好守に安定感示した東海大菅生が、法政大高の勢いを止める

初回に先制タイムリーを放った法政大高・石田倫太郎

 昨年から、秋季東京都大会はベスト4以上では神宮球場を使用することとなった。しかし、日程的には早慶戦がある関係上、準々決勝から2週間開くということになる。この、時間をどう生かすのかということも、この時期の戦い方の一つのポイントにもなっていきそうだ。

 先の準々決勝(試合レポート)で、名門早稲田実業に対して延長戦の末、サヨナラ3ランで劇的勝利を果たした法政大高。その勢いで、そのまま準決勝も戦いたいところであった。

 これに対して、東海大菅生は國學院久我山(試合レポート)、帝京(試合レポート)といったところを下して、堂々の進出である。その東海大菅生が、法政大高の勢いを止められるかどうかが、ポイントとなっていた。

 法政大高は初回、先頭の長哲平君が粘って四球で出塁すると、バントで送り続く石田倫太郎君が中前打して先制点を挙げた。ここまでの勢いは継続されているぞ、という雰囲気だった。さらに、失策などもあって、二死二三塁まで攻めたが、そこは東海大菅生の勝俣 翔貴君が踏ん張った。

 そしてその裏、東海大菅生は先頭の澤田翔人君が中前打で出ると、バントで進み、四球後4番江藤勇治君が中前打してすぐに同点とした。ただ、さらに、一死一二塁というところで外野飛球併殺で法政大高も凌いだ。こうして、初回の攻防はほぼイーブンで終えた。

尻上がりに調子を上げていった東海大菅生エースの勝俣翔貴

 次の1点がどういう形で入るのかということで、試合に影響を与えるだろうと思われたが、3回に東海大菅生が奪った。この回、一死から澤田君が中前打すると内野ゴロで二死二塁として、勝俣君が一二塁間をゴロで破って東海大菅生が突き放した。

 このリードを東海大菅生の勝俣君が守っていくのだが、立ち上がりの不安から、投げ込んでいくうちにすっかり自分のリズムを取り戻していた。元々、ポンポンといいテンポで投げ込んでくるタイプなのだが、自分のバットでリードしたということもあって、気分良く投げられていたのではないだろうか。6回から8回にかけては、5者連続三振を奪うなど、尻上がりに調子を上げていた。

 若林弘泰監督も、「立ち上がりはちょっと意識しすぎて力んだところもあったのでしょうが、メンタルの強さも見せてくれて後半はいい投球だったと思います。私としても、『丁寧にいけ』ということくらいしか言わなかったですよ」と、勝俣君の投球を分析していた。

 東海大菅生は8回にも失策と四球の走者を生かして、無安打で2点を追加して試合を楽にした。勝俣君は9回の守りも3人でピシャリと抑えて、完全に法政大高の勢いを止めた。

 久しぶりの4強進出でスタンドも大いに盛り上がっていた法政大高だったが、東海大菅生の前に一歩及ばなかった。それでも、小松君は135キロ前後のストレートと、タテ系の変化球が鋭く、カーブとスライダーと時にチェンジアップも交えて、投球を工夫していた。このあたりは、細田君とのバッテリー呼吸もいいものがあったのであろう。敗れはしたものの、この日も自分の投球は出来たのではないだろうか。

 秋月文隆監督は、「この大会は一戦一戦、貴重な経験になったことは確かです。ここまで来たことで多くのOBの方や関係者もいっぱい来ていただきました。それに応えきれなかったことは残念です。それでも、ここまで来られたということは、よく頑張ったといってもいいと思います。ただ、今日の試合展開としては、初回にもう少し(点を)取っておきたかった…、ですね。この経験を生かして先へつなぎたいと思います」と、ベスト4進出に選手たちをねぎらいつつも、次へ向けての気持ちも整理していた。

(文=手束 仁 写真=松倉 雄太)