フレッシュ県岐商、バタつきながらも「やりながら覚える」戦いで4強進出

初回いきなり安打した岐阜聖徳・藤井君

 登録メンバー20人中、5人もこの春入学したばかりの1年生を登録している県立岐阜商。

 しかも、一ケタ番号をもらっている選手が33人もいる。 名門校にしては、思い切った抜擢だ。

 藤田明宏監督は、「チーム事情で1年生が多く入ることになった」と述べているが、これは上級生にもっと活力と競争心を持たせていこうという、一種の荒療治でもあるようだ。 この日の先発メンバーとしては、3番レフトで広瀬君が名を連ねた。

 野選で1点を先制された初回の県立岐阜商は、失策の走者を置いて、その広瀬君からの3連打に6番上野君の犠飛や安江君、中田君のタイムリーなどで4点を奪い返した。

 しかし、岐阜聖徳学園も4回に一死一三塁から、7番本間君の右越二塁打や中継の乱れなどもあって、この回3点を返して追いついた。

 こうして前半は、お互い守りに少しバタバタとして落ち着かない部分も出ながら点を取り合う展開となった。そして、4対4となって迎えた5回、県岐商が突き放した。 この回の県立岐阜商は3番広瀬君からという好打順だったが、初球を狙い打って左前打で出塁すると、4番武藤君がきっちり送り、続く竹腰君も中前打してつないで一、三塁。 ここで、上野君が右前へ好打して三走が帰って突き放した。さらに一、 三塁で、ディレードダブルスチールを仕掛けると、送球ミスも出て労せずして三塁走者が帰った。 

県岐商・高橋純平君

 このリードを6回からマウンドに登った注目の高橋 純平君が守り切った。 高橋君は昨年夏に1年生ながら注目されていた逸材だが、最速140キロを超えるストレートと、大きくタテに曲がってくるスライダーが有効だ。

 ただ、調子としては必ずしも良くはなかったようだった。踏み出し足の位置にいくらか迷いがあるようで、6回の2四球にも表れているように、その分いくらか制球にも乱れが出ていた。

 それでも、結果的には4イニングを投げて9回に小林君に打たれた二塁打一本のみで、無失点に抑えたのはさすがだった。

 そして、県立岐阜商は7回にも二塁打で出た竹腰君をバントで進めると、高橋君の犠飛で1点を追加してリードを広げた。 結果的には、3点リードを追い付かれながらも、慌てなかったことも功を奏したようだ。

 それでも、藤田監督は試合後、「忙しい試合でしたね。失点の仕方も、何だかバタバタしてしまって、守備の乱れもありました」と、いくらか苦笑しながら語っていた。ただ、初回の攻撃に関しては、「練習通りのことが出来たと思います。今のウチにしてはよくつながったと思います。経験の少ないチームでもありますから、こうして試合をしながら覚えていくということも大切です」と、春季大会の戦い方そのものは、夏を見据えて経験値を積むという考え方を重視している。

 4回に4本の安打を集中させて、相手の中継ミスも誘って一気に3点を返した岐阜聖徳学園。 前半は、互角以上と言ってもいい戦いぶりだったが、後半になって高橋君を攻略することが出来なかった。チームとして、もう一つ上を目指していこうとするには、やはり高橋君レベルの投手を攻略していく破壊力をつけていきたいところであろう。

(文=手束 仁)