積極的に「JPX日経400」に関する投信を設定している野村アセットマネジメントに、「JPX日経400」にかける期待を聞いた。(写真は、左から野村アセットマネジメントの松村勝雅氏、藤田裕生氏、野本裕一氏。サーチナ撮影)

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 野村アセットマネジメントが設定したETF(上場投信)「NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型上場投信」 <1591> が2014年1月28日に東京証券取引所に上場した。同社では1月31日にインデックスファンド「JPX日経400ファンド」も設定する。積極的に「JPX日経400」に関する投信を設定している野村アセットマネジメント商品企画部シニア・マネージャーの藤田裕生氏(写真:中央)に、「JPX日経400」にかける期待を聞いた。

 また、リテール・クライアント戦略部NISAプロジェクトチーム シニア・マネージャーの野本裕一氏(写真:右)にインデックスファンドについて、同部シニア・マネージャーの松村勝雅氏(写真:左)にETFについて聞いた。

――「JPX日経400」に対する評価は?

藤田 企業の収益性に着目し、投資者を意識したガバナンスを評価して組入銘柄を決定するというプロセスは、今後、上場企業の経営者の意識を変えていく可能性があります。「JPX日経400」が日本を代表する株価指数に成長すれば、そこに組み入れられているかどうかということを、経営者は意識せざるを得なくなります。その際に、ROE(株主資本利益率)が高いことが条件であるということが、大きな意味を持ってくると思います。

 このような、企業の収益性に着目した株価指数は、グローバル市場の中で、日本株の再評価につながる動きと考え、短いスケジュールの中でしたが、ETF(上場投資信託)とインデックスファンドを設定し、提供することにしました。

野本 一般投資家の立場から見ると、従来のメジャーなインデックスである「日経平均株価」や「東証株価指数(TOPIX)」については、株価指数として「この点がフォローされればもっと良いのに」と思わざるを得ない点がありました。

 たとえば、「日経平均株価」は、(みなし額面換算後の)株価が高い銘柄が指数の構成比で10%を超えるほどの存在感があり、ある特定の銘柄の値動きに左右されやすいという性格があります。「TOPIX」は、東証1部上場銘柄全体の値動きを示すものですが、マザーズやJASDAQなど他の市場にも魅力的な銘柄がある中で、東証1部だけで市場全体を判断できるのだろうかという思いがあったと感じます。

 「JPX日経400」は、東証1部、2部、マザーズ、JASDAQなど、市場を問わず銘柄を採用していること、また、組入上限として個別銘柄は指数全体の時価総額の1.5%以内(銘柄選定基準日時点)という規定があり、一部の銘柄の値動きに左右されにくい構造になっています。従来の株価指数と比較して改善が図られていることも評価できると思います。

――「JPX日経400」の具体的な使われ方のイメージは?

野本 実際に、どのように使われるかということは、新指数の普及ともかかわってきます。たとえば、NHKのニュースで、今日の株価は「TOPIX」と「日経平均株価」を使って紹介されています。そこに、「JPX日経400」が加わるようなことになれば、普及も速いのでしょうが、まだ、多くの方々が「JPX日経400」については、ご存じない状況ですから、なかなか簡単な話ではありません。

 そこで、証券会社や銀行など投信販売会社の方々に協力をいただき、「TOPIX」や「日経平均株価」と何が違うのか、あるいは、ROEが高いということは、どういう意味を持つことなのかということなどを、一般投資家の方々に広く紹介してもらう必要があると思っています。新指数への理解が深まれば普及も進みますし、普及が進むことによって「JPX日経400」の値動きの特徴も明確になってくると思います。

 一方、ROEが高い銘柄の値動きの特徴として、株価の下落局面で下がりにくいという点があげられます。下げ局面で大きく下がりにくいという特徴が、長期間にわたると、市場全体の値動きを示す「TOPIX」などより、良いパフォーマンスが期待できると思います。「JPX日経400」への投資は、中長期投資が基本になると思います。

松村 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に代表される年金基金や機関投資家が、日本株運用のベンチマークのひとつに採用するようになると、より関心も高まってくると思います。現在のところ、「TOPIX」と「日経平均株価」に集中し過ぎているという傾向がありますので、ベンチマークを分散するという議論の中で、その受け皿のひとつになるという期待は持てます。

――貴社の「JPX日経400」連動型ファンドの特徴は?

野本 公募投信「JPX日経400ファンド」は、信託報酬を0.53%以内(税抜)と低く抑えたことが特徴です。長期で運用されることを考えた時、毎年のコストである信託報酬は、低い方が投資家の方々のメリットになります。「JPX日経400ファンド」は2014年1月31日に設定となります。

藤田 ETFは、2014年1月28日に東証に上場しました。現物設定・現物交換型という仕組みを採用しているため、設定交換時に市場を介さない分、指数との連動性は高く、また、法人投資家にとっては、受取配当について上場株式と同様の益金不算入の特例を適用できるメリットがあります。

 信託報酬は0.20%以内かつETFの純資産総額に応じて段階的に下がる仕組みで、現在、ETFの純資産総額が5000億円以下では年0.20%(税抜)、5000億円超1兆5000億円以下の場合は0.16%(税抜)、1兆5000億円超で0.12%(税抜)と設定しています。今回で41本目のETFを上場した、「NEXT FUNDS」シリーズは、流動性の高いETFとして多くの投資家のみなさまに利用していただいています。ついつい、開示されている信託報酬やその他の費用に目が行きがちですが、実際のETFの流動性の高さによる売り買いのしやすさが、最終的にお客様の評価につながると判断しています。

松村 当社のETFの当初設定額は46億円でしたが、上場初日1月28日の取引は、市場内で12億円、市場外でも10億円以上の売買代金があり、好調なスタートを切れたと思っています。

――今後、「JPX日経400」が普及していくためのポイントは?

野本 「JPX日経400」の構成銘柄に選ばれることが世界に誇る「ザ・ニッポン」の一員として認められた証である、といったように感じておられる上場企業の経営者の方もいらっしゃるようです。毎年1回の銘柄入れ替えは、まるで企業の“通信簿”のように、上場企業のCFOや財務部長の方々には刺激になると思います。そのような側面からの普及は速く進むのではないでしょうか?

藤田 年金運用のベンチマークに採用されるということは、大きなインパクトがあると思っています。株式運用の成果をはかるモノサシとなるベンチマークでは、どのようなベンチマークが適当なのかということで議論が進んでいます。「TOPIX」や「日経平均株価」から、企業収益性やガバナンスにも着目したカタチの「JPX日経400」が採用されることになれば、インデックスの多様化にもつながると思います。

松村 ETFが上場されたことによって、普及は次の段階に進んだといえます。また、先物市場ができると機関投資家も参入しやすくなり、ETFの流動性も増してきますので、大きく育つきっかけになると思います。(編集担当:徳永浩)