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「依存症の方が『自死』に至ることを防ぐためには、本人や周囲が依存に気づいて、適切な治療をすることが重要です」。東京都内で11月22日に開かれた「依存症による自死問題」を考えるシンポジウム。埼玉のクリニックで、アルコール依存症などの患者と向き合う臨床心理士の河西有奈さんは、このように語った。

「たとえば、アルコール依存症の場合、酒に酔っている間は、日ごろの嫌なことや苦痛を忘れられます。

しかし、そうやって陶酔感やリラックスを得られる反面、心身の健康や人間関係、仕事、お金など、様々なものを失ってしまいます。

そして、酔いからさめて、自分が失ったものを自覚したときに感じる絶望感や孤独感、罪悪感が、『自死』の引き金になることが少なくないのです」

何かに強く依存し、陶酔している精神状態から離れて、ふと我に返る瞬間が危ないわけだ。しかし依存症の治療は、一筋縄ではいかない。なぜなら、「その人が依存症であり続けるのは、その人にとっての意味や必要性があるから」だと、河西さんは指摘する。

●店員との人間関係を求める「買い物依存症

また、ひとくちに依存症といっても、様々な種類がある。たとえば「買い物依存症」も、放置しておくと危機的な状況に追い込まれるケースがあるという。

河西さんは、買い物依存症の事例について、次のように話した。

「私は宝石依存症の人を診療したことがありますが、そういう人たちは単に『物欲を満たすため』に宝石を買っているわけではありません。むしろ、買ったのに開封すらしていないケースもあります。

そういった人たちが求めているのは、店員との人間関係です。宝石を買うと、店員は優しく接してくれて自分の話もよく聞いてくれるので、孤独感をまぎらわすことができます。『店員と真の友達になれた!』と錯覚する人もいます。

このように店員との人間関係にしがみつくために買い物をして、いつの間にか借金がふくれあがっているというケースは珍しくありません」

河西さんは「依存症を治療し、自死を予防するためには、依存症の背景にある事情を知ることが大切です。薬を処方すれば依存症が治るとは限りません」と指摘。そのためには「本人に『将来、どうなりたいか?』をヒアリングしたうえで、心理教育や自助グループへの参加を促すことが求められます」と、話していた。

(弁護士ドットコムニュース)