明日からCS!カープ球団史『野球次郎〜広島東洋カープ大事典〜』で予習しよう
プロ野球はいよいよ明日11日(土)から、クライマックスシリーズ(以下、CS)がスタートする。ファーストステージは、パ・リーグが2位オリックス対3位日本ハム、そしてセ・リーグが2位阪神対3位広島という構図だ。
セ・リーグの対戦は、甲子園球場での開催という点も含めて昨年のCSとまったく同じカード。その昨年の対戦では、阪神のホームグラウンドにもかかわらず、応援席はカープの赤い色の方が勝っていた印象が強い。その赤い応援の勢いも借りてか昨年はカープが圧勝した。果たして今季はどうなるか?
今、あのときの甲子園のように、赤く染まっている場所があるのをご存じだろうか。その場所とは書店のスポーツコーナー。各出版社がこぞって「カープ特集本」を刊行しているのだ。『週刊ベースボール』にいたっては今年だけで4回も「カープ特集」を組んでいる。
玉石混淆のカープ関連本の中、オススメしたいのが『野球次郎〜広島東洋カープ大事典〜』。あのマニアック野球雑誌『野球太郎』による特別編集本だ。
その他の多くのカープ本が「今」を特集しているのに対して、『野球次郎』では1950年の球団創設から今日までの64年間の球団史を一気に振り返る内容になっている。負け続けてきた歴史があるからこそ、今日のチームの隆盛と「カープブーム」が起きている、と考えると、やはり過去を学ぶことの重要性は大きい。
本書ではカープの球団史を、球団創設の1950〜74年の「創成期」、悲願の初優勝からはじまる1975〜91年の「黄金期」、15年連続でBクラスに沈んだ時代を中心とする1992〜2012年の「暗黒期」、初のCS進出を達成した2013〜の「脱・暗黒期」の4つのピリオドに分けて、それぞれの期間に活躍した選手や印象的なエピソードを振り返っていく。
普通、こういった球団史本は、歴史の頭から振り返っていきそうなものなのに、いきなり「暗黒期」から始まる当たりが、野球次郎のなんともいやらしくてニクい編集方針といえる。
98年から始まった15年連続Bクラスという長いトンネル。この「暗黒期」の原因としてよく語られるのが、1993年から始まったFA制度による主力の流出だ。本書ではこのFA流出に加えて、もうひとつ要因があるのでは? と考察する。
その要因とは、同時期に若い有望選手が複数現れたこと。一見、喜ばしいことのはずが、野村謙二郎、江藤智、金本知憲らがほぼ同時期に頭角を現し、レギュラーが固定されたことでチームの世代が「空洞化」。結果、彼らが衰えたり移籍した途端にチーム力がガクンと落ちてしまった、というのは、なるほどうなずける。
本書ではこうした、各年代の強さや弱さ、人気の要因がつぶさに考察されているので非常に読み応えがある。
また、第5章「カープ重要トピックス」では、球場、他球団も含めた広島出身選手、助っ人外国人、応援、オーナー、樽募金などの読み物も充実しているのが嬉しい。甲子園名物の「ジェット風船応援」も、野球の応援では欠かせない「コンバットマーチ」や「トランペット応援」、そして「ウェーブ」もみんなカープ発祥だった! なんてうんちくも盛りだくさんだ。
そして本書の豪華特典ともいうべきなのが、巻末に納められた特別掲載『江夏の21球』だ。プロ野球のポストシーズンになるとなぜか読みたくなるスポーツ・ノンフィクションの古典は、もしまだ読んだことがない、という人がいればこの機会にぜひとも経験してほしい。そして、過去に読んだことがある人でも、“広島目線”を養った上で読み込むと、また違った読書体験ができるはずだ。
明日からのCSでカープが躍進できるかどうか。そして来季以降、再びの黄金期は訪れるのか……その鍵になりそうなものは、たいてい歴史の中に埋まっているもの。だからこそ、球団史を俯瞰して網羅できる『野球次郎〜広島東洋カープ大事典〜』は、今この時こそ読んでおきたい一冊といえる。
で、できれば他の球団史も続々出していただけると、特定の応援チームがないイチ野球ファンとしてはありがたい限りです。
(オグマナオト)
セ・リーグの対戦は、甲子園球場での開催という点も含めて昨年のCSとまったく同じカード。その昨年の対戦では、阪神のホームグラウンドにもかかわらず、応援席はカープの赤い色の方が勝っていた印象が強い。その赤い応援の勢いも借りてか昨年はカープが圧勝した。果たして今季はどうなるか?
玉石混淆のカープ関連本の中、オススメしたいのが『野球次郎〜広島東洋カープ大事典〜』。あのマニアック野球雑誌『野球太郎』による特別編集本だ。
その他の多くのカープ本が「今」を特集しているのに対して、『野球次郎』では1950年の球団創設から今日までの64年間の球団史を一気に振り返る内容になっている。負け続けてきた歴史があるからこそ、今日のチームの隆盛と「カープブーム」が起きている、と考えると、やはり過去を学ぶことの重要性は大きい。
本書ではカープの球団史を、球団創設の1950〜74年の「創成期」、悲願の初優勝からはじまる1975〜91年の「黄金期」、15年連続でBクラスに沈んだ時代を中心とする1992〜2012年の「暗黒期」、初のCS進出を達成した2013〜の「脱・暗黒期」の4つのピリオドに分けて、それぞれの期間に活躍した選手や印象的なエピソードを振り返っていく。
普通、こういった球団史本は、歴史の頭から振り返っていきそうなものなのに、いきなり「暗黒期」から始まる当たりが、野球次郎のなんともいやらしくてニクい編集方針といえる。
98年から始まった15年連続Bクラスという長いトンネル。この「暗黒期」の原因としてよく語られるのが、1993年から始まったFA制度による主力の流出だ。本書ではこのFA流出に加えて、もうひとつ要因があるのでは? と考察する。
その要因とは、同時期に若い有望選手が複数現れたこと。一見、喜ばしいことのはずが、野村謙二郎、江藤智、金本知憲らがほぼ同時期に頭角を現し、レギュラーが固定されたことでチームの世代が「空洞化」。結果、彼らが衰えたり移籍した途端にチーム力がガクンと落ちてしまった、というのは、なるほどうなずける。
本書ではこうした、各年代の強さや弱さ、人気の要因がつぶさに考察されているので非常に読み応えがある。
また、第5章「カープ重要トピックス」では、球場、他球団も含めた広島出身選手、助っ人外国人、応援、オーナー、樽募金などの読み物も充実しているのが嬉しい。甲子園名物の「ジェット風船応援」も、野球の応援では欠かせない「コンバットマーチ」や「トランペット応援」、そして「ウェーブ」もみんなカープ発祥だった! なんてうんちくも盛りだくさんだ。
そして本書の豪華特典ともいうべきなのが、巻末に納められた特別掲載『江夏の21球』だ。プロ野球のポストシーズンになるとなぜか読みたくなるスポーツ・ノンフィクションの古典は、もしまだ読んだことがない、という人がいればこの機会にぜひとも経験してほしい。そして、過去に読んだことがある人でも、“広島目線”を養った上で読み込むと、また違った読書体験ができるはずだ。
明日からのCSでカープが躍進できるかどうか。そして来季以降、再びの黄金期は訪れるのか……その鍵になりそうなものは、たいてい歴史の中に埋まっているもの。だからこそ、球団史を俯瞰して網羅できる『野球次郎〜広島東洋カープ大事典〜』は、今この時こそ読んでおきたい一冊といえる。
で、できれば他の球団史も続々出していただけると、特定の応援チームがないイチ野球ファンとしてはありがたい限りです。
(オグマナオト)