見つめ、励ましていくのでしょう。
この構造は、やっぱり「花より男子」をなぞった感は否めませんが、単なる少女漫画的ドリームではないなと思うのは、文の洞察力の根拠らしきものが1話に見られたことです。耳が聴こえず、話すことのできない弟・敏三郎(森永悠希)と子供の頃から過ごしてきたことで、言葉がなくても相手の気持ちを感じとる能力が発達したのではないかと思わせました。
人物を書く上で、そういう細やかな目線は忘れずにいていただきたいです。
久坂の「ついてなさ」も後の彼の人生の伏線という説もありますね。
(木俣冬)
これまでの大河としては高い数字ではないようですが、上がったことが正直意外でした。
なぜって、この回のメインキャラだった“ついてない男”こと久坂玄瑞(東出昌大)がかなり女々しく描かれ過ぎていて、脱藩じゃなくて脱落してしまいそうになった人が多いのではないかと危惧したものですから。
妹を嫁に薦めるほど松陰に期待をかけられていた英才で(松陰って気に入った人に妹を嫁にやるのが好きなんですね)、1話の冒頭では、高杉と賢げに語り合っていましたが、本格的登場の今回は、その聡明さをほとんど見せません。まあ、一応、後の塾生仲間たちや文に、国を憂い、国を良くしたいと志を語りはしますが。でもねえ。
3話の久坂は、ポテンシャルはあるものの、それを生かせないもったいない男子でした。おみくじを引くたびに凶を出してしまい、そのせいなのか、1年のうちに、父、母、兄を亡くし、15歳にして天涯孤独の身になってしまい、自分は呪われていると思い込み、一歩先に進めないでいます。
そんな彼に文が手を差し伸べ、やる気にさせる。文に励まされて引いたおみくじが大吉で、その時、来ないかと思った黒船の汽笛が聴こえてきて、最後は「またね」「またな」と声を掛け合うというのも、大河ドラマのイメージからかなりかけ離れたちょっとロマンチックな展開。
文による「幕末男子の育て方」がいよいよはじまりました。でも、これでいいの? ちょっとはしゃいだ感じのキャッチコピーでありながら、幕末男子を育てるのは松陰先生かと思っていたのですけど、やっぱり育てるのは文なのですね。
「花燃ゆ」の男子はまだまだ成長の途中。
松陰こと寅次郎も、兄・梅太郎(原田泰造)に、やってることが5歳児のわがままのようだと叱責されて、教育されていますし・・・。
伊之助(大沢たかお)も妻・寿(優香)を放置プレーとか、よき夫としてもう少し育てたい感じです。この時代の男性は妻とラブラブなんてことはない無骨な人が多かったのかもしれず、寿のほうが教育されてないのかもしれないですが、それにしても、かっこいいイメージの男たちがことごとく頼りない。
それでも、2話より上がっての15.8%は、東出昌大の「ごちそうさん」人気の名残なのか、松陰と黒船の出会いが描かれるという期待か。いや、もしかしたら、伊之助の、妻より寅次郎が大切と思わせる素振りにBL好きが反応したのでしょうか。
いずれにしても、「あまちゃん」で朝ドラを見てなかった層が盛り上がったことに近い、従来大河を見てない浮動票が入るパターンで、視聴率多少低めでも安定を狙う作品なのかもしれません。
文が女性視聴者の気持ちの代弁者として、幕末を生きる男たちを見つめ、励ましていくのでしょう。
この構造は、やっぱり「花より男子」をなぞった感は否めませんが、単なる少女漫画的ドリームではないなと思うのは、文の洞察力の根拠らしきものが1話に見られたことです。耳が聴こえず、話すことのできない弟・敏三郎(森永悠希)と子供の頃から過ごしてきたことで、言葉がなくても相手の気持ちを感じとる能力が発達したのではないかと思わせました。
人物を書く上で、そういう細やかな目線は忘れずにいていただきたいです。
久坂の「ついてなさ」も後の彼の人生の伏線という説もありますね。
(木俣冬)