きれいなジャイアンが本物のジャイアンを否定する「Fライフ」3号
「ドラえもんと藤子・F・不二雄が大好きな人の本」というキャッチフレーズが眩しい『Fライフ』。
『ドラえもん』などのカラー原画やF先生にまつわる貴重な写真などの豊富なビジュアルに加えて、企画力、取材力、編集力が遺憾なく発揮された誌面は、Fっ子ならマストバイ。
発売されたばかりの3号を手にとってみて、まず驚いたのは分厚さだ。前号までは144ページだったのが、今回は180ページもある。ズシッとした手ごたえが嬉しい。
今号の大特集は「藤子・F・不二雄トリビュート文化祭!!」。
漫画家、作家らバラエティに富んだ顔ぶれの20人がF先生の作品を題材に、思い思いの作品をつくりあげている。
ラインナップは以下のとおり。
浅野いにお/天久聖一/石黒正数/今井哲也/大塚いちお/雲田はるこ/けらえいこ
小玉ユキ/高橋聖一/とみこはん/とよ田みのる/中田永一/長嶋有/名久井直子
FSc/文月悠光/前川さなえ/むぎわらしんたろう/モリタイシ/吉崎観音
『坂道のアポロン』の小玉ユキは、『キテレツ大百科』の後日譚「キテレツな彼のこと」で高校生になった英一とみよちゃんの微妙な関係を描く。鍵を握るのは、故障して動かなくなってしまったコロ助だ。
『それでも町は廻っている』の石黒正数の作品は、エスパー魔美が謎の事件を解決するショートストーリー「音速の箱」。ご近所を騒がせる謎の箱の正体は、Fっ子ならみんなが知っている意外なアレだった。
『タケヲちゃん物怪録』のとよ田みのるは、自作に登場する妖怪を主役に据えた「にゃんポコ」。『ポコニャン』と『パラレル同窓会』のクロスオーバーというひねりの効かせぶりだ。
鬼才・天久聖一が描くのは、きこりの泉から現れた「きれいなジャイアン」が街の人気者になり(テノールのコンサートを開いたりする)、本物のジャイアンが消えてしまった世界を描く短編小説「きれいなジャイアン物語」。ダーティーなジャイアンの存在を否定し、冷静に自分の存在を主張する、澄んだ瞳のきれいなジャイアンが怖い。
藤子プロのチーフアシスタントを務め、F先生の後をついで大長編『ドラえもん』を描いていたむぎわらしんたろうは、復活『ドラベース』でお祭りに花を添える。
試合は江戸川ドラーズとジャイアンズの夢の対戦だが、『ドラベース』を知らない世代の筆者としては、のび太にショートを任せるジャイアンの謎采配と、特別参加と思しき出木杉のユーティリティぶりがやけに印象に残った。安雄(帽子)とはる夫(小デブ)の存在感もうれしい。
『ケロロ軍曹』の吉崎観音による「時空の島にて」は、イースター島の冒険を終えたケロロ軍曹と冬樹が、時空の歪みによってタイムスリップし、取材旅行中の藤子不二雄と出会うお話。
観光地化され、謎が残っていないイースター島にガッカリしていた藤子先生(旅行時はまだFを名乗っていなかったという小ネタも挟んでいる)が、ケロロという謎の生物と21世紀からやってきた少年と出会って目の輝きを取り戻す。
もちろん、異世界からやってきた存在が一般家庭に居候するという『ケロロ軍曹』そのものが『ドラえもん』をはじめとする藤子F作品へのオマージュだったりするわけで、何重ものスパイラル構造が楽しい。
とまぁ、F先生の作品を知っているほど味わいが深くなる、大変楽しい1冊なのだが、それに加えてエキレビ!でおなじみ近藤正高さんが寄稿した長編エッセイも読み応えアリ。というか、うらやましいにも程がある! あと、藤子・F・不二雄ミュージアムの新グッズ、のび太とおばあちゃんの思い出のくまちゃんぬいぐるみが欲しい!
(大山くまお)
『ドラえもん』などのカラー原画やF先生にまつわる貴重な写真などの豊富なビジュアルに加えて、企画力、取材力、編集力が遺憾なく発揮された誌面は、Fっ子ならマストバイ。
発売されたばかりの3号を手にとってみて、まず驚いたのは分厚さだ。前号までは144ページだったのが、今回は180ページもある。ズシッとした手ごたえが嬉しい。
漫画家、作家らバラエティに富んだ顔ぶれの20人がF先生の作品を題材に、思い思いの作品をつくりあげている。
ラインナップは以下のとおり。
浅野いにお/天久聖一/石黒正数/今井哲也/大塚いちお/雲田はるこ/けらえいこ
小玉ユキ/高橋聖一/とみこはん/とよ田みのる/中田永一/長嶋有/名久井直子
FSc/文月悠光/前川さなえ/むぎわらしんたろう/モリタイシ/吉崎観音
『坂道のアポロン』の小玉ユキは、『キテレツ大百科』の後日譚「キテレツな彼のこと」で高校生になった英一とみよちゃんの微妙な関係を描く。鍵を握るのは、故障して動かなくなってしまったコロ助だ。
『それでも町は廻っている』の石黒正数の作品は、エスパー魔美が謎の事件を解決するショートストーリー「音速の箱」。ご近所を騒がせる謎の箱の正体は、Fっ子ならみんなが知っている意外なアレだった。
『タケヲちゃん物怪録』のとよ田みのるは、自作に登場する妖怪を主役に据えた「にゃんポコ」。『ポコニャン』と『パラレル同窓会』のクロスオーバーというひねりの効かせぶりだ。
鬼才・天久聖一が描くのは、きこりの泉から現れた「きれいなジャイアン」が街の人気者になり(テノールのコンサートを開いたりする)、本物のジャイアンが消えてしまった世界を描く短編小説「きれいなジャイアン物語」。ダーティーなジャイアンの存在を否定し、冷静に自分の存在を主張する、澄んだ瞳のきれいなジャイアンが怖い。
藤子プロのチーフアシスタントを務め、F先生の後をついで大長編『ドラえもん』を描いていたむぎわらしんたろうは、復活『ドラベース』でお祭りに花を添える。
試合は江戸川ドラーズとジャイアンズの夢の対戦だが、『ドラベース』を知らない世代の筆者としては、のび太にショートを任せるジャイアンの謎采配と、特別参加と思しき出木杉のユーティリティぶりがやけに印象に残った。安雄(帽子)とはる夫(小デブ)の存在感もうれしい。
『ケロロ軍曹』の吉崎観音による「時空の島にて」は、イースター島の冒険を終えたケロロ軍曹と冬樹が、時空の歪みによってタイムスリップし、取材旅行中の藤子不二雄と出会うお話。
観光地化され、謎が残っていないイースター島にガッカリしていた藤子先生(旅行時はまだFを名乗っていなかったという小ネタも挟んでいる)が、ケロロという謎の生物と21世紀からやってきた少年と出会って目の輝きを取り戻す。
もちろん、異世界からやってきた存在が一般家庭に居候するという『ケロロ軍曹』そのものが『ドラえもん』をはじめとする藤子F作品へのオマージュだったりするわけで、何重ものスパイラル構造が楽しい。
とまぁ、F先生の作品を知っているほど味わいが深くなる、大変楽しい1冊なのだが、それに加えてエキレビ!でおなじみ近藤正高さんが寄稿した長編エッセイも読み応えアリ。というか、うらやましいにも程がある! あと、藤子・F・不二雄ミュージアムの新グッズ、のび太とおばあちゃんの思い出のくまちゃんぬいぐるみが欲しい!
(大山くまお)