宮藤官九郎ドラマ「ごめんね青春!」はなぜ苦戦しているのか。よけいなお世話だが9つくらい考えてみた
あの朝ドラ「あまちゃん」の宮藤官九郎が手がける連ドラ、日曜劇場「ごめんね青春!」(TBS日曜21時〜)の視聴率が、10月12日放送の初回10.1%、19日放送の第2回は7.7%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)と苦戦している。
「これは99年の歴史と伝統を誇る仏教高・我がトンコーと、カトリックの名門三女こと三島女学園の合併統合、つまり男女共学になるまでの半年間の物語です。31歳独身です。と同時に、私こと原平助31歳独身が、自分の青春におとしまえをつけ、青春を卒業するまでの物語です。31歳独身です」
と、最初にわかりやすく物語のアウトラインを説明する親切さで、その物語もとっつきやすいことこの上ない。なのになぜ?
第1話(10月12日)のしょっぱなは、あの「あまちゃん」の名場面・灯台の白いSTOP文字を越えて、海に飛び込む場面のように、校門に引かれた白い線を、主人公・原平助31歳独身(錦戸亮)が飛び越える場面が盛り込まれる気合いの入れようだった。
さらに、視聴者の大好物「未解決事件」を取り入れ、主人公はジャニーズで、メインの女性キャラ(満島ひかり、森川葵、黒島結菜、波瑠など)はキュートなショートカット、流行の壁ドン! まで(錦戸と永山絢斗の男同士だけど。正確には黒板ドンだけど)あるサービス、サービス。
テッパンの地方都市もので、電車も出てくるし、ご当地グルメ(三島コロッケ)も用意されていた。なのになぜ?
当然ながら、クドカン節は初回から全開。「すき間ない」密度の濃い内容だ。「あんたは鑑識?」と、歴代携帯のジップロック保存なんて時代を表していて最高だった。
2話も衰えることなく「エア彼氏」「意味なく私の言葉尻をリピートしないで、一行もったいない」「一行もったいないですか」「ほら、言ったそばから」、「なりすましSNS」、「ろくでなしブルース」等々、全速力。
そんなに頑張ってるのに、なのに、なぜ結果につながらないのか? あの「あまちゃん」人気は何だったのか? とドラマファン、宮藤官九郎ファンを大いに落胆させている。
その答えは、かの名台詞にある。
あれだ。「わかるやつだけわかればいい」だ。
あの「あまちゃん」の名台詞がみんな大好きだったではないか。
そう、「わかるやつだけわかる」ドラマこそが宮藤官九郎のドラマなのだから、むしろ、宮藤のドラマが「半沢直樹」にならなかったことを喜ぶべきではないだろうか。
そもそも「あまちゃん」も、朝ドラ視聴が習慣化した層に、今まで朝ドラを見ていなかった宮藤官九郎作品好きな層がプラスされて、新たな視聴者を開拓したと言われていたわけで、結局、宮藤官九郎ドラマファンが、20%超えたのではなく、それはたいてい10%くらいなのではないのか。
でも、それくらいの揺るがないファンがいることは強い。同局の「SPEC」の成功などでも実証されていることだ。
朝ドラで国民的作家の一員になったといっても過言ではない宮藤官九郎が、あえて、世の中の10%くらいの人たちの楽しみを死守してくれたのだ。素敵じゃないか。
それでは、私たちの好きな宮藤官九郎。「ごめんね青春!」の1、2話分を合併レビュー。ここが好きだけど、人によってはここがキライなのかも をいくつかあげてみます。
その1 主人公がこじらせ男子
こじらせ女子のドラマ(「きょうは会社休みます。」)が高視聴率なのだから、こじらせ男子のドラマだって高視聴率でいいはず。が、こじらせの原因が失恋だけならまだしも、罪を犯しているっていうのは、ちょっとヘヴィーなのかもしれません。
意味深に匂わせた未解決事件。これは、主人公・原平助が高校時代に三女の礼拝堂を燃やしてしまったという悲劇。
しかも、それによって、トンコーと三女の関係は険悪になり、しかも三女は礼拝堂再建(とプール建設)のために借金苦に陥ってしまった。
この事件のことを、平助は誰にも言えず、ずっと引きずっている。
基本、笑い満載のドラマだが、ときおり、この過去が、平助に影を落とす。それに付随する恋愛の痛みと合わせて、錦戸亮のナイーブな演技が最大限に発揮されてとてもいい。うるうるナミダ目の錦戸亮はナイーブ演技王だと私は思っている。
その2 お母さんが菩薩
主人公の部屋に鎮座ましましている観音菩薩が、ナレーション(進行)を担当、しかも、それは、亡くなった母親みゆき(森下愛子)。
お母さんが菩薩のような人ならいいけど、菩薩そのものだと、ついていけない人も多いのだろうか。
亡くなった母と息子の愛情がさりげなく描かれていて、いいのに。
1話の、母と話しながら寝ちゃったフリする平助、良かったと思う。
その3 えなりかずきが柄シャツ
えなりかずきは、主人公の兄役。エロい嫁をもらっている設定で、かつ、ちゃらい服装をしている。大変、すばらしい意外性だが、はげしい違和感に受け入れることを苦悩する人もいるのかもしれない。
その4 漫然としている
宮藤官九郎が、公式サイトで、「初の学園ドラマということで、自分に課したテーマは『いじめも体罰も学級崩壊もなく、ただ漫然と1クールを描き切る』ことです」と宣言している。
それよりも、いじめや体罰や学級崩壊があったほうがいいのだろうか。
もっとも、漫然と言っているわりには、青春の傷は深いし、男女の確執もけっこう深いし、校則や宗教的な戒律からの解放みたいなこともさりげなく語られているのだが。
その5 堂々とダジャレ
原平助 なまえをひっくり返して「助平」なんて呼ばれていると自己紹介。
トンコーのゆずる(重岡大毅)とつきあっている三女の阿部あまりは、アベマリアのもじり。「ありのままのあまりん」なんていう台詞も。
「三女に参上」とか。
たわいないものとして笑い流せばいいのだが、だじゃれがキライな人ってヒステリックにキライますからねえ。三女の女子みたいに潔癖だってことなんだろうか。
その6 クイズなのかドラマなのか
番組の終わりに視聴者にプレゼントが当たるクイズがつくものはあるが、この番組、ドラマの中で、クイズ王キャラを出し、クイズをストーリーに盛り込み、データ放送の視聴者参加クイズと連動させている。
大変合理的だが、中には、ドラマなのかクイズなのかはっきりさせてほしい人もいるのかも。
その7 エロネタが多い
錦戸くんと、兄嫁が一緒のお風呂に入ってるシーンや、「おれの慈悲深さは仏超えたぜ」という名台詞を語った僧侶であるお父さん(風間杜夫)が、五反田でデリヘル呼んでいるとか、日曜9時に、いいのか。
錦戸くんが、悩んだ挙げ句、ブラを「へいへいへい、コレ誰の〜」と振り回し、
その判断が間違いで、ひんしゅくを買うところも大変よかったが、実際でも、ひんしゅくを買ってしまったのか。
その8 恋愛の夢が壊れる
第1話では「今は誰とも付き合えない」という女子と付き合える可能性は何パーセントか、という問いの答えは「0%」だった。
「彼氏はいないけどお前とは付き合いたくない。これが本音です。嫌いな男にすら嫌われたくないからです」と主張する平助。
「誰とも付き合わないと言った女が誰とも付き合わないことはない」と、過去の悲しい恋の体験から力説。
宮藤官九郎は、「今は誰とも付き合えない」という言葉にすがる恋愛下手の人たちの思いを粉砕する。
第2話では、恋愛に溺れた男が口にする常套句「お前しか見えない」こういうふうに言われたらどう? という実験。実際、お前しか見えない状態になるまで、かなり接近した場合、ぼんやりしか見えない。つまり「お前しか見えない=お前も見えてない」ことを実証し、宮藤官九郎は、恋愛ドラマのキュン台詞をも粉砕した。
なんて痛快なのだろう。でも、しょんぼりする人もいるの・・・かな???
その9 ガールズバーじゃない
お父さんの行きつけのガールズバーが、どう見てもガールズバーじゃないじゃんと思ったら、そういう名前のスナックだった。
こういうどうでもいい(いい意味で)外しが宮藤ドラマの楽しみのひとつ。
男子校と女子校の合併を描いて、恋愛が苦手な若者たちへの恋愛指南して少子化対策か?と思ったが、むしろそういうことを茶化している感じもする。
満島ひかり演じる蜂谷りさと、波瑠演じるその姉・祐子が最初同一人物なんじゃないかと疑ったが、そんなことはないのかな。
平助に勉強に集中したいから誰ともつきあわないと言いながら、平助の親友・サトシとつきあうという残酷なことをして、行方をくらませた祐子。サトシは、2話で地元に舞い戻ってきたが、祐子はどこに?
また、ラジオのDJカバさんが、トンコー校長先生役の生瀬勝久の声なの
には意味があるのか?
気になることがいっぱいの未解決ドラマ「ごめんね青春!」10月26日第3話放送!(木俣冬)
「これは99年の歴史と伝統を誇る仏教高・我がトンコーと、カトリックの名門三女こと三島女学園の合併統合、つまり男女共学になるまでの半年間の物語です。31歳独身です。と同時に、私こと原平助31歳独身が、自分の青春におとしまえをつけ、青春を卒業するまでの物語です。31歳独身です」
と、最初にわかりやすく物語のアウトラインを説明する親切さで、その物語もとっつきやすいことこの上ない。なのになぜ?
さらに、視聴者の大好物「未解決事件」を取り入れ、主人公はジャニーズで、メインの女性キャラ(満島ひかり、森川葵、黒島結菜、波瑠など)はキュートなショートカット、流行の壁ドン! まで(錦戸と永山絢斗の男同士だけど。正確には黒板ドンだけど)あるサービス、サービス。
テッパンの地方都市もので、電車も出てくるし、ご当地グルメ(三島コロッケ)も用意されていた。なのになぜ?
当然ながら、クドカン節は初回から全開。「すき間ない」密度の濃い内容だ。「あんたは鑑識?」と、歴代携帯のジップロック保存なんて時代を表していて最高だった。
2話も衰えることなく「エア彼氏」「意味なく私の言葉尻をリピートしないで、一行もったいない」「一行もったいないですか」「ほら、言ったそばから」、「なりすましSNS」、「ろくでなしブルース」等々、全速力。
そんなに頑張ってるのに、なのに、なぜ結果につながらないのか? あの「あまちゃん」人気は何だったのか? とドラマファン、宮藤官九郎ファンを大いに落胆させている。
その答えは、かの名台詞にある。
あれだ。「わかるやつだけわかればいい」だ。
あの「あまちゃん」の名台詞がみんな大好きだったではないか。
そう、「わかるやつだけわかる」ドラマこそが宮藤官九郎のドラマなのだから、むしろ、宮藤のドラマが「半沢直樹」にならなかったことを喜ぶべきではないだろうか。
そもそも「あまちゃん」も、朝ドラ視聴が習慣化した層に、今まで朝ドラを見ていなかった宮藤官九郎作品好きな層がプラスされて、新たな視聴者を開拓したと言われていたわけで、結局、宮藤官九郎ドラマファンが、20%超えたのではなく、それはたいてい10%くらいなのではないのか。
でも、それくらいの揺るがないファンがいることは強い。同局の「SPEC」の成功などでも実証されていることだ。
朝ドラで国民的作家の一員になったといっても過言ではない宮藤官九郎が、あえて、世の中の10%くらいの人たちの楽しみを死守してくれたのだ。素敵じゃないか。
それでは、私たちの好きな宮藤官九郎。「ごめんね青春!」の1、2話分を合併レビュー。ここが好きだけど、人によってはここがキライなのかも をいくつかあげてみます。
その1 主人公がこじらせ男子
こじらせ女子のドラマ(「きょうは会社休みます。」)が高視聴率なのだから、こじらせ男子のドラマだって高視聴率でいいはず。が、こじらせの原因が失恋だけならまだしも、罪を犯しているっていうのは、ちょっとヘヴィーなのかもしれません。
意味深に匂わせた未解決事件。これは、主人公・原平助が高校時代に三女の礼拝堂を燃やしてしまったという悲劇。
しかも、それによって、トンコーと三女の関係は険悪になり、しかも三女は礼拝堂再建(とプール建設)のために借金苦に陥ってしまった。
この事件のことを、平助は誰にも言えず、ずっと引きずっている。
基本、笑い満載のドラマだが、ときおり、この過去が、平助に影を落とす。それに付随する恋愛の痛みと合わせて、錦戸亮のナイーブな演技が最大限に発揮されてとてもいい。うるうるナミダ目の錦戸亮はナイーブ演技王だと私は思っている。
その2 お母さんが菩薩
主人公の部屋に鎮座ましましている観音菩薩が、ナレーション(進行)を担当、しかも、それは、亡くなった母親みゆき(森下愛子)。
お母さんが菩薩のような人ならいいけど、菩薩そのものだと、ついていけない人も多いのだろうか。
亡くなった母と息子の愛情がさりげなく描かれていて、いいのに。
1話の、母と話しながら寝ちゃったフリする平助、良かったと思う。
その3 えなりかずきが柄シャツ
えなりかずきは、主人公の兄役。エロい嫁をもらっている設定で、かつ、ちゃらい服装をしている。大変、すばらしい意外性だが、はげしい違和感に受け入れることを苦悩する人もいるのかもしれない。
その4 漫然としている
宮藤官九郎が、公式サイトで、「初の学園ドラマということで、自分に課したテーマは『いじめも体罰も学級崩壊もなく、ただ漫然と1クールを描き切る』ことです」と宣言している。
それよりも、いじめや体罰や学級崩壊があったほうがいいのだろうか。
もっとも、漫然と言っているわりには、青春の傷は深いし、男女の確執もけっこう深いし、校則や宗教的な戒律からの解放みたいなこともさりげなく語られているのだが。
その5 堂々とダジャレ
原平助 なまえをひっくり返して「助平」なんて呼ばれていると自己紹介。
トンコーのゆずる(重岡大毅)とつきあっている三女の阿部あまりは、アベマリアのもじり。「ありのままのあまりん」なんていう台詞も。
「三女に参上」とか。
たわいないものとして笑い流せばいいのだが、だじゃれがキライな人ってヒステリックにキライますからねえ。三女の女子みたいに潔癖だってことなんだろうか。
その6 クイズなのかドラマなのか
番組の終わりに視聴者にプレゼントが当たるクイズがつくものはあるが、この番組、ドラマの中で、クイズ王キャラを出し、クイズをストーリーに盛り込み、データ放送の視聴者参加クイズと連動させている。
大変合理的だが、中には、ドラマなのかクイズなのかはっきりさせてほしい人もいるのかも。
その7 エロネタが多い
錦戸くんと、兄嫁が一緒のお風呂に入ってるシーンや、「おれの慈悲深さは仏超えたぜ」という名台詞を語った僧侶であるお父さん(風間杜夫)が、五反田でデリヘル呼んでいるとか、日曜9時に、いいのか。
錦戸くんが、悩んだ挙げ句、ブラを「へいへいへい、コレ誰の〜」と振り回し、
その判断が間違いで、ひんしゅくを買うところも大変よかったが、実際でも、ひんしゅくを買ってしまったのか。
その8 恋愛の夢が壊れる
第1話では「今は誰とも付き合えない」という女子と付き合える可能性は何パーセントか、という問いの答えは「0%」だった。
「彼氏はいないけどお前とは付き合いたくない。これが本音です。嫌いな男にすら嫌われたくないからです」と主張する平助。
「誰とも付き合わないと言った女が誰とも付き合わないことはない」と、過去の悲しい恋の体験から力説。
宮藤官九郎は、「今は誰とも付き合えない」という言葉にすがる恋愛下手の人たちの思いを粉砕する。
第2話では、恋愛に溺れた男が口にする常套句「お前しか見えない」こういうふうに言われたらどう? という実験。実際、お前しか見えない状態になるまで、かなり接近した場合、ぼんやりしか見えない。つまり「お前しか見えない=お前も見えてない」ことを実証し、宮藤官九郎は、恋愛ドラマのキュン台詞をも粉砕した。
なんて痛快なのだろう。でも、しょんぼりする人もいるの・・・かな???
その9 ガールズバーじゃない
お父さんの行きつけのガールズバーが、どう見てもガールズバーじゃないじゃんと思ったら、そういう名前のスナックだった。
こういうどうでもいい(いい意味で)外しが宮藤ドラマの楽しみのひとつ。
男子校と女子校の合併を描いて、恋愛が苦手な若者たちへの恋愛指南して少子化対策か?と思ったが、むしろそういうことを茶化している感じもする。
満島ひかり演じる蜂谷りさと、波瑠演じるその姉・祐子が最初同一人物なんじゃないかと疑ったが、そんなことはないのかな。
平助に勉強に集中したいから誰ともつきあわないと言いながら、平助の親友・サトシとつきあうという残酷なことをして、行方をくらませた祐子。サトシは、2話で地元に舞い戻ってきたが、祐子はどこに?
また、ラジオのDJカバさんが、トンコー校長先生役の生瀬勝久の声なの
には意味があるのか?
気になることがいっぱいの未解決ドラマ「ごめんね青春!」10月26日第3話放送!(木俣冬)